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米ターゲット、翌日配送を20都市圏に拡大

2026年3月6日 (金)

荷主米小売大手ターゲットは3日、今春から翌日配送サービスを新たに20の都市圏に展開すると発表した。現在の主要35市場に加え、50以上の都市圏で翌日配送が可能になり、米国人口の60%をカバーする。ターゲットは売上高で全米8位の小売企業で、全米に2000近い店舗を持つ。食品・日用品から衣料品・家庭用品まで幅広く扱う総合小売チェーンで、EC(電子商取引)と実店舗の融合に早くから取り組んできた。(編集長・赤澤裕介)

発表は2025年度第4四半期(25年11月-26年1月)決算と同日に開かれた投資家向け説明会で行われた。2月1日に就任したマイケル・フィデルケCEOにとって初の大型戦略発表で、複数年にわたる成長計画の柱としてサプライチェーン投資の強化を打ち出した。

翌日配送の新たな対象にはアラバマ州バーミンガム、カリフォルニア州サンタバーバラ、フロリダ州フォートマイヤーズ、ハワイ州ホノルル、オハイオ州シンシナティ、ユタ州ソルトレイクシティ、オレゴン州ポートランドなどが含まれる。

同社は26年に設備投資を10億ドル以上積み増して計50億ドル(7500億円)規模とする。これに加え営業面でも10億ドルの追加投資を行い、合計で20億ドル(3000億円)の増額となる。資金は30以上の新規出店や130以上の全面改装のほか、サプライチェーンやテクノロジーにも振り向ける。

「店舗=物流拠点」モデルを精緻化

翌日配送の拡大を支えるのが、同社が17年ごろから推進してきた「stores-as-hubs」と呼ばれる戦略の進化だ。これは全米に広がる店舗網を、来店客への販売拠点であると同時にEC注文の出荷拠点としても活用するモデルで、米国の消費者の4分の3がターゲット店舗から10マイル(16キロ)圏内に住んでいるという立地の強みを活かしている。アマゾンが巨大な専用物流センターを軸にした配送網を構築してきたのに対し、ターゲットは既存店舗を物流拠点に転換することで、追加のインフラ投資を抑えつつ配送速度を高める戦略をとってきた。

ただし、このモデルには課題も出てきた。小規模店舗にEC注文のピック(商品取り出し)・パック(梱包)業務が集中した結果、店頭の在庫切れが増え、来店客へのサービス品質が低下する問題が生じていた。店舗従業員がオンライン注文の処理に追われ、売り場の棚出しや接客に手が回らなくなるという、いわば「物流と小売の両立」のジレンマだ。

同社のグレッチェン・マッカーシーEVP兼チーフ・サプライチェーン・ロジスティクス・オフィサーによると、現在はこの反省を踏まえ、全店舗を一律に出荷拠点とする方式から、市場ごとに大型店舗・フルフィルメントセンター(FC)・ソーテーションセンター(仕分け施設)を最適に組み合わせるハイブリッド型へ移行を進めている。

シカゴ市場でのパイロットでは、EC出荷機能を6つの大型店舗に集約し、18店舗から出荷業務を移管した。同時にFCの処理量を引き上げ、配送速度の向上とコスト削減の両立を図っている。

同社は現在、全米11か所のソーテーションセンターを運用している。店舗でピック・パックされた商品はこれらの施設に集約され、郵便番号別に自動仕分けされたうえで、同社傘下のラストマイル配送サービス「シプト」(Shipt、17年に買収)のドライバーまたはサードパーティの配送業者に振り分けられる。複数商品を1回の配送にまとめられるため、配送効率の改善につながっている。同社は店舗起点のフルフィルメントコストがFC出荷と比べ最大40%低いとしてきたが、今回の見直しはその効率性を維持しつつ、店舗側の負荷を軽減する狙いがある。

翌日配送の利用条件は35ドル以上の注文で送料無料。有料会員サービス「ターゲット・サークル360」の会員も無料で利用できる。それ以外は5.99ドルの配送料がかかる。現時点で米国人口の80%以上が即日配送の対象圏内にあり、99%が2日以内の配送を受けられる体制にある。

▲配送ネットワークのサービスカバー率(クリックで拡大)

ターゲット・サークル360を通じた即日配送はQ4で前年比30%以上の伸びを記録し、会員収入は前年比で倍増以上となった。デジタル売上の3分の2は即日フルフィルメント(ドライブアップ、店舗受取、即日配送)で処理されており、即日サービスの売上高は年間140億ドル(2兆1000億円)に達する。配送網の拡充は単なるコストセンターの話ではなく、会員制サブスクリプションの収益化と連動した戦略投資として位置づけられている。

同社が同日発表した25年度Q4決算は、純売上高305億ドル(前年同期比1.5%減)、既存店売上高2.5%減と厳しい内容だった。通期でも売上高は1048億ドル(15兆7000億円)と前年比1.7%減少し、4四半期連続で来店客数が減少している。ウォルマートやコストコ、TJXといった競合が堅調に推移する中、衣料品や家庭用品などの裁量消費分野で苦戦した。ただしデジタル売上は1.9%増と堅調で、非物販収入(広告、会員、マーケットプレイスなど)はQ4で25%以上成長した。26年度は売上高2%成長、調整後1株当たり利益で7.50-8.50ドルのレンジを見込んでいる。

米国ではアマゾン、ウォルマートを筆頭にラストマイルの配送スピード競争が激しさを増している。アマゾンは自社物流網「アマゾン・ロジスティクス」で米国内小包配送の最大手に迫る規模にまで成長し、ウォルマートも4700の店舗網を分散型の配送拠点として活用するほか、他社にも配送機能を提供する「GoLocal」事業を展開している。ラストマイル配送市場は25年時点で2010億ドル(30兆円)規模とされ、年率12%の成長が見込まれている。ターゲットが店舗網を活かしたハイブリッドモデルで、巨大な競合2社にどこまで対抗できるかが注目される。

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