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調査・データホルムズ海峡の実質封鎖が続くなか、原油先物価格が9日、一時1バレル119ドル台まで急騰した後、急反落する乱高下を見せた。(編集長・赤澤裕介)
北海ブレント原油先物は9日の取引で一時119.50ドルと、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来初めて100ドルを突破。しかし、G7財務相が戦略備蓄の協調放出を協議していると伝わると売りが加速し、終値は98.96ドル(前日比+6.76%)まで押し戻された。米国産WTI(ウエストテキサスインターミディエイト)原油も一時119.48ドルをつけた後、94.77ドル(同+4.26%)で取引を終えた。時間外取引ではさらに下げが進み、WTIは一時81ドル台、ブレントも85ドル付近まで下落している。
トランプ氏「ガッツ見せろ」も現場は停止
価格急落の引き金となったのは、G7の備蓄放出協議に加え、トランプ米大統領の一連の発言だ。トランプ氏は9日の米テレビインタビューで、イランとの戦争は「ほぼ完全に終結している」と主張。ホルムズ海峡については「今、安全に開いている。船は通っている」と述べ、タンカー乗組員に対して「ガッツを見せろ。通れ」と通航を促した。米海軍がイラン海軍を壊滅させたとの認識を示し、価格高騰は「非常に小さな代価だ」と強調した。
ただし、現場の状況はトランプ氏の発言と大きく乖離している。海上情報統合センター(JMIC)は9日時点で脅威レベルを「クリティカル」と評価。過去24時間の商業船舶通過は貨物船1隻のみで、タンカーは2日連続で通過ゼロだった。海上インテリジェンス企業ウインドワードのデータでは、8日の海峡通過はイラン旗船2隻だけで、7日移動平均比で活動が66%低下している。AIS(船舶自動識別装置)信号の暗転も進み、海峡の交通実態は不透明なままだ。
イラン革命防衛隊(IRGC)は、米国・イスラエル大使を追放したアラブ・欧州諸国にのみ安全通行を許可するという「選択的開放」を提案しており、封鎖を外交カードに使う姿勢を鮮明にしている。イラン外務省報道官は「状況が不安定な限り、すべてのタンカーは十分に注意すべきだ」と警告した。クウェート、イラクなど主要OPEC産油国は出荷先を失い、減産に追い込まれている。
原油価格の乱高下を受け、日本の物流コストへの影響が懸念される。LOGISTICS TODAYの試算では、危機前の軽油小売価格は1リットル157円(原油65ドル、為替149円想定)。現在の原油水準と為替を当てはめると、影響は以下のとおりとなる。
ブレント終値ベースで軽油は1リットルあたり243円、時間外の下落水準でも211円となり、危機前から54-86円の上昇。120ドルが続けば300円に迫り、140ドル到達なら340円と過去に例のない水準に達する。為替もドル円158円台と6週間ぶりの円安水準にあり、原油高と円安のダブルパンチとなっている。日銀の植田和男総裁は紛争が日本経済に大きな影響を与える可能性を示唆し、利上げの長期据え置きを示している。
G7エネルギー相は10日に緊急の電話会合を開き、3-4億バレル規模の協調備蓄放出を協議する。ただし、ホルムズ海峡経由の原油は日量2000万バレルに上り、3-4億バレルの放出は完全封鎖が続いた場合の15-20日分にとどまる。市場は「数週間以内の海峡再開」を織り込み始めたが、再開が遅れれば備蓄の物理的な限界が意識される局面に入る。海峡の交通回復は米海軍の護衛実効性と保険料の正常化にかかっている。フランスも空母を派遣し海峡再開を支援する構えだが、IRGCの攻撃意図は低下していないとJMICは警告している。運送事業者にとっては、軽油価格の先行きが日単位で変わりうる不安定な局面が続く。
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