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ベンチャー魂がコールドチェーンに変革起こす

低温倉庫市場を再定義、快進撃続く霞ヶ関キャピタル

2024年6月18日 (火)

話題「先行している大手不動産デベロッパーと同じことをしても勝てるわけがない。他社がやらないことをやることで、当社の価値が生み出されている」

霞ヶ関キャピタルの杉本亮氏

こう語る霞ヶ関キャピタルの杉本亮氏(取締役副社長ロジスティクス事業本部長・不動産開発事業本部管掌)の言葉には、物流業界で名前も知られていなかった不動産デベロッパーが、前例のないスピード感で賃貸型冷凍冷蔵倉庫を量産し、その全てを満床で稼働させている「実績に裏付けられた自信」が感じられた。

次なる一手はなにか──。今度は、冷凍冷蔵倉庫の開発・賃貸からさらに1歩踏み出し、「COLD X NETWORK」(コールドクロスネットワーク)というパレット単位で冷凍貨物を保管するサービスの提供を開始。倉庫の開発計画もさらに加速させるという。ベンチャースピリッツにあふれる物流不動産デベロッパーのキーマンに、霞ヶ関キャピタル流の物流マーケットとの向き合い方を聞いた。

ニューカマーながら4年で16拠点を開発着手

霞ヶ関キャピタルが物流倉庫を扱うようになったのは、20年6月に杉本氏が事業に参画したのが契機だ。それまで他社で物流施設開発に携わっていた杉本氏がメンバーに加わり、矢継ぎ早の物流拠点開発が始まった。

▲「LOGI FLAG TECH 所沢I」完成イメージ

当初はドライ倉庫も開発したが、22年9月に賃貸型の冷凍冷蔵倉庫「LOGI FLAG COLD(ロジフラッグコールド)市川I」 を開発してからは、主に冷凍冷蔵倉庫を開発。わずか1年半で千葉・横浜・京都で4棟の冷凍冷蔵倉庫を展開し、さらに大都市圏を中心に12件の新規開発が進む。その中でも特に目を引くのが、冒頭のCOLD X NETWORKという新サービスを提供する「LOGI FLAG TECH(ロジフラッグテック)所沢I」(2024年9月完成予定)だ。

LOGI FLAG TECHは、これまでドライ倉庫の「LOGI FLAG」や冷凍冷蔵倉庫の「LOGI FLAG COLD」、3温度帯の「LOGI FLAG DRY & COLD」(ロジフラッグドライアンドコールド)を展開してきた同社の新しい倉庫シリーズであり、冷凍設備と大規模なパレット自動倉庫をあらかじめ導入しているのが最大の特徴だ。これにより、最終的に賃料に反映される建築費を抑え、保管容量・効率を向上させるのと同時に、パレット単位の「空間貸し」を実現する。

▲自動倉庫を組み入れたLOGI FLAG TECHの特徴。省人化や労働環境の改善、24時間稼働、トラック待機時間の削減などの効果も期待できる(クリックで拡大)

そして、この「空間貸し」をサービス化したのが、COLD X NETWORKというわけだ。COLD X NETWORKは倉庫の保管容量を、特定の企業の専有スペースとする「スペース確保型」と、小口・短期預かりに特化した「従量課金制」の2種類の利用体系で貸し出すサービス。スペース確保型は一般的な倉庫の賃貸と形態は近いものの、荷主が保管スペースをパレット単位で、かつ契約期間を数か月単位で決めることができる。一方で、従量課金制は最短1日から最小1パレット単位で冷凍倉庫スペースを複雑な契約をせずにスポット案件に対応できるサービスだ。

▲2つの利用形態から最適なものを選択可能(クリックで拡大)

冷凍倉庫は一般的に、夏のアイスクリームや、冬のおせち、クリスマスケーキなど、季節性の高い食品を扱う機会が多く、在庫波動の問題がついて回る。ピーク時の荷物量に合わせて保管スペースを確保すると、ピークアウト後にスペースが空いて無駄なコストが生まれる。杉本氏はこうした課題の解決策として、「サービス利用者は季節波動の最も低い時期に合わせてスペース確保型を活用し、繁忙期に保管しきれない荷物が発生した際に、スポット型を追加で使用することで、ランニングコストを抑えながら波動に対応することができる」と話す。

COLD X NETWORKは、ことし8月から利用申し込みを受け付け、11月から利用可能となる見込み。利用者は、最小で1パレット・1カートン、最短で1日から預けることができ、保管料は利用日数分だけ支払う。敷金や仲介手数料は不要だ。利用申し込みや入出庫管理は、全て専用ウェブサイトで完結する。

▲「COLD X NETWORK」専用ウェブサイトのイメージ(クリックで拡大)

