行政・団体フィジカルインターネットセンター(JPIC)は2日、「物流統括管理者」(CLO)の交流の場として設置した「CLO協議会」の第1回協議会を開催。物流効率化法の改正で特定事業者に設置が義務付けられたCLOについて、経済産業省や荷主企業、デジタルプロバイダーなどがそれぞれの取り組みや現状について紹介した。
CLOについて、JPICでは「CLO職能検討会」を設けて「物流改革に向けてCLOに求められる要件」の提言書を取りまとめており、JPIC理事長で流通科学大学名誉教授の森隆行氏からは、JPICが提起するCLOについての定義や、果たすべき役割が紹介された。

▲JPIC理事長・森隆行氏
CLOについては「持続可能な社会と企業価値の向上を実現するため、モノの流れを基軸にしたサプラチェーンにおいて、経営視点で社内外を俯瞰した全体最適を図る役割を担う責任者」と定義。さらに、CLOに求められる3つの役割について「地域社会の持続可能性を促進し、社会課題の解決や災害時の対応、カーボンニュートラルへの取り組みを通じて持続可能な豊かな社会の実現に貢献する役割」、「サプライチェーン(SC)の全体最適実現にむけた構造的変革を伴う中長期計画の立案と実行をリードする役割」「物流オペレーションの効率化計画の策定と社内外の調整により実践する役割」を提起、求められる職能として、経営者としての視点と能力、戦略的思考と決断力、社内外の外交力・調整力、広い視野の関心、知見などを示し、部分最適ではなく全体最適の視点を持つことが特に重要とした。CLO選任を課題解決のゴールとせず、さらにロジスティクスによる物流革新を推進していくことが必要と訴え、物流に限らずSC全般、企業全体の経営改革のチャンスとなることに期待を寄せた。

▲経済産業省・平林孝之氏
経済産業省からは、商務・サービスグループ、消費・流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏が登壇して「法律にて定められる物流統括管理者の責任」について解説、改めて改正物流効率化法の概要が示され、規制的措置の施行に向けた検討が進んでいる状況などを紹介した。経産省に国土交通省、農林水産省を加えた3省合同会議で検討されているCLOの業務内容についての素案では、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者として、定期報告の作成や、国からの報告徴収に対する当該報告書の作成、社内の物流・調達・販売部門との連携体制の構築、設備投資、デジタル化に向けた事業計画作成や実施、管理のほか、ドライバーの働き方効率化に向けた社内研修等の実施、取引の相手方との物流効率化に向けた物流統括管理者連携と調整などを取り組むべき業務内容として規定することが検討されていると報告された。また、荷主・物流事業者などの物流改善の評価・公表について、ランク評価などに、取り組みが優良な事業者を消費者や市場の評価につなげる制度が検討されていることが紹介された。
またデジタルプロバイダー、コンサルティングの立場からは、NECソリューションイノベータ(東京都江東区)、Hacobu(ハコブ、港区)が、社会課題解決、荷待ち時間削減に向けての具体的なソリューションとして配車・輸配送効率化システムやトラック予約受付システムなど、法令に対応するソリューションを紹介、今後、CLO支援についての取り組みを支援していくことなども語られた。
協議会の最後には、荷主の経営視点から見たサプライチェーン改革として、YKK AP、ダイキン工業、日清食品による「CLOパネルディスカッション」を開催。3社は物流法改正による法制化の具体化前から、CLOの定義に基づく物流革新に取り組んできた先進的荷主企業であり、それぞれのCLO選任に基づく社内体制の構築や、CLOの主導による物流効率化への取り組みの現状と目標が語られるとともに、CLOの役割、ミッション、権限などを企業として明確化していることを解説。CLOを中心としたロジスティクス戦略を推進してフィジカルインターネット実現を目指す現状が語られるとともに、調達や営業部門も含めたあるべきCLOの確立に向けた課題なども共有され、3社からは、CLO協議会の場で荷主同士だけではなく、行政などさらに広い領域の連携や、新しいアイデア、取り組みが活性化されることへの期待が語られた。
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