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標準的運賃、収受8割以上は44%で浸透に課題

2025年7月11日 (金)

調査・データ国土交通省は11日、「標準的運賃」の実態に関する2024年度の調査結果を公表した。トラック運送事業者のうち、荷主との運賃交渉に踏み切ったのは74%で、そのうち75%は何らかの理解を得られたと回答したものの、改定後の標準的運賃の8割以上を収受できた事業者は44%に留まった。24年3月の改正標準的運賃の告示後、運賃交渉の場で同運賃を提示する事業者は増加しており、荷主側の理解も進んでいることが示されたが、収受額の乖離や、交渉自体に踏み切れない事業者も依然として多く、制度の完全な浸透には課題が残る結果となった。

(クリックで拡大、出所:国土交通省)

調査は25年3月に、全日本トラック協会の会員事業者約1100社と、荷主企業約200社を対象に実施された。24年3月に燃料費高騰分などを反映し、平均8%引き上げられた新「標準的運賃」の活用状況などを把握することが目的だ。

トラック事業者への調査によると、荷主に対して運賃交渉を行った事業者は全体の74%で、22年度の68%、23年度の71%から増加傾向にある。交渉の際に「標準的運賃を提示している」事業者が増えていることから、同運賃が交渉のツールとして活用され始めていることがうかがえる。交渉を行った事業者のうち、「希望額を収受できた」または「一部収受できた」と回答したのは75%に上り、多くの事業者で荷主の一定の理解が得られていることが分かった。

しかし、これは事業者全体の割合で見ると55%に過ぎず、残りの事業者との間には依然として大きな隔たりがある。交渉に踏み切れない理由としては、「契約打ち切りの恐れ」や「荷主の経営状況を考慮」といった回答が多く、力関係の課題が改めて浮き彫りになった。

実際に収受できた運賃水準については、24年3月に改定された標準的運賃と比較し、その8割以上を収受できた事業者は44%(前年比6ポイント減)に留まった。国交省は、運賃水準が平均8%引き上げられた改定があったため、23年度調査(50%)より乖離が大きくなったと分析している。20年当初の標準的運賃ベースで見ると、24年度調査で8割以上を収受できた事業者は53%と3ポイント増だが、これは燃料費高騰分を反映していない水準。適正な運賃収受への道のりはまだ長いことを示唆している。

(クリックで拡大、出所:国土交通省)

一方で、1運行あたりの収受額は、前年度と比較して平均で2318円増加した。契約ベースで見ると、35%の契約で運賃が「増加」しており、着実な進展も見られる。

運賃値上げがドライバーの処遇改善に繋がっているかという点では、運賃値上げを原資として賃上げを「実施した」企業は60%だった。賃上げを実施した企業のうち、その平均賃上げ率は「5%以下」が67%と最も多く、次いで「6%~10%」が23%となっており、ドライバーへの還元も十分とは言えない状況だ。

(クリックで拡大、出所:国土交通省)

荷主側への調査では、運送事業者から「新たな運賃を提示されたことがある」と回答した企業は80%に上り、そのうち89%が「新たな運賃を受け入れた」または「一定程度受け入れた」と回答。運賃上昇に対する荷主側の理解は進んでいることが示された。

今回の調査結果は、標準的運賃が運賃交渉の共通言語として機能し始め、荷主の理解も進展しているという明るい側面を示す一方、実際の収受額との乖離や、交渉に踏み切れない事業者の存在、ドライバーへの十分な還元など、多くの課題が残されていることを明確にした。2024年問題を乗り越え、持続可能な物流を実現するためには、国による継続的な周知・啓発に加え、荷主と物流事業者の双方による、より一層の努力と行動変容が求められる。

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