
ロジスティクス「変革を担える人物か否か」CLOに求められる真の役割とは——
LOGISTICS TODAYが3月18日に開催したオンラインイベント『第五回 物流議論』のアーカイブ配信が決定しました。2025年に義務化されるCLO(物流統括管理者)の選任を控え、日本型CLOの役割やサプライチェーン改革の戦略について、専門的かつ実践的な議論が展開されました。
トリドールホールディングス執行役員兼CSCO SCM本部長の梶野透氏は、「高度物流人材とは“変革を担える”人物である」と強調し、CLOが経営と物流現場をつなぐリーダーとして果たすべき役割を提示。早稲田大学理工学術院の大森峻一准教授は、専門的見地からCLO制度や人材育成の重要性を鋭く指摘しました。
物流業界の次なるステージを考える上で、貴重なヒントとなる本イベントをぜひご覧ください。
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※以下、イベント当日のレポートです。
本誌LOGISTICS TODAYが主催、野村不動産が協賛する「第五回物流議論」が18日、開催された。今回は「ポスト24年問題/供給網を支える荷主の課題と戦略-CLOが直面する課題と対応策とは-」をテーマに、来年義務化される特定荷主企業へのCLO(物流統括管理者)選任を前にして、CLOが担うべきサプライチェーン構築とはどうあるべきかを検証した。
議論に参加したのは、野村不動産都市開発第⼆事業本部物流事業部副部長の宮地伸史郎氏、総合コンサルティングファームのシグマクシス・ディレクター池田祐一郎氏、早稲田大学理工学術院創造理工学部准教授の大森峻一氏、トリドールホールディングス執行役員兼CSCO SCM本部長の梶野透氏の4人。さらに本誌編集長の赤澤裕介が加わり、モデレーターを務めた。

▲(左から)野村不動産・佐久間淳一氏、LOGISTICS TODAY・赤澤裕介、野村不動産・宮地伸史郎氏、トリドールホールディングス・梶野透氏、早稲田大学・大森峻一氏、シグマクシス・池田祐一郎氏
議論は、3月上旬に2日間にわたって開催された「グローバルCLOサミット」の話題からスタートした。このサミットには、物流に携わる企業の役員クラスが集い、海外で定着しているCSCO(Chief Supply Chain Officer)の権威を招いて、具体的な事例から今後日本で活性化していくべきCLOが主導する物流構築を学ぶ場になったという。海外ではCSCOが、CPO(Chief Procurement Officer、調達や購買活動の統括)やCLOの上位に位置付けられることもあるなど、ほぼ経営者と同等の職能が求められていることも明らかになり、調達から製造、販売までを統括する経営者目線の「日本型CLO」とは何かを問い直す機会になったという。
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「丸亀製麺」など国内外20以上の外食ブランドを展開するトリドールホールディングスで、すでにCSCOの役割を担う梶野氏は、このCLOサミットに参加して自らの任務を再確認したという。さらに、日本ロジスティクスシステム(JILS)イノベーション特別推進委員の立場から、CLO体制の構築にもつながる高度物流人材について委員会の取りまとめを紹介、高度物流人材を「変革を担える」人物と位置付ける。高度物流人材には、経営の問いかけ、SCMの問いかけ、物流実行計画を立案する、解決策を提供する、体系化・人材育成するという5つのフィールドを変革する能力とともに、その人特有のマインドセットも変革を推進する重要な要素と定義して、高度物流人材となり得る多様なペルソナの例を提示することから、各企業ごとの高度物流人材の活用、CLO体制のチームビルディング検証の入り口を提示した。
池田氏は、CLOの役割として「法令順守」「ステークホルダーマネジメント」「合理的なコスト最適化」の3つを提示し、特にステークホルダーマネジメントの重要性について解説。さらに、「何のために革新するのか」の変革意識に加えて、「どうやって革新するのか」に対する学術的なアプローチまで、多様な業界が連携を深めていくことが必要であり、大森氏など学会から物流ビジネスへの積極的な提言が増える状況を歓迎、さらに官民学あらゆる関係者を巻き込んだ取り組みへと拡大し、検証が深まることに期待を寄せた。
宮地氏は、物流の変革において負担者と受益者のズレなどが取り組み推進の妨げになることを例示、デベロッパーの立場でそのギャップの調整役となることも、CLO体制の物流における重要な役割ではと語る。倉庫領域での部分最適を究極まで突き詰めながら、デベロッパーがサプライチェーンで担うべき新たな領域に踏み込んでいくことを示唆した。オープンシェア型の物流拠点、Landport横浜杉田や企業間共創プログラム「Techrum(テクラム)」の取り組みに、同社の方向性を垣間見ることができる。
大森氏は、産学連携においては効率化の理論だけではなく物流現場の実情についても熟知し、理論と実践を見据えた物流改革の後押ししており、前述のグローバルCLOサミット開催にも大森氏の人脈や知見が生かされて、CLO体制を模索する企業を手助けしている。日本の物流をCLOがどう変えていくのか。学会とビジネスの領域が今後も連携を深めていくことで、CLOが果たすべき役割への見識もさらに深まるのではないか。
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今回の議論でも、CLOに求められる要素として「ビジネスの話ができること」「現状の前提を大幅に変える必要性」「改革の重要性を経営、株主に対して勝ち筋として説得できる能力」など、さまざまな観点からの知見が共有された。CLOに関する取り組みは、今後も各方面、さらには時代を経るごとに多様なアプローチとなることが予想されるが、それを理由にCLO設置を先延ばしにすることはできない。今後、欧米を参考にしつつも、日本型CLOのあり方をより明確にしていくのも、グローバルCLOサミットや、この物流議論などの重要な役割となっていくことが再確認された。
物流議論を1つのきっかけとして、新たにCLO人材が知見や課題を持ち寄って交流することで企業の連携や行動を促す場、「CLOサロン」立ち上げに向けて現在準備中であり、より多くの企業が賛同することで、有益な議論となることも呼びかけられた。まだまだ手探り状態は続くが、こうした議論、交流の輪が広がることで、ポスト24年を先導するCLOへの解像度も上がっていくだろう。