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大手物流会社が認めた“うるさい警告”の実力

「論よりナウト」AIドラレコが導く死亡事故ゼロ

2025年12月10日 (水)

話題人手不足と労働時間規制が重くのしかかる「2024年問題」。物流企業は今、かつてないプレッシャーのなかで日々の運行を支えている。車両の安全機能は進化し、自動ブレーキや車線逸脱警報は標準装備となりつつある。しかし、それでもなお、重大事故の発生件数は下げ止まりの傾向を見せている。なぜか。

トラックのハンドルを握るのは、生身の人間だからだ。疲労、慢心、焦り、そして魔が差す瞬間。プロのドライバーであっても、人間である以上、エラーをゼロにすることはできない。運行管理者の願いは一つ。「行ってらっしゃい」と送り出したドライバーを、無事に「ただいま」と家に帰してやりたい。被害者を出さないことはもちろん、大切な社員とその家族の生活を守り抜きたい。その切実な想いが、安全管理の現場にはある。

そんな責任感の強い安全管理責任者たちから、急速に支持を集めているAI(人工知能)ドラレコがある。Nauto Japan(ナウトジャパン、東京都千代田区)の「ナウト」だ。導入企業の一つである丸全昭和運輸の責任者は、このデバイスをこう呼んだ。

「これは、しゃべるお守りなんです」

▲ナウトジャパンのAIドラレコ

トラックドライバーは、常に死と隣り合わせの職場にいる。だからこそ、家族の写真やお守りをキャビンに飾り、安全を祈る。ナウトは、その「祈り」をテクノロジーで「実行」に変える。ただ記録するだけでなく、ドライバーの命を守るために“声をかける”存在。なぜナウトは「お守り」としての信頼を勝ち得たのか。その真価は、他社製品とは一線を画す「検知の哲学」と、それを使う人間たちの「覚悟」にあった。

AIドラレコとは何か?「記録係」から「相棒」への進化

従来のドライブレコーダーは、あくまで「記録係」だった。事故や急ブレーキが起きた瞬間の映像を残し、事後の事故処理や指導に使うためのものだ。しかし、これでは「事故そのもの」は防げない。起きてしまった結果を嘆くことはできても、時間を巻き戻すことはできないからだ。

対してAIドラレコは、車内と車外をカメラで常時監視し、AIがリスクを判断する。「わき見をしている」「車間距離が詰まっている」。そう判断した瞬間に警告音を鳴らし、事故になる前のヒヤリハットの段階でドライバーに気づかせる。これが「AIドラレコ」の定義だ。

しかし、一口にAIドラレコと言っても、その性能は千差万別だ。「顔が前を向いていない」だけで警報を鳴らす単純なものから、ナウトのように人間の挙動を深く理解するものまで、そこには雲泥の差がある。ナウトが「しゃべるお守り」という二つ名を得た理由は、この「理解力」の深さにある。

▲従来型のドラレコでは対応しない「未然防止」や「習慣改善」に対応するのが、AIドラレコの特徴

「しゃべるお守り」の理由1:事故予防に特化した「愛あるお節介」

ナウトの最大の強みは、「事故予防」への執念だ。記録を残すことよりも、「その瞬間のリスクを断つ」ことに主眼を置いている。

「おい、危ないぞ」「前を見ろ」。まるで助手席にベテランの運行管理者が同乗しているかのように、ナウトはドライバーに注意を促す。人間は誰しも魔が差す瞬間がある。無意識のうちにスマホに目がいくこともあるだろう。その「魔の瞬間」に機械が介入し、ハッと我に返らせる。このリアルタイムのフィードバックこそが、事故を未然に防ぐ唯一の手段なのだ。

実際にナウトを導入した企業の多くで、導入直後から事故件数が激減しているのは、この「お節介」が機能している証拠である。ドライバー自身も気づかない一瞬の隙を埋め、命を守る。それが「しゃべるお守り」の第一の役割だ。

「しゃべるお守り」の理由2:「監視」でなく「見守り」であること

AIドラレコ導入の最大の壁は、ドライバーの心理的抵抗だ。「会社に監視されている」「粗探しをされている」と感じれば、現場は反発し、最悪の場合、退職につながるリスクさえある。

しかし、ナウトのアプローチは「監視」ではない。「あなたを無事に家族の元へ帰したい」。そのための「見守り」であるというメッセージが、製品設計の端々に込められている。

例えば、ナウトは通常運転時の映像をクラウドに保存しない。AIがリスクを検知した前後の映像だけを切り取って保存する。休憩中や待機中のプライベートな時間は記録されない。そして何より、リスクがない時は沈黙を守る。

「何もなければ静かに見守り、本当に危ない時だけ声をかける」。この節度ある挙動が、ドライバーに「こいつは俺を監視しているのではなく、俺の命を守ろうとしているんだ」という信頼感を芽生えさせるのだ。

