調査・データNXホールディングス傘下のNX総合研究所はこのほど「2025年度の経済と貨物輸送の見通し」(7月改定)を発表した。米国の関税政策を巡る不透明感の高まりが世界経済の減速を招くとして、25年(1-12月)の国内貨物総輸送量は前年比2.1%減と、4年連続のマイナスになるとの見通しを明らかにした。建設関連貨物の需要減が全体を押し下げる構図で、国際貨物については、輸出の低迷と輸入の堅調という傾向がより鮮明になる見通しだ。
今回の見通し改定の最大の背景は、トランプ米政権による関税政策の先行き不透明感だ。レポートでは、「関税政策が二転三転しており、着地点の予測は困難」と指摘。これにより世界経済の減速は避けられず、日本経済においても「輸出や生産活動が大きく下押しされるほか、内外経済の先行き不透明感が増す中、設備投資も伸び悩む」と想定しており、これが国内の貨物需要全体を押し下げる主因となっている。
25年の国内貨物需要は、品類別に見ると軒並み前年割れとなる厳しい見通しだ。輸送量全体に最も大きな影響を与える建設関連貨物は、人件費や建設資材の高騰を背景に3.0%減と、3年連続での減少を予測。生産関連貨物も、米国の関税政策などの影響を受け、自動車や鉄鋼、化学工業品などの荷動きが低調となり、1.6%減と2年連続のマイナスを見込む。消費関連貨物も、物価上昇による実質賃金の伸び悩みが響き、夏場の飲料需要などが見込まれるものの、前年の反動もあり、1.3%減と3年ぶりのマイナスに転じるとした。
輸送モード別に見ると、国内貨物の中心である営業用自動車は2.2%減、内航海運も2.0%減と、需要全体の落ち込みを反映する形となる。レポートでは、24年問題を受けたトラックから他モードへの代替輸送について、現状では大幅なシフトは進んでいないと指摘。24年4月から12月の実績で、JRコンテナや内航RORO船の伸びは小幅に留まっており、トラックからの需要シフトが本格化している様子は見られないと分析した。25年度のJRコンテナは3.7%増と予測されるが、これは主にリニア中央新幹線建設に伴う発生土輸送といった特殊要因によるもの。また、6.3%増と大幅な増加が続く国内航空も、ヤマトホールディングスの貨物専用機運航開始による押し上げ効果が大きいとしている。
国際貨物については、輸出と輸入で明暗が分かれる見通しだ。外貿コンテナの輸出は、世界経済の減速感を背景に1.9%減と2年連続のマイナスを予測。海外の設備投資需要の勢いが弱まることや、特に米国の自動車追加関税の影響を受け、自動車関連の低迷が響く。国際航空の輸出も、半導体関連需要が下支えするものの、欧米向けが失速し、全体の伸びは2.7%増と前年度から鈍化する。
一方、輸入は引き続き好調を維持。外貿コンテナは、国内の生産拠点回復や、中国・アジアからの低価格品の流入増などを受け、4.8%増と2年連続のプラス成長を予測。国際航空の輸入も、生産財、消費財ともに活発な荷動きが継続し、8.2%増と高い伸びを見込んでいる。
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