調査・データ政府が目標に掲げる「2020年代の時給1500円」について、企業の5割近くが「自社での対応が不可能だ」と考えているとする調査結果を、東京商工リサーチ(TSR、東京都千代田区)が16日に公表した。同社は「国主導で進む賃金引上げに、企業の半数がついていけない現実が浮き彫りになった」としている。
同社は今月1日から8日まで、インターネットを通じてアンケートを実施。6280社から回答があった。1500円への引き上げに関しては昨年12月にも同様の調査を実施している。
調査結果によると、30年までの5年以内に時給1500円への引き上げが可能かどうか尋ねたところ、「不可能」の49.2%が最も多く、ほぼ半数が「対応は困難」と回答した。昨年12月の調査では48.4%で若干悪化した。一方、「すでに時給1500円以上を達成」は17.3%で、「可能」も33.3%だった。余力のある企業はすでに賃上げに取り組んでいることがわかる。
産業別でみると、「すでに達成」では情報通信業の35.3%が最も高かった。「不可能」では製造業が59.7%で最も高かった。
不可能と回答した企業に「どうすれば可能になるか」と複数回答で尋ねたところ、「賃上げ促進税制の拡充」が46.7%で最も多く、次いで「生産性向上に向けた投資への助成、税制優遇」(44.2%)、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」(27.8%)が続いた。
規模別でみると、「生産性向上に向けた投資への助成、税制優遇」は大企業で53.2%だったのに対して、中小企業では43.7%だった。
また、ことしの最低賃金の引き上げを受け、給与を引き上げるかどうかを尋ねたところ、「引き上げ後の最低賃金額より低い時給での雇用はなく、給与は変更しない」が43.2%で最も多く、昨年8月に実施した調査結果の59.6%より15ポイント以上下落した。
次いで「引き上げ後の最低賃金より低い時給での雇用はないが、給与を引き上げる」の29.5%、「現在の時給は引き上げ後の最低賃金額を下回っており、最低賃金額と同額まで給与を引き上げる」15.2%、「現在の時給は引き上げ後の最低賃金を下回っており、最低賃金額を超える水準まで給与を引き上げる」11.9%が続いた。今後給与を引き上げるとの回答は合計56.7%だった。現時点で、引き上げ後の最低賃金より低い時給での雇用があるとした企業は27.1%だった。
来年度に許容できる引き上げ額については2680社から回答があり、「許容できない」の18.8%が最も多かった。前回調査の17.1%より1.7ポイント上昇した。引き上げ幅で最も多かったのは「91円以上100以下」の15.4%で、許容額の中央値は60円、平均値は100.7円と、引き上げ耐性が二極化している。
産業別でみると、「許容できない」の比率が最も高かったのは農・林・漁・鉱業の32.2%だった。許容額「101円以上」が最も多かったのは、情報通信業の29.4%だった。
最低賃金の上昇に対する対応(複数回答)については、「商品やサービスの価格に転嫁する」が39.1%で最も多く、「設備投資を実施して生産性を向上させる」が20.1%だった。一方で、「できる対策はない」も14.0%に達し、「残業をなるべく減らす」「仕入先の変更」といった声もあった。
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