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第4回:脱エクセル・脱個人商店、関税計算書システムで申告業務をチームの資産に

デジタル化の真価を問う「計算・チェック」の標準化

2026年3月31日 (火)

話題第2回、第3回を通じて、データ化と税番判定の効率化を見てきた。しかし、データ化に成功しても、その後のプロセスが「個々人のエクセル」や、複雑な運賃按分計算のブラックボックスに依存したままであれば、組織としてのガバナンスは脆弱なままだ。情報の「見える化」が進まない限り、急な担当者の欠勤が業務の停滞に直結する。

本稿では、申告業務を個人のスキルからチームの資産へと変革する「関税計算書システム」の価値を紐解く。

クラウドによる一元管理がもたらす「TO-BE」の姿

NECの関税計算書システムは、通関業務に必要な情報をクラウド上で管理し、可視化を実現するプラットフォームである。

▲NECロジスティクスソリューション統括部ロジスティクス事業開発担当主任の石渡竜也氏

石渡竜也主任は語る。「エクセルや電卓を用いた手作業の計算は、誤申告のリスクを常に孕んでいる。本システムでは、共通のデータベースに情報を集約し、共通のロジックで自動計算を行うことで、誰でも正確かつ迅速に業務を遂行できる環境を整えた」

具体的には、従価税・従量税、酒税、石油税などへの対応に加え、保険料や運賃の自動按分機能を搭載。さらに、インボイスとパッキングリスト(PL)の各明細における重量(Gross Weight)情報の紐付けを自動化する特許出願中の機能も備えている。

▲NECの物流ソリューションにおけるデータと業務の流れ(出所:NEC)

現場と共同開発した「通関士目線」の操作性

ITツールの導入を阻むのは、往々にして「現場の使い勝手の悪さ」である。これに対し、NECは実務者と共同開発するアプローチをとった。

▲NECロジスティクスソリューション統括部ロジスティクス事業開発担当の永瀬祥夏氏

永瀬祥夏氏は、「例えば、申告書作成における縦計・横計の計算不整合チェック機能などは、現場の切実な悩みから生まれたもの」と振り返る。視認性の高いUI設計により、経験の浅い社員でも迷うことなく操作でき、ベテランに頼り切りだった業務の平準化が可能となる。

生産性向上:日本通運様の導入事例

NIPPON EXPRESSグループの日本通運では、本システムの導入により作業時間が体感値で3割削減されたという。画面の見やすさと操作性の高さにより、書類作成者の負担が大幅に軽減されただけでなく、属人性の排除が同時に達成された。

▲通関業務の現状(AS-IS)と、理想の業務の姿(TO-BE)(出所:NEC)

実際の運用はシンプルだ。マスター登録した情報を基に、AI-OCRのデータを取り込み、自動計算を実行。最終的にNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)へ取り込み可能な形式でファイルをダウンロードするだけである。出力後の再加工が不要なため、ワンストップのフローが完成する。

物流が企業の成長を牽引する未来へ

AI-OCRによる「入り口のデジタル化」、AI税番判定による「判断の迅速化」、そして関税計算書システムによる「プロセスの標準化」。これらを組み合わせることで、通関業務は「個人の職人技」から、組織の強みとなる「デジタル資産」へと進化を遂げる。

現場の泥臭い苦労を知り尽くしている石渡氏は、改めてこう結ぶ。「既存のやり方を変えることは、多方面からの反発もあり、少なからず痛みも伴う。それを理解した上でチャレンジできる会社が次のステージに進むのではないか」

激動の時代、通関、税番を「現場の事務」「輸出入に必要なモノ」に留め置くか、「経営戦略の武器」に変えるか。その答えは、デジタルによる変革の決断にかかっている。