ロジスティクス2024年8月の竣工から1年。東京23区内では極めて希少な大規模マルチテナント型物流施設として誕生した「アライプロバンス葛西」(東京都江戸川区東葛西)は、今、物流業界から熱い視線を浴びている。当初の狙い通り、大手・中堅EC事業者がラストワンマイル拠点として利用するなど、その圧倒的な立地優位性は証明された。しかし、この施設の真価はそれだけにとどまらない。竣工後の1年で浮かび上がってきたのは、デベロッパーの想定を上回るほどの「保税倉庫」としての巨大なニーズだった。

▲『アライプロバンス葛西』の外観
現在、申し込みベースで稼働率75%に達し、残るは4・5階の2区画のみ。なぜ、この施設はこれほどまでに企業を惹きつけるのか。その答えを探るべく、筆者は、デベロッパーであるアライプロバンス(東京都墨田区)の鈴木大氏と、既に入居し、そのポテンシャルを最大限に活用するトップウェル(東京都千代田区)の中澤有啓社長に話を聞いた。現場のプロフェッショナルが語るリアルな声から、アライプロバンス葛西が持つ、まだ見ぬ可能性を紐解く。
「保税」が付加価値を生む、絶妙なコストバランス
「東京23区内の物流施設だから、普通の倉庫として見れば賃料は少し高いかもしれない。しかし、保税倉庫としての付加価値を考えれば、この自由度とコストのバランスは非常に良い。最高の立地だ」。

▲施設の強みと事業展望を語るトップウェル・中澤有啓社長
開口一番、そう語るのは、竣工当時からアライプロバンス葛西に入居するトップウェルの中澤社長だ。同社は、主に中国の越境EC事業者によって日本国内に輸入された商品の通関・倉庫保管・国内配送を一貫してサポートする国際物流企業。40フィートコンテナで運ばれてきたEC商品(家電や生活雑貨など)をデバンニングし、アライプロバンス葛西の倉庫で保管。出荷要請に応じて個人宅やECモールの物流拠点へ配送を手配する、まさにラストワンマイルと国際物流が融合した事業を展開している。
中澤社長が指摘する「自由度」とは、港湾エリアの倉庫では得られない「オペレーションの自由度」だ。「港湾エリアの保税倉庫だと、作業時間に制限があったり、土日は動けなかったりする制約が多い。しかし、ここは港湾区域外なので、時間制限なく、自分たちの裁量で自由にデバンニング作業ができる。海外からの貨物は到着予定が読めないことが多いうえ、入庫後すぐの出荷を要請されることもあるため、この自由度は何物にも代えがたい」(中澤社長)。この時間的制約からの解放が、結果的にコスト削減と顧客へのスピーディーな対応を可能にし、施設の賃料を十分にペイできる価値を生み出しているのだ。

▲40フィートコンテナからの荷下ろし(デバンニング)作業の様子
日々の業務を支える「現場力」の高い立地
「最高の立地」と中澤社長が語る理由は、マクロなアクセス性だけではない。日々のオペレーションを支えるミクロな環境も、他の施設にはない大きな魅力だという。
「都内、しかも23区内でありながら周辺住民も多いので、とにかく人材が集まりやすい。以前、川崎や埼玉、千葉の遠隔地で事業をしていた時は、本当に人集めに苦労した」(中澤社長)。豊富な労働力を背景に、安定した現場運営が可能になることは、事業者にとって大きなアドバンテージだ。

▲EC貨物だけでなく、個人輸入品なども取り扱うトップウェルの保税倉庫
加えて、倉庫区画のつくりが横広になっているのもメリットだという。「アライプロバンス葛西の倉庫区画は、間口が広く1区画あたりのトラックバースが多い。その分奥行きはないが、頻繁に貨物を出し入れする保税・通関事業者にとっては非常に使い勝手がいい。出し入れのしやすさが、顧客に対するスピーディーな対応につながっている」(中澤社長)。
さらに、従業員の働きやすさや、日々の細かな業務効率に直結する周辺環境も充実している。「隣に大きな商業施設があるので、スタッフの食事の選択肢が豊富。もちろん、施設内の共用カフェテリアも使い勝手がいい。すぐ近くにホームセンターがあるのも非常に便利ですね。現場で急にガムテープなどが必要になっても、すぐに買いに行ける。こうした細かな利便性が、日々の業務効率を確実に上げてくれる」。(中澤社長)
偶然が生んだ「物流ハブ」という相乗効果
アライプロバンス葛西には、トップウェルのほかにも複数の保税・通関業者が入居している。中澤社長によれば、この「同業者の集積」が、予期せぬ相乗効果を生んでいるという。

