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運輸倉庫業の価格転嫁率が3割を切る、TDB調査

2025年8月28日 (木)

調査・データ帝国データバンク(TDB、東京都港区)は28日、企業がコスト上昇をどの程度販売価格に上乗せできたかを示す価格転嫁率は39.4%となり、2022年の調査開始以来最低となったとするレポートを公表した。運輸・倉庫業界では3割を下回った。同社は、人件費などの上昇分に対する転嫁が進んでいないうえ、度重なる値上げに対する抵抗感からさらなる価格転嫁に踏み切れずにいることが考えられると分析している。

ことし7月17日から31日まで、全国2万6196社を対象に、インターネットを通じて「価格転嫁」に関するアンケートを実施した。有効回答企業数は1万626社(回答率40.6%)だった。

自社の主な商品・サービスで、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」と回答した企業は73.7%となり、ことし2月の前回調査から3.3ポイント低下した。

内訳をみると、「2割未満」が23.9%(前回24.7%)、「2割以上5割未満」が17.0%(同17.2%)、「5割以上8割未満」が17.1%(同18.6%)と部分的な転嫁にとどまるとした企業が大部分を占めている。一方で、「8割以上」とした企業は11.9%(同13.1%)、「10割すべて転嫁」と回答した企業は3.8%(同3.5%)だった。

一方、「全く価格転嫁できない」と回答した企業は前回調査より1.3ポイント増え12.5%となった。「顧客は値上げに敏感なので怖くて上げられない。また、ライバルとの価格競争により、値上げは諦めるしかない」などの声も聞かれた。

コスト上昇分に対し、販売価格にどの程度転嫁できたかを示す「価格転嫁率」は39.4%だった。コストが100円上昇した場合に39.4円しか販売価格に反映できず、残りの6割超を企業が負担していることを示しており、前回調査の40.6%から1.2ポイント低下し、2年半ぶりに4割を下回った。

業種別に見ると、「化学品卸売」(53.8%)や「鉄鋼・非鉄・鋼業製品卸売」(52.3%)など、比較的価格転嫁がしやすい卸売業でも、転嫁率が5割を超える業種は一部にとどまった。

一方、「飲食店」(32.3%)や「旅館・ホテル」(24.9%)など、消費者に近い川下に位置する業種では、継続的な価格転嫁が難しい状況となっている。

「運輸・倉庫」も28.8%と3割を下回った。企業の中には「2024年問題を通じて、従来どおりの物流を提供していくためには、値上げが必要であることを顧客に理解してもらった」という声もあったが、燃料費の高止まりや重層的な取引構造が値上げ交渉を難航させている状況がうかがわれる。

同社は、価格転嫁が進まない状況について「企業の収益力が低下し、持続的な賃上げやイノベーションへの投資が停滞する可能性が高い」と指摘。「政府や業界団体も、公正な取引慣行の推進や制度的な支援を通じて、企業が適正に価格転嫁できる環境を整備することが求められる」としている。

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LOGISTICS TODAY編集部
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