調査・データ不動産開発の米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は2日、国内リテール(小売り)市場の今年第3四半期の市況リポートを公表し、今後2年間の賃料水準は、実質横ばいが続くとの見通しを明らかにした。
リポートによると、世界的に高額品の消費が頭打ちになっているのを反映し、好立地の都心ハイストリート上限賃料は頭打ちになっている。全体的にみれば、訪日外国人客の増加の恩恵を受けるエリアでは都市型商業施設で売上が増加しているものの、そのほかのマス向け店舗や地方都市では長引くインフレのもとで人件費や原材料費、光熱費の高騰の影響を受けるテナントに対し、オーナーが賃料を増額できないケースが多い。
このため、同社では一部のプライムエリアを除き、今後2年間の全体の賃料水準は、国内消費の伸び悩みを反映して名目インフレ率並みの推移が続くと予想した。
第3四半期の特徴としては、訪日客の増加に加え、駅周辺の大型再開発施設が相次いで完成した渋谷のプライム賃料の上限が前四半期に比べ14%上昇し、坪単価25万円となった。都心一等地の優良物件の募集がほぼ一巡したことから、賃料レンジに大きな変動は見られないものの、プライム賃料の上昇圧力は訪日客が大幅に増加するエリアに集中している。
全体的には、コロナ禍による「巣ごもり特需」以降続いてきたハイブランドの総売上高が今年後半に入って減少に転じつつあり、一部ではコロナ前の水準を上回るプライム賃料も見られたが、全体の賃料を押し上げる勢いはない。
ハイストリートの出退店の動きでは、大型商業施設の開業が相次いだ大阪で出店の動きが活発で、また、スポーツと新業態を掲げるライフスタイル型ブランドの路面出店も目立った。
ユナイテッドアローズが8月にオンライン販売をスタートした40代女性向けブランド「コンテ」は期間限定店での売上が想定を倍近く上回り、青山と新宿ルミネに出店。訪日客需要の恩恵を受けるデンマーク発のリサイクル資材を活用したファッション・ジュエリーブランド「パンドラ」は、年初来14店舗をオープンし、7月には小型路面店を渋谷センター街に出店して、オリジナルの刻印ができるサービスを始めた。
ニューバランスは4階層の西日本最大規模となる旗艦店を心斎橋商店街(大阪市中央区)に出店した。
営業面積当たりの売上効率でみると、営業面積が5万平方メートルを超える商業施設などでは、小売販売力の目立った回復は確認されていない。ラゾーナ川崎プラザなど圧倒的な地域一番店を除けば、高齢化する消費構造やオンライン販売への移行を反映して、今後の業績予想も概ね横ばいとなっている。
施設別では、新宿・横浜・大阪などのターミナル駅ナカ施設となるルミネ、ジョイナス、ルクアなどでは1平方メートル当たりの年間滞在者数は多いものの、1平方メートル当たりの年間売上高との相関関係はそれほど見られない。同社は、消費者側は通勤時の利便性だけで高額消費に踏み切っているわけではなく、営業面積がエリア最大でなくてもテナント・ミックスに優れた施設であれば、売上効率が総じて高まっているとしている。
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