調査・データNX総合研究所(東京都千代田区)は3日、2025年度の国内貨物の総輸送量は通期で2.3%減少し4年連続のマイナスが見込まれるとするレポート「経済と貨物輸送の見通し」を公表した。品類別輸送量では、消費関連貨物が前年度比1.3%減で3年ぶりのマイナス、生産関連貨物も同1.9%減、建設関連貨物が3.1%減と3年連続のマイナスになると予測している。物価高騰や金利の上昇などが悪影響を及ぼしている。
国内貨物輸送の総輸送量の推移をみると、上期は堅調な国内民需の堅調で消費関連貨物が増加し、生産関連貨物も小幅減にとどまったものの、建設関連貨物が不振で、トータルでは3.5%減と大幅に落ち込んだ。下期は建設関連貨物が小幅に盛り返す一方、国内の民間需要の減速で、消費関連貨物と消費関連貨物が低調になると予測される。このため、通年では前年度の1.4%減よりマイナス幅が拡大するとした。
消費関連貨物は実質可処分所得の伸び悩みや消費者物価高騰の影響のほか、昨年度が大幅増になった反動もあって、下期に大幅な減少が避けられない見込みとなっている。生産関連貨物も米トランプ政権による関税政策を受けて1-3月期に駆け込み需要が発生したものの、その後は鉱工業生産の低調などが下押しの要因となり、通期では前年度の0.6%減からマイナス幅が拡大する。建設関連貨物は、公共投資に期待できないうえ、金利先高観などから住宅投資も伸び悩んでいる。
輸送機関別では、JR全体が通年で2740万トンの2.5%増となる。JRコンテナはリニア中央新幹線建設工事による土砂の輸送がプラスに大きく寄与しており、5.0%増を見込んでいる。JR車扱は、上期に石油の低調などを受け前年同期比1.6%減と低調に推移した流れを受け、下期も前年のセメントの前倒し出荷の反動などの影響で、同4.1%減とさらに低迷。通年では前年度比2.9%減となることが見込まれる。その他の鉄道も、セメントや石灰石、石油などの減少が見込まれ、1130万トンで同4.4%減となる。
営業用自動車は、年度を通じて消費関連貨物、生産関連貨物、建設関連貨物の全てが振るわず、通年では24億8760万トンの1.3%減と4年連続のマイナスになると予測。自家用自動車は、建設関連が大幅に落ち込んだのが響き、通期で11億7160万トンと4.2%減となる。
内航海運は通期で2億9570万トンと2.6%減の見込み。石油製品、鉄鋼、化学工業品が低調だったことから、生産関連貨物が3%減少し、建設関連貨物も同2%近い減少となる。
国内航空は、64万2000トンで6.7%の増加を見込んでいる。昨年4月から始まった大手宅配便事業者による貨物専用便の運航によって押し上げられているものの、効果は徐々に縮小している。
国際貨物の輸出量は101万3300トンの1.9%増と2年連続の増加となる見込み。太平洋線は米国の追加関税本格発動によって19万3200トンと1.5%減となる。欧州線も自動車部品特需の反動で16万200トンと9.5%減少。アジア線は中国向けが伸び悩むものの、全体的には堅調で65万9900トンの同6.2%増と2年連続の増加が見込まれる。しかし、コロナ前の2019 年度と比較すると、93.1%と依然として下回っている。
半導体関連(電子部品・製造装置)は、AI関連需要の拡大が続き、製造装置・電子部品ともに堅調で、米国向けでは半導体追加関税導入前の駆け込み需要もあった。自動車部品は、日系製造業のEVシフト対応遅れや海外の自動車・EV市場の減速で低調な荷動きが続いている。下期は米国の発動の影響が拡大した。
一方、輸入量は126万7600万トンで同7.6%増と2年連続のプラスになる。このうち消費財は、物価上昇圧力の緩和や一巡、円高基調への転換などによって押上げられ、前年度を上回る水準の伸びとなる。生産財は、生産拠点の国内回帰などで生産用機器や部品・部材類は堅調な荷動きとなっている。
7-9月実績の国内向け出荷量「荷動き指数」はマイナス13と、前期(4-6月)実績のマイナス14から1ポイント上昇した。10-12月の見通しでは6ポイント改善し、マイナス7を予想しているが、下振れの可能性もある。
7-9実績の業種別「荷動き指数」では、全15業種のうちプラスが精密機械の1業種だけで、7業種では前期(4-6月)より悪化した。10-12月見通しでは、10業種が上昇する予想だが、プラスは食料品・飲料、木材・家具、精密機械、その他の4業種にとどまる見込みとなっている。
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