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原油急騰、燃料サーチャージ交渉の好機に

2026年3月4日 (水)

国際ホルムズ海峡の事実上の封鎖で原油価格が急騰している。ブレント原油先物は2月27日の1バレル73ドル台から、3月3日には一時87ドル超まで跳ね上がった。国内の軽油小売価格は2月中旬時点で全国平均1リットルあたり144.9円(資源エネルギー庁調べ)だが、原油高の波及で今後の上昇は避けられない。トラック運送事業者にとって、いま荷主との燃料サーチャージ交渉に動くかどうかが経営を左右する局面に入った。(編集長・赤澤裕介)

▲ホルムズ危機前後のコスト指標比較(クリックで拡大)

海上輸送のコスト急騰は、時間差で国内の燃料価格に波及する。原油の調達価格が上がれば、製油所からの軽油卸価格も連動して上昇する構造だ。

軽油1円上昇で業界全体160億円の負担増

トラック運送業にとって燃料費は運行コストの2-3割を占める。全日本トラック協会の試算では、軽油価格が1円上がるだけで業界全体に160億円のコスト増が発生する。ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、原油価格は100ドルを超える可能性も指摘されており、軽油価格が10-20円規模で上昇する事態もありうる。そうなれば業界全体で1600億-3200億円のコスト増だ。

国土交通省は2024年3月に「標準的な運賃」を改定し、運賃水準を8%引き上げた。燃料サーチャージの基準価格は1L当たり120円に設定され、5円刻みで改定する仕組みになっている。現在の軽油価格144.9円はすでに基準価格を24.9円上回っており、本来であれば相当額のサーチャージが収受されていなければおかしい。

▲軽油価格別・燃料サーチャージ負担の目安(大型車・300キロ運行の場合)※1運行あたり試算の前提:走行300キロ、燃費1リットルあたり4キロ、燃料消費75リットル。業界全体の年間負担増は軽油1円=160億円(全ト協試算)をもとに算出(クリックで拡大)

しかし現実は厳しい。国交省の最新調査によると、標準的な運賃の8割以上を収受できている事業者は全体の45%にとどまる。半数以上の事業者が適正水準を下回る運賃で走っているのが実態だ。燃料サーチャージに至っては、制度自体は08年のガイドライン策定から18年が経つにもかかわらず、とくに中小事業者での導入は進んでいない。荷主との力関係が壁になっている。

国交省は23年7月にトラックGメンを発足させ、荷主への監視を強化してきた。累計の「働きかけ」実績は1378件に達する。荷主が燃料値上がり分の転嫁を不当に拒む行為は、独占禁止法上の「買いたたき」に該当するおそれがあり、改正貨物自動車運送事業法に基づく要請・勧告・公表の対象にもなる。制度面の後ろ盾は以前より格段に整っている。

原油急騰は運送事業者にとって明らかなコスト増要因だが、見方を変えれば、荷主に値上げの必要性を理解してもらいやすいタイミングでもある。ホルムズ海峡の封鎖は連日ニュースで報じられており、荷主側も燃料費の上昇を認識している。「なぜ今、運賃を見直す必要があるのか」を説明するハードルは、平時よりずっと低い。

具体的に動くなら、まず自社の燃料消費量と現行契約の基準価格を確認し、現在の軽油価格との差額を数字で示すこと。標準的な運賃の燃料サーチャージ計算式(走行距離÷燃費×燃料価格上昇額)に当てはめれば、1台・1運行あたりの追加負担額は明確になる。上の表の試算例をそのまま荷主への説明資料に転用してもいい。交渉の根拠は制度としてすでに用意されている。

ホルムズ危機がいつ収束するかは見通せない。だが長期化すれば軽油価格の上昇はさらに進み、後から交渉に動いてもすでに損失が積み上がった後になる。今、動ける事業者から動くべきだ。

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