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X Mile主催「物流DX未来会議」現地レポート

紙とデジタルの共存、ハイブリッドDXが現実解か

2025年10月8日 (水)

イベントX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)と本誌が共催する大型カンファレンス「物流DX未来会議2025」が8日、都内で開かれた。セッション「現場の紙・FAXは消せるのか?」では、高末(名古屋市熱田区)とLINE WORKS(ラインワークス、東京都渋谷区)が登壇。完全なペーパーレス化の難しさや、残存する紙業務を効率化する「ハイブリッドDX」の可能性を議論した。

高末は、独自の輸送管理システム(TMS)を構築し、受発注から配車計画、ドライバーとの情報連携に至るまで、一貫したデジタル化を進めてきた。事業本部営業グループ・構内グループの永田直覚グループ長は「荷主様へコストダウンというメリットを丁寧に説明し、協力的な大口顧客から段階的に導入を進めた」と説明。この取り組みで、受発注業務の8割を電子化した。

▲高末の永田直覚氏

しかし、永田氏は「完全に電子化できた業務は正直ない」と打ち明ける。現在も2割の受注はファクスやメールに依存し、そのデータは担当者が手作業でTMSに入力している。1営業所あたり1日に20枚から30枚のファクスが届き、全社では月に数千枚に上るという。加えて、物流センターでパート従業員が手書きで作成する作業日報も課題だ。生産性分析のために手書きの日報をExcel(エクセル)へ転記する作業が発生し、入力ミスや記載漏れのリスクが残る。永田氏は、トップダウンでDXを進めても、一部に残る紙業務が全体の効率化を阻害している現状を語った。

こうした課題に対し、ラインワークスは新たな解決策を示す。プロダクト営業本部の林将史部長は、多くの企業がDXを進めるなかで、一部のアナログ業務が残る「グラデーション的な状況が現実だ」と指摘する。その上で、紙の利便性を生かしつつ、データ入力や集計の手間を解消する新OCRソリューション「ラインワークスペーパーモード」を紹介した。この新サービスは、事前設定なしで手書きの文字や企業ごとに異なる帳票フォーマットをAIが認識し、高精度にデータ化する。特徴的なのは、単なる文字のテキスト化にとどまらない点だ。後続のシステムで利用しやすいよう、データを自動で整形・補正する。例えば、配送先が「いつものところ」と書かれていても、マスターデータと照合して正式な住所を自動で補完する。

▲ラインワークスの林将史氏

林氏は、新ソリューションがデータ化からシステム連携までを自動化し、デジタル化された業務フローと残存するアナログ業務を融合させる「ハイブリッドDX」を実現すると強調した。この提案に、高末の永田氏は「今も残っているファクスの注文書を、自動で自社のTMSに取り込めるのであれば非常に有効なサービスだ」と述べ、大きな期待を寄せた。デジタル化の理想と現実のギャップを埋める次の一手として、紙と共存するDXの形が、今後の物流現場の変革を後押しするかもしれない。

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