▲入居企業同士の相乗効果を語る中澤社長
「入居している企業の社長は、ほとんどが知り合い。だから、業務上の連携が非常にしやすい。例えば、うちは海上貨物がメインだが、隣の会社は航空貨物が得意。急な依頼があれば『ちょっと手伝ってくれないか』と、お互いに融通を利かせることができる。これは本当に大きなメリットだ」。
この施設は、単なる建物の集合体ではなく、入居企業同士が連携し、新たなビジネスチャンスを生み出す一種の「国際物流ハブ」として機能し始めているのだ。
加えて、EC関連の事業者が集積しているのも今後の連携拡大に期待できる。トップウェルは、個人宅向けの出荷も行う一方で、ECモールなどが運営する物流センターに大ロットで出荷することもある。郊外の物流拠点に比べて輸送距離が短く済むため、既に協力会社の負荷は低いというが、さらにEC関連事業者が集積することで、宅配事業者をはじめとする輸送協力会社を共同利用することも考えられる。
今後、入居者同士の連携が進めば、「国際EC物流ハブ」に進化する可能性を秘めているのだ。

▲デバンニング作業の横では、大手宅配事業者の集荷トラックが大量のEC商品を受け取る
デベロッパーの慧眼と、残る2区画の可能性
こうしたテナントのリアルな声は、デベロッパーであるアライプロバンスの鈴木氏の分析とも一致する。

▲アライプロバンス鈴木大氏
「東京23区の立地からラストワンマイル拠点としての需要は確信していた。それに加え、越境ECの急成長が、ラストワンマイルと連携する保税倉庫という新たなニーズを生み出したと感じている」
現在テナントを募集しているのは、4・5階の2区画のみ。車両が直接乗り入れ可能な4階と、垂直搬送機、貨物用エレベーターで連携する5階のメゾネット仕様だ。鈴木氏は、「輸出前の準備倉庫や、返品センター、EC物流センター、ショールーム・在庫兼用拠点、災害時のバックアップ拠点など、さまざまな用途に対応する可能性を秘めている。輸出前の準備倉庫については、集約された貨物を4・5階に直接降ろし、仕分け・検品・梱包後、近隣の空港や港湾へスムーズに輸送できる。まさにこの立地だからこその使い方。災害時のバックアップ拠点については、昨今大規模な災害が増えていることから需要が高まっている。インフラが堅牢なため、災害時の緊急物資倉庫としての用途も考えられる」と、そのポテンシャルを語る。
中澤社長も「都内で、スピーディーに物量を捌ける東京税関管轄の新しい保税施設は本当に少ない。しがらみがなく、自由度の高いここは、新しいビジネスを始めるには最高の場所」と、この希少な機会を逃すべきではないと後押しする。
「ワクワクする空間」で、国際物流総合展へ
ハード面だけでなく、5階にはスカイツリーやディズニーランドを望むラウンジを設けるなど、「すべての人がワクワクする、斬新で上質な空間を提供する」という同社の思想も、この施設の大きな魅力だ。
この思想は、9月10日から東京ビッグサイトで開催される「国際物流総合展 2025 第4回 INNOVATION EXPO」の出展ブースにも貫かれている。5年連続の出展となる今回も、アライプロバンスならではの「遊び心」ある、大胆で上質なブースを準備しているという。
ラストワンマイルと国際物流、二つの巨大な潮流が交差する戦略拠点、アライプロバンス葛西。そのポテンシャルを、ぜひ展示会で直接確かめてみてはいかがだろうか。
<国際物流総合展2025 INNOVATION EXPO 出展概要>
出展ブース: 東7ホール 7-203