突出した「検知力」、形状認識と複合判断の威力

では、なぜナウトだけが、ドライバーの信頼を損なわずに的確な警告ができるのか。その秘密は、「形状認識」と「複合検知」という独自のAI技術にある。

多くの安価なAIドラレコは「顔の向き」しか見ていない。だから、安全確認のためにサイドミラーを見ただけでも「わき見」と判定してピーピー鳴る。これではドライバーはうんざりしてしまう。対してナウトは、以下のような高度な処理を瞬時に行っている。

1. 形状認識
AIが「スマホ」「タバコ」といった物体そのものを認識する。

単に下を向いているだけでなく、「スマホを操作している」という具体的な違反行動を特定できる。これにより、「なんとなく危ない」ではなく「ながら運転」という明確なリスクとして検知・指導が可能になる。

ナウトジャパンの堀尾氏は、この機能の重要性を次のように語る。「AIが形状認識できることで、携帯電話を持っている、タバコを吸っている、シートベルトをしていないといった具体的な違反を検知できる。これは、単なる安全運転だけでなく、昨今厳しく問われるコンプライアンスや企業の社会的信用の失墜につながるリスクを回避するためにも、企業として非常に重要な機能だと考えている」

2. 複合検知
インカメラ(ドライバー)とアウトカメラ(車両・道路状況)の情報を組み合わせ、文脈を判断する。

「バックギアに入っている時の後方確認」や「低速走行時の左右確認」は、顔が正面から外れていても「必要な動作」として除外する。一方で、「時速80キロでの視線逸脱」は即座に警告する。この「プロドライバーの運転行動」を理解したアルゴリズムが実装されているため、必要な時以外は静かでいられるのだ。

■リスク行動検知とアラートの様子

「見えない眠気」との闘い、あえて“誤検知”を残す理由

ここで避けて通れないのが、「精度の壁」だ。AIにおける「正確さ」とは何か。一般的には「誤検知(間違い)がないこと」とされる。しかし、安全管理の現場において、管理者が最も恐れるのは「誤検知(空振り)」ではない。「検知漏れ(見逃し)」だ。「AIが入っているのに、居眠りを見逃して事故が起きた」。これだけは絶対に避けなければならない。

一般的なAIドラレコは「目が閉じた」「頭がカクンと落ちた」という“単一の結果”を検知する。しかし、高速道路で完全に寝落ちしてから起こしても手遅れだ。

▲覚低運転による追突死亡事故を起こした車両(出所:国交省)

ナウトが見ているのは、人間の目では判別できない「マイクロスリープ」(微小睡眠)の予兆である。まばたきの頻度、視線の揺らぎ、表情筋の緩み。AIはこれらを複合的に解析し、ドライバー本人さえ自覚していない「脳の覚醒レベル低下」を検知する。

「俺は寝ていないのに警報が鳴った!誤検知だ!」。現場からそんな声が上がることもある。しかし、ナウトは、全世界で累積50億キロメートルという途方もない走行データを学習した結果、「検知漏れを防ぐために、あえて『グレーゾーン』は黒と判定して警報を鳴らす」という結論に達した。

堀尾氏は、この設計思想について力強く語る。「ドライバーは『寝ていない』と主張する。しかし、事故直前の映像を解析すると、目は開いていても意識が飛んでいる『漫然運転』の状態にあるケースが多々ある。ナウトは、人間の目には見えない脳の疲れや予兆を捉えている。だからこそ、たとえドライバーに『うるさい』と思われても、あえて警報を鳴らす。それが命を守ることにつながるから」。

▲ナウトジャパンセールスマネージャーの堀尾真允氏

ドライバーが「起きている」と思っていても、脳が寝ていればあえて警報を鳴らす。「うるさい」と嫌われるかもしれない。しかし、それは命を守るために必要な、ギリギリのラインでの介入なのだ。

もし本当に誤検知だった場合は、運行管理者が映像を確認し、「これは誤検知だね」と評価を修正(フィードバック)できる。この修正データはAIの再学習に使われ、アップデートにより精度が向上する。「機械任せ」にするのではなく、管理者が介在し、ドライバーとコミュニケーションを取りながらAIを育てていく。このプロセス自体が、安全意識を高める土壌となる。

「論よりナウト」、指導の景色を変えた“第三者”の目

導入初期段階ではドライバーから「うるさい」と言われるナウトだが、それを「納得」に変える仕組みがある。導入企業の丸全昭和運輸では、「論よりナウト」という言葉が現場に浸透しているという。

「お前、わき見していただろう」と管理者が口頭で言えば角が立つ。しかし、「ナウトがこう判定しているよ。映像を見てみようか」と言えば、そこに感情的な対立は生まれない。映し出されるのは、紛れもない自分自身の姿だ。スマホに目を落とした瞬間、タバコに火をつけた瞬間の前方不注意。「確かに、これは俺が悪かった」。客観的な映像とAIの判定(エビデンス)を前に、ドライバーは素直に自身の非を認めることができる。

