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JMS、商用車メーカー4社が描く「運ぶ」の未来

2025年10月29日 (水)

イベント「Japan Mobility Show 2025」(JMS)が30日より、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される。29日は報道向けの内覧会が開かれ、各社がプレス向けブリーフィングを行った。商用車では国内のいすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、日野自動車が出展するほか、中国のBYDも日本向けに開発したトラックを披露した。

▲いすゞ自動車が提案する輸送モビリティー、VCCC

各社はそれぞれの立場から、カーボンニュートラル、物流効率化、人材不足など共通課題に対する答えを提示。脱炭素と自動化という2つの潮流のもと、商用車の役割を再定義する姿勢が際立った。

「2024年問題」後の物流体制をどう描くか

4社に共通するのは、「持続可能な物流」への危機感を前提にしている点である。とくにいすゞと日野は、国交省が掲げる“輸送力34%不足”という構造的課題を踏まえ、ドライバーの労働環境や業務効率化を主眼に据えた。

いすゞは「運ぶで描こう未来のみんなの未来」をテーマに、幹線輸送とラストワンマイルの双方に自動運転やコネクテッド技術を取り入れる構想を提示。日野は「荷待ち荷役」などの可視化に取り組み、トラックに標準搭載されたICTサービス「日野コネクト」を活用して、入退場管理を自動化する仕組みを紹介した。

▲BYD JAPANのT35

一方、三菱ふそうとBYDは政策対応よりも、エネルギー転換と市場実装を軸に置く。三菱ふそうは水素燃焼エンジンと燃料電池の両軸開発を進め、sLH2(サブクール液化水素)によるインフラ整備の現実解を示した。BYDは日本専用設計の小型EVトラック「Te35」を世界初公開し、普通免許対応の低コストEVとして中小物流事業者への普及を狙う。

EV・水素・自動運転、三極構造の競演

技術の方向性は、4社それぞれの強みを反映している。BYDはEV専業メーカーとしての完成度を前面に押し出し、航続250キロの小型電動トラック「Te35」でスマートトラック化を推進。災害時給電やソフトウエア更新など、電気車両ならではの利便性を物流に取り込んだ。

▲三菱ふそうは2つの異なる方式を採用した水素式トラックを発表

いすゞは自動運転とコネクテッド技術を融合させ、2027年度以降の実用化を目指す。縦型フレーム構造の「VCCC」で、車両単体ではなく「運ぶ仕組み」そのものを再設計するアプローチを示した。

三菱ふそうは、水素燃焼と燃料電池の二軸戦略を掲げ、長距離輸送を想定した新型トラックを世界初公開。サブクール液化水素による補給効率化と輸送コストの削減で、脱炭素化を現実的なステージに引き上げた。

日野は燃料電池大型トラック「プロフィアZF-CUV」を量産化し、ディーゼル車と同一ラインでの混流生産を実現。電動・水素・内燃機関を並行して磨く“マルチパスウェイ”戦略を具体化し、日本のメーカーとしてバランスの取れた脱炭素対応を打ち出した。

▲日野自動車は次世代モビリティーponchoを提案

つまり、BYDはEVによる商用車化、いすゞは自動運転と物流システム化、三菱ふそうは水素の二軸開発、そして日野は量産とマルチパスウェイの統合という形で、それぞれ異なる技術的焦点を明確に打ち出した。その棲み分けが今回のショーでくっきりと浮かび上がったといえる。

ニーズの高いモビリティで物流と社会を支える

4社に共通しているのは、技術展示にとどまらず、「社会を支えるモビリティ」を提案している点だ。すなわち、各社が目指すのはニーズの高い車両を市場に投入し、物流と社会の両面で価値を生むことである。

BYDは「All for Japan」を掲げ、日本専用モデルで地域の物流を支援する姿勢を明確にした。いすゞは「運ぶ人のウェルビーイング」をテーマに、物流の現場を担う人々の生産性と安全性を高める取り組みを示した。三菱ふそうは、燃料供給企業や物流事業者との共創を通じ、水素社会の実現に業界横断で貢献する方針を示す。日野は、地域交通を支える新型モビリティー「poncho.」(ポンチョドット)で、高齢化社会や地方の移動課題に対応する姿勢を打ち出した。

いずれのメーカーも、“売る”ことと“支える”ことを一体ととらえ、商用車の社会的使命を再定義している。

異なる道を歩みながら、共通の未来を見据える

EV、水素、自動運転——技術のアプローチは異なるが、4社の方向性は共通している。それは、「持続可能な物流を通じて日本社会を支える」という使命感だ。脱炭素化と自動化はもはや競争領域ではなく、産業全体で社会を再設計するための共通基盤となりつつある。

ことしのJMSは、単なる新技術の展示会ではなく、商用車メーカーが“これからの社会をどう運ぶか”というビジョンを競い合う場だった。それぞれの挑戦の先には、持続可能な輸送網を土台とした、次世代の日本経済の姿が見えてくる。

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