事業者や取り扱う貨物ごとに異なるスポットニーズに敏速に対応するこのサービスは、「電話と紙」の時代と隔絶した、新時代の物流の形にすら見える。実にベンチャーらしいスピード感と熱量を感じさせる取り組みだ。取材時、杉本氏は「大手と同じことをやっていても勝てない」との言葉を繰り返した。その問いに対する答えがLOGI FLAG TECHという新たな倉庫シリーズであり、COLD X NETWORKという新たな冷凍保管サービスなのだ。

自動倉庫で小口ニーズに対応、人手不足対策も

では、実際の倉庫運営はどのように行われるか。LOGI FLAG TECH 所沢Iを例に見てみよう。荷捌きスペースである1階に到着した荷物は、強度の高い自動倉庫専用パレットに積み替えられた後、垂直搬送機で2階の冷凍倉庫に送られ、自動倉庫に格納される。出庫時は、逆のプロセスをたどる。

▲「LOGI FLAG TECH」倉庫内部のイメージ(クリックで拡大)

一連の荷役は、所沢Iの半分の保管容量を既に確保している、低温物流事業者のSBSゼンツウ(東京都新宿区)が受け持つ。COLD X NETWORKとして提供するサービスは現段階では庫内業務にとどまるが、「ゆくゆくは、輸配送サービスも提供していきたい」(杉本氏)という。

霞ヶ関キャピタルが自動倉庫を採用した理由の1つには、スポットの荷物を扱いやすいようにという狙いがある。季節性商品や臨時の荷物で「小口・短期の冷凍保管を求める声が一定数ある」(杉本氏)が、空きスペースを探しにくいのが現状だ。仮に冷凍倉庫に空きがあっても、小口・短期ではなかなかマッチングできないという声も少なくないという。自動倉庫であれば、保管効率が高く、作業負荷も比較的低いため、「預けたい期間に、必要なスペースだけ」を実現できる。

▲従来の賃貸型倉庫と「COLD X NETWORK」の比較(クリックで拡大)

また、自動化することで運営にかかる庫内作業員を減らし、マイナス25度の倉庫内で長時間作業しなくても済むよう、人的リソースへの配慮もある。開発の面では、「非整形地でも計画しやすいため、用地調達の選択肢が広がる」(杉本氏)という。非整形地でも高い保管効率を実現できる自動倉庫の導入と冷凍保管サービスを組み合わせることで、同社の冷凍冷蔵倉庫の開発スピードは、ますます加速するだろう。

サービス提供はスピードを重視

杉本氏によると、同社が独自の冷凍保管サービスを提供し、前例のないスピード感で賃貸型冷凍冷蔵倉庫を開発し続けているのは、「成長スピードを求める企業の要求に応えたい」(杉本氏)という思いが背景にあるという。

自社で冷凍冷蔵倉庫を開発すれば、2年から3年はかかってしまうし、ドライ倉庫を賃借して冷凍設備を敷設するにも1年はかかる。設備投資が不要な冷凍冷蔵倉庫をデベロッパーが供給すれば、クイックスタートを望む3PL事業者や荷主が、初期投資を抑えながら「コンパクトでスピーディーな成長を追い求めることができる」(杉本氏)。波動で溢れた荷物は、COLD X NETWORKが受け止める。

ベンチャースピリッツは、これだけでは終わらない。同社はCOLD X NETWORKを「冷凍物流プラットフォームへと成長」(杉本氏)させるために、「業界のさまざまなパートナーと一緒になり実現していく」構想を描く。初号物件となった所沢Iを皮切りに、COLD X NETWORKの受け手となるLOGI FLAG TECHを、都市部を中心に全国に展開。それぞれの稼働状況をオンラインネットワークでつなぐことで、まるでクラウド型サービスにおけるデータのように、実体ある冷凍貨物を場所を選ばず預けたり、引き出したりできるシステム・サービスへと昇華させる。貨物や輸送というリアルな動きをデジタルプラットフォーム上で再現し、フィジカルインターネットに通ずるような新しい価値を冷凍物流の世界で生み出していく――。そんな「冷凍物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現していく」(杉本氏)という。

▲冷凍保管サービス事業の将来構想イメージ(クリックで拡大)

快進撃を続ける霞ヶ関キャピタルの中で後発事業だった冷凍冷蔵倉庫開発は、今や同社の主力事業へと成長。冷凍冷蔵に特化した同社の戦略は、情報ネットワークと組み合わされることで、さらに先鋭化していく。「変化を起こす側へ、回れ。」を社是とする同社はこの先、低温物流業界にどんな変化を起こしていくのだろうか。変革期を迎えた低温物流業界のパイオニアとなりそうだ。

霞ヶ関キャピタル「LOGI FLAG」サービスサイト
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