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最適かつ納得の配車を実現、AI利用の配車システム

2025年3月6日 (木)

話題「毎日の配車業務で使える」をキャッチコピーに、配車・配送計画の構築や最適な車両を割り当てる、AI(人工知能)配車アシスタントシステム「LOG」(ログ)。提供するのは、2021年創業のLogpose Technologies(ログポーステクノロジーズ、東京都渋谷区)だ。ユーザー各社に目標設定に合わせた配車方法を提供するという同社サービスの詳細について、代表取締役CEO(最高経営責任者)の羽室行光氏に話を聞いた。

▲Logpose Technologies代表取締役CEOの羽室行光氏

コロナ禍の会話がきっかけで事業スタート

羽室氏は、船井総合研究所とサイバーエージェントの出身。新卒で入社した船井総研でコンサルティング担当になったのが、物流業界との出会いだ。当時、物流を専門にコンサルティングしていた先輩から「物流はあらゆる業界の会社が関わる、ビジネスの根幹であり基本」と言われ、それまで意識したことがなかった物流の世界に興味を持ったという。

コンサルティングを通して現場の改善に携わり、面白さも感じていた。ただ、社外の第三者としてではなく、より主体的にビジネスに参画したい気持ちがあり、サイバーエージェントに転職。それまでとは打って変わったエンターテインメント分野で、「Abema(アベマ)TV」の事業立ち上げにも関わったという。

そうしたなかでも羽室氏は、「誰の、どのような課題を解決しているのか」を自分自身に問い続けていた。もちろんエンターテインメントには、人を楽しませるという重要な価値がある。しかし自分は、もっと生活する上で基盤になるような分野の課題を解決したい。そんな思いがあることに気がついた。

ちょうどサイバーエージェント時代の2020年、船井総研時代に縁のあった物流業界の経営者と話す機会に恵まれる。業界の課題は山積みだという。コロナ禍の今、何かできないか。最も困っていることを尋ねると、DX(デジタルトランスフォーメーション)、特に属人化が進んでしまっている配車の自動化だとの答えが返ってきた。

ビジネスとしてではなく純粋に人助けのつもりでシステムの企画を立て、データマイニング研究者でもあり、現在の取締役CIOでもある中原孝信氏とともに開発に着手。さらにAI・データサイエンスの研究者であった羽室氏の父も巻き込み、数か月で試作品を作り上げた。

「試作品は現場レベルで実用に耐えるものではなかったが、最初に話を聞いた経営者からの驚きの声も聞くことができ、手ごたえ、面白さが感じられた。実用化レベルまで発展させれば、以前から興味を持っていた物流業界に貢献することができるのではないかと感じ、本気でビジネスにしようと考えた」(羽室氏)

Logpose Technologiesの誕生である。

「納得感」と「最適解」の間でバランス

現在同社が主に対応しているのは、経営目標や理想のオペレーションのあり方が明確で、そのためにシステムを活用しようとする、いわばDXリテラシーの高い事業者だ。こうした事業者はシステムを導入する目的がはっきりしているので、何を重視し、どのようなシステムにすれば良いか、しっかりと話をすることができる。その前の段階にある、現状維持のシステムを希望する事業者に対してまで、特別な啓蒙をしようとはしていない。立ち上げて数年の同社のリソースでは、そこまでの対応をする余力はないという判断だ。

もっとも、初めからこの路線を確立できていたわけではない。最初は最適解のみを弾き出すシステムを開発したが、現場の納得感を得られず、導入につながらなかった。そこで一時期は、顧客の納得感を重視して、最適ではなくても完全に要望に沿ったもの、既存のやり方を再現するようなものを算出するシステムを作ったこともある。だが、すぐに何かが違うと気がつく。

「会社を立ち上げたのは、課題への新たな解決策を提案し、業界を活性化させるため。特定の1社だけの、経営判断として論理的に正しくない慣習をそのままシステム化することは、その目的に逆行してしまっている」(羽室氏)

そこから試行錯誤を重ねて、現在の、重要なところは顧客のやり方に合わせつつ、AIだからこその最適でスムーズなオペレーションづくりを提案する方法にたどり着いた。ターゲットを絞り、「論理的に正しい解」と「現場の納得感」の最適バランスを図った形だ。迷いを振り払った今、「優秀な技術者と物流現場経験者がそろう弊社では、理想のオペレーションづくりを通して本当に強い経営組織を構築できることが最大の強み。そのためのパートナーとして選んでいただけるのがうれしい」と羽室氏は力強く話す。



▲AI配車アシスタント「LOG」の管理画面(クリックで拡大)

▲配車システムの導入を支援する様子

世界の管制塔となるAIを目指して

同社は最近、共同配送マッチングシステムも、同じ「LOG」の名称でリリースした。今、人口が減少し、メーカー・販売者が自社で配送まで完結させることは、ますます難しくなる時代になる。荷姿や事業者ごとのカウント単位の違いなどハードルはまだまだあるが、同社は共同配送に未来を感じている。「物流は競争ではなく、共創の時代になる。共同配送でこそ、本当に最適な物流を実現できる」と羽室氏は言う。

同社のAIを使ったシステムなら、理想の共同配送も可能になるはずだ。自動化しにくいバラバラなデータを構造化することこそ、AIが得意な領域である。共同配送の取り組みは、当初のAI配車アシスタントからさらに一歩、「世界の荷物情報を整理し、流通を最適化する」というミッションの実現に近づくところにある。

創業当初から、AI配車アシスタントで運送会社の経営体制を盤石なものとし、運送の動きをデジタルの世界に変換できるようにしてきた。そして今、これまでに集めてきた情報をもとにして、より良い共同配送を提供し、効率の良い理想的な物流網を構築しようとしている。

「荷物情報を集め、最適な計算を行い、その情報を接続された各所に飛ばす。今は陸送業者や個別のドライバーだが、将来的にはほかの方法、既存の海運・空輸もさることながら、ドローンなども含めたさまざまな接続先が情報を受け取り、配送する。そうした未来の場で、弊社のAIシステム『LOG』が、いわば世界の管制塔のような役割を担いたい。そこには未来の新たな、そして強力な物流の体験が生まれると思う」(羽室氏)

共同配送サービスは新たに思いついたものではなく、創業時に立てた計画に則ったものなのだという。今後も新たな展開の計画が、すでにあるのだろうか。「ありますよ」と、にやりとする羽室氏。詳細は未公開だが、25年、26年も新展開の発表が控えているらしい。羽室氏が将来を見つめる瞳は明るく、こちらも勇気をもらえるようだ。

一問一答

Q.スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?

A. 立ち上げて間もない小さな会社なので、まだまだシードです。

Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。

A. 物流業界を変えるという目的を実現するため、より力のある組織をつくる手段の1つとしてのIPOはあり得ると考えています。

「Logpose Technologies」ホームページ