調査・データ東京商工リサーチ(TSR)は9月30日、全国の労働局が8月末までに公表した「雇用調整助成金」などの不正受給件数が、2020年4月からの累計で1814件に達したとのレポートを公表した。不正受給総額は588億3043万円にのぼったが、ことし8月までの公表件数は269件となり、月平均33.6件で、前年同期の月平均56.5件を大きく下回った。6月から3か月連続で20件台にとどまり、不正受給の公表はピークの3分の1程度となった。
同助成金は事業の縮小を余儀なくされながらも雇用を維持した事業主に対し、従業員に払った休業手当や賃金の一部を助成する制度で、コロナ禍で経営難に陥った企業を迅速に支援するため、20年から特例措置として手続きを簡素化した。コロナ禍での雇用を支えてきたが、特例措置は23年度で終了した。
一方、手続きの簡素化によって、不正受給の増加も懸念されたが、国は助成金支給後にチェックを行い、不正受給していた企業に助成金の全額返還を求めるほか、悪質なケースについては企業名を公表している。中には、悪質性が極めて高いとして、関係者が逮捕された事例もある。同社では各都道府県の労働局が企業名を公表した不正件数を集計、分析している。
同社によると、20年4月からことし8月までの5年4か月で企業名が公表された不正件数1814件のうち、雇用調整助成金だけの受給は1051件で全体の57.9%を占めた。パートタイマーなど雇用保険被保険者ではない従業員の休業に支給される「緊急雇用安定助成金」のみの不正は239件(同13.1%)、両方の不正受給は524件(28.8%)だった。
公表された企業のうち、同社が分析可能な1388社を分類したところ、 産業別では「サービス業他」の636社が最も多く、全体の45.8%を占めた。次いで、建設業185社、製造業150社、運輸業100社と続いた。
産業を細分化した業種別では、最も多いのが飲食業の203社で14.6%を占め、唯一200社を超えた。次いで、建設業185社、人材派遣や業務請負などの「他のサービス業」133社、旅行業や美容業などの「生活関連サービス業,娯楽業」108社、運輸業100社が続いた。
不正受給が公表された企業のうち、倒産した企業は9月末までに117件に達した。公表された企業の6.44%で、7月から0.49ポイント上昇した。同社が集計した24年度の倒産発生率は0.28%で、不正受給が公表された企業の倒産発生率は非常に高い。
厚生労働省によると、各都道府県労働局の調査で発覚した不正受給は非公表企業を含めて、今年6月末で4280件、支給の取消金額は1044億6000万円だった。
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