
▲(左から)LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介、YEデジタルの浅成直也氏、ハコベルの渡辺健太氏、関通の伊津見一彦氏
イベント倉庫内物流と倉庫外の輸配送は互いに密接に関わり合っている。双方の連携がうまくとれていれば荷物や車両の停滞は起こらず、物流にかかる時間の大幅な短縮が期待できる。しかし、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫運用管理システム)をはじめとする庫内管理システムと、TMSと呼ばれる輸配送システムとの連携は、DX化が盛んに叫ばれている昨今にあってもなかなか進まない。
午前中のパネルディスカッションではWESベンダーのYEデジタル、配車管理システムのハコベル(東京都中央区)、物流事業者でありながらWMS開発も手がける関通の3社が、連携を阻む要因について意見を交わした。
YEデジタルは40年以上前から物流現場のシステム構築に携わってきた、この分野では老舗といえる企業。物流現場のDX(デジタルトランスメーション)化に寄与してきた。現在は主にWESの開発を行っている。今回登壇したのは同社の物流・制御システム本部物流DX事業推進部部長、浅成直也氏。
ハコベルはトラックのマッチングシステムを提供する企業。さらに「ハコベル配車計画」と称するシステムを開発するなど、輸配送の効率化を図るソリューションに強みを持つ。ハコベルからは物流DXシステム事業部カスタマーサクセス部部長の渡辺健太氏が参加した。
関通は物流会社でありながら全国に20近い倉庫を構え、その上WMS開発も手がけるなどマルチな活躍を見せる。現場業務に携わってきた経験をシステム設計に反映させ、円滑な倉庫運営をサポートする。今回登壇してくれたのは、同社の東京オフィスシステム開発部本部長の伊津見一彦氏だ。
三社からは連携が進まない主な理由として「ユーザー(荷主企業・運送事業者)が課題を認識していないこと」が挙げられた。「現場をよくする上で重要なのはユーザーの主体性。ユーザーが課題を認識しなくては話が前に進まない」と伊津見氏。その上で三社は、荷主企業に連携の必要性を認識させるにはデータに基づいた根拠ある説得が必要だと説いた。

▲ユーザーの課題認識について語る関通の伊津見一彦氏
従来、配車管理はベテラン従業員の経験や勘に頼るところが大きかった。そういった方法では属人化が進んで作業の引き継ぎが難しく、後続にうまくノウハウを伝えられないことが多い。しかも従来の方法がどの程度効果的だったのかを定量的に測ることができないため、そもそも課題を課題として認識できないケースがほとんどだ。
配車管理に強いハコベルの渡辺氏は「いまだに電話やFAXで配車管理をしている運送事業者は多い。しかし、そういったアナログなやり取りではデータが蓄積しない。データがないので改善の必要性を示すこともできない」と話す。
しっかりデータをとって現場作業の見える化が進めば、上流企業との交渉もしやすくなる。渡辺氏は「作業時間を可視化しただけで、荷主企業が改善のために動いてくれた例もある」とデータを提示することの重要性を強調。さらに「法律で荷待ち・荷役時間が制限されたことはかえってチャンス。各企業が荷待ち・荷役時間短縮のため、倉庫内と輸配送を連携させる必要性を感じたはず」と述べた。
当事者の意識改革はもちろんのこと、システム連携のためには企業間のさらなる連携が必須だ。YEデジタルの浅成氏は「WESにはトラックの動きを追う機能がない。足りない部分を補完するにはハコベルや関通の持っている配車データが必要」とし、連携に前向きな姿勢を示した。他二社の代表者も、物流業界全体を盛り上げていくためには企業間の連携をさらに促進する必要があることで同意した。
新たな課題に気づけたことが企業間連携の思わぬ成果であるという三社。ハコベルの渡辺氏は「一社だけでは見えてこない課題もある。連携を進めることでソリューションの活用の幅をさらに広げられる」と語った。
「WMSをはじめとした倉庫内システムだけでは出荷時間を正確にコントロールすることはできない。そういう意味でもTMSとの連携は急務」と話すのは関通の伊津見だ。
YEデジタルの浅成氏が「ここにいる三社が連携することもあり得る」と話したところからも、倉庫内物流と輸配送の連携が大きく進展する日は近そうだ。