
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回はMonCargo、船積み情報を一元共有する新機能(1月21日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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話題国際海運・貿易実務の現場は、いまだにアナログな慣習が根強く残る「情報のブラックボックス」である。船積み情報、山積するPDF書類、関係者との調整事項が、メール、電話、Excel(エクセル)、個人のチャットツールに散在し、一つの荷物の動静を追うだけで膨大な工数が割かれている。こうした構造的な「情報の断絶」が、業務の属人化や予期せぬトラブルを招く中、現在の国際物流DX(デジタルトランスフォーメーション)には、特定の業者に縛られることなく、既存の業務フローに滑らかに溶け込むツールの活用が強く求められている。
「情報の断絶」という貿易実務の慢性疾患
貿易実務において、荷物が今どこにあり、誰が何を確認中なのかという状況が、担当者以外には見えないという課題は極めて根深い。船会社のサイトを個別に巡回して動静をチェックし、最新の書類を求めて過去のメールスレッドを遡る。こうした「確認作業のためだけの確認」が常態化しており、情報の非対称性が「言った言わない」のトラブルを招いてきた。
この課題に対し、市場にはすでに多くのソリューションが存在する。自ら物流を担うことでデジタル化を推し進める「デジタルフォワーダー」や、貿易プロセス全体を統制する重厚な「ERP型システム」などがその代表例だ。しかし、これらは「既存の物流ルートの切り替え」や「組織全体の大きな変革」という高いハードルを伴うことが少なくなかった。
「後工程」を麻痺させないための早期覚知
こうした背景のなか、MonCargo(モンカルゴ、東京都渋谷区)が打ち出した新機能「MonCargo Connect」は、既存の物流網や業務フローを根底から変えるのではなく、実務に即した「現場の使い勝手」を補完することで、この難題にアプローチしている。
従来、同社のサービスはコンテナ単位での動静管理が主軸であったが、今回の新機能追加により、その船積み情報にひもづく形で関係者間のチャットや書類管理を一元化できるようになった 。これにより、これまでツールごとに分断されていた「データ」と「対話」の統合を実現している。
MonCargo代表の五所絢奈氏によると、「実際に、船積みの取り扱い量が多い企業では、日本に入港する直前になって初めてトラッキングを確認するという運用になっていたケースもあった」という。「その場合、直前に遅延を知って慌てて対応せざるを得ず、後続のタスクが雪だるま式に膨れ上がってしまうという課題が発生していた」というから、情報共有の遅れは単なる手間の問題にとどまらず、事業そのものに深刻なダメージを与えるという象徴的な事例だ。
こうした事態を防ぐためには、遅延などの異変をいち早く察知し、後工程が煩雑にならないよう、あらかじめ余裕を持って準備しておく体制が不可欠となる。五所氏は自身の苦い経験を「とあるメーカーに勤務していた際に、セットで発売する予定の構成品がなかなか届かず、納期の遅れが発売直前になってようやく判明し、製品構成や広告画像の差し替えなど、多くの手戻りと調整が発生した経験がある」と振り返る。「もし1-2週間でも早く遅延に気づけていれば、社内外の調整にも余裕が生まれ、売上もより最大化できていたはずだ」
越境EC加速時代、物流の「余白」が競争力を決める
今後、越境EC(電子商取引)のさらなる進展が見込まれるなか、物流の可視化はもはや避けて通れない。特に、在庫補充を海上コンテナで行うBtoBtoCモデルにおいては、わずかな情報の遅れがECサイトでの「在庫切れ」に直結し、広告費の損失やランキング下落といった深刻なダメージをもたらす。
限られたリソースで急増する出荷や複雑な納品スケジュールに対応するためには、人間が「所在確認」や「書類の捜索」に費やす時間を物理的に削減し、戦略的な在庫配置や販促にリソースを集中させるべきである。効率化ツールを通じて業務に「余白」を作ることこそが、成長市場における生存戦略となるのだ。
港湾の混乱を前提とした「前後工程」の最適化
昨今の東京港におけるシステム障害や、深刻化する港湾での荷待ち時間の長期化は、もはや荷主やフォワーダーの努力だけではコントロールできない外部リスクとなっている。海上輸送という「不確実なフェーズ」で遅延が避けられない今だからこそ、その上流(発注・書類準備)と下流(国内配送・納品調整)の工程をいかに効率化しておくかが重要となる。
港での滞留が判明した際、即座に関係者と情報を共有し、ドレージ(陸上輸送)の手配や納品枠を再調整できる体制が不可欠である。物理的な輸送を制御できないからこそ、事務や共有といった「確実に行えるはずの工程」をデジタルで標準化し、情報の透明性を確保しておくことは、レジリエンスの高いサプライチェーンを構築する上で極めて現実的な解となるだろう。(土屋悟)
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