また、一般的な教習動画を見せられるのと、自分のヒヤリハット映像を見せられるのとでは、教育効果に雲泥の差がある。他人の事故映像は「対岸の火事」だが、自分の映像は「我が事」だ。「あの時、一歩間違えれば死んでいたかもしれない」。その冷や汗を伴う実感こそが、ドライバーの行動変容を促す最強の教材となる。管理者が口酸っぱく言う必要はない。ナウトという公平な“第三者”が、事実を突きつけ、気づきを与えてくれるのだ。

「減点」ではなく「加点」へ、VERAスコアが変える評価制度

さらにナウトは、独自の運転評価指標「VERA(ベラ)スコア」を通じて、ドライバー評価のあり方に革命を起こしている。

これからの物流業界は、女性、シニア、外国人、そして他業種からの新人など、多様なバックグラウンドを持つドライバーが支えていくことになる。ここで問題になるのが、「評価の公平性」だ。「あの人はベテランだから」「昔からの付き合いだから」といった属人的な評価や、「言葉の壁」による指導の限界は、新しいドライバーの定着を阻む要因となる。

ベラスコアは、国籍も、性別も、社歴も一切関係ない。見ているのは「安全運転ができているか」という一点のみ。AIが「わき見」や「車間距離」といったリスク行動を客観的に数値化する。これにより、入社1年目の新人や外国人ドライバーであっても、安全意識が高ければベテラン以上の高評価を得ることができる。

▲ナウトの管理画面で表示される「ベラスコア」

「安全の評価を『減点』から『加点』へ変える」。ナウト導入企業の一部では、このスコアを基に「安全運転手当」や「ボーナス加算」といったプラスの評価制度を導入している。このポジティブな評価サイクルこそが、キャリアに関係なく、誰もが「プロのドライバー」として輝ける環境を作り出す。ナウトは、多様性時代の物流企業にとって欠かせない「公平な物差し」なのだ。

堀尾氏は、これからのドライバー評価のあり方についてこう提言する。「従来の安全評価は『事故を起こしたら減点』という減点主義だった。しかしこれからは、『いかにリスクの少ない運転を続けているか』を評価し、加点していくべきだ。ベラスコアならそれができる。正しく安全運転をしている人が、正しく報われる。その環境を作ることが、ドライバーの定着やモチベーション向上には不可欠だ」

「管理側にも覚悟が求められる」、クラウドに残る“最期の瞬間”

最後に、AIドラレコ導入が持つ「もう一つの重い意味」について触れておきたい。ナウトは、検知したリスク映像を即座にクラウドへ保存する。メモリーカード型のドラレコとは異なり、データは常に安全な場所に退避される。この機能について、導入企業であるSBSロジコムの安全管理責任者は、取材の中で重い言葉を口にした。

「AIドラレコを導入するということは、管理側にも覚悟が求められるということだ」

万が一、ドライバーが亡くなるような重大事故が起きた時。車両は激しく損壊し、火災が発生することもある。従来のメモリーカード型であれば、記録媒体ごと焼失し、事故の原因は永遠に闇の中へと消えてしまうかもしれない。しかし、ナウトは違う。たとえ車両が燃え尽きても、事故に至るその瞬間の映像は、クラウド上に鮮明に残る。

それはつまり、管理者が、仲間であるドライバーが命を落とすその瞬間を、映像として直視しなければならないことを意味する。「なぜ事故は起きてしまったのか。何が彼を死なせたのか。遺族の『同じ思いを誰にもさせたくない』という願いに応えるためにも、会社として原因を究明し、再発防止策を講じる義務がある。そのためには、どんなに辛くても、その映像を見る覚悟が必要だ」(SBSロジコムの安全管理責任者)

証拠が消えてしまえば、責任はうやむやにできるかもしれない。しかし、それではまた同じ悲劇が繰り返される。あえて「消えない記録」を残すこと。それは、企業として「二度と悲惨な事故を起こさない」という、退路を断った決意の表れでもあるのだ。

テクノロジーで「祈り」を「守り」へ

物流企業にとって、事故は最大の経営リスクであり、同時に最大の悲劇だ。人手不足のなかで、プロのドライバー一人ひとりは会社の宝。その宝を守るために、精神論や神頼みだけでは限界がある。

ナウトジャパンのAIドラレコは、50億キロの学習データに裏打ちされた「眼」と、多様なドライバーを公平に守る「評価指標」、そして検知漏れを許さない「覚悟」を持ったソリューションだ。それは単なる機械ではなく、ドライバーの隣で、片時も目を離さず安全を見守り続ける、頼もしい相棒(バディ)なのだ。

「行ってらっしゃい」の言葉に、「必ず無事に帰す」という確かな根拠を添えるために。今、物流企業の安全管理に求められているのは、ナウトのような「命を守るテクノロジー」への投資ではないだろうか。

AIドラレコ「ナウト」
WEB:https://nauto.jp/
Mail:infojpn@nauto.com
TEL:050-1745-4866

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