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CLOコンパス発表、統括管理者を実装支援

2026年3月18日 (水)

サービス・商品アイディオット(東京都渋谷区)は18日、物流統括管理者の選任義務化に対応するクラウドツール「CLO COMPASS」(CLOコンパス)を発表し、同日提供を開始した。トラックの積載率、荷役等時間、荷待ち時間の3指標を画面上で見える化し、所管省庁への定期報告書を自動で作れる。都内で開いた発表会には日清食品常務取締役の深井雅裕氏、PALTAC専務執行役員の三木田雅和氏、ヤマト運輸副社長の恵谷洋氏が登壇し、制度対応の課題を語った。(編集長・赤澤裕介)

▲CLOコンパスの概要と位置づけ(クリックで拡大)

「確定申告ソフト」と同じ発想

CLOコンパスとは何か。井上智喜社長は「確定申告の会計ソフトと同じだ」とたとえた。確定申告は年に一度だが手間がかかる。帳票データをためておけば、ボタン一つで申告書類ができる。CLOコンパスも同じで、毎月の物流データを登録していけば、法令が求める定期報告書を自動で出力できる。

▲アイディオットの井上智喜社長

では何のデータを見るのか。改正物流効率化法が企業に求めているのは、大きく3つの数字の改善だ。

1つ目は積載率。10トン積めるトラックに6トンしか載せていなければ60%。この数字をどこまで上げられるか。2つ目は荷役等時間。倉庫での荷物の積み降ろしにかかる時間だ。3つ目は荷待ち時間。トラックが倉庫に着いてから作業が始まるまでの待ち時間で、ドライバーの拘束時間に直結する。

▲CLO制度で求められる3指標の意味(クリックで拡大)

改正物流効率化法では、これらの指標について一律の数値目標の達成を義務付けてはいない。企業ごとの状況に応じた改善計画の策定と実行が求められている点が特徴だ。未対応時の罰則は以下の通りとなる。

▲改正物流効率化法の義務と罰則整理(クリックで拡大)

CLOコンパスはこの3つの数字を、月ごとの推移、10分刻みの分布、拠点ごとの比較、曜日ごとのヒートマップで画面に表示する。平均値だけでなく分布まで見せるのは理由がある。全社平均では問題なく見えても、実は満載のトラックと空荷に近いトラックに二極化していたり、火曜日だけ荷役等時間が跳ね上がる拠点があったりする。そうした問題の所在を特定するためだ。

ただし、井上氏は「行政への報告書を作るだけのツールではない」と強調した。CLOコンパスの内部では、3つの数字の改善が経営にどう効くかを計算している。積載率が上がればコストが下がり損益が改善する。在庫が圧縮されれば資産効率が上がる。リードタイムが短くなればキャッシュの回りが良くなる。「国への報告義務だけでは終わらず、会社の財務に直接影響を与えるツールとして作った」と語った。

CLOコンパスの土台になっているのは、同社が開発してきた物流デジタルツイン「ADT」だ。デジタルツインとは、現実の物流ネットワークをデジタル空間上に再現し、さまざまな条件でシミュレーションする技術をいう。ADTは内閣府が主導する国家重点プロジェクトSIP「スマート物流サービス」の実証実験で全6件中3件に採択された技術から生まれ、物流企業や荷主企業に数十社で導入されている。国交省の物流情報標準ガイドラインに準拠しており、関連技術で特許を1件取得済み、7件を出願中だ。

データの取り込みは、エクセルやCSVファイルのアップロードのほか、既存の業務システムとの常時連携にも対応する。ただしデータの整備には3か月から半年かかるケースもあり、同社のコンサルタントが伴走する支援メニューも用意した。販売目標は3年で対象企業の10%にあたる400社程度の導入を掲げる。

発表会の後半では、3社の実務者がディスカッションに登壇した。改正物流効率化法で物流統括管理者の選任が義務づけられる特定荷主は3200〜3600社。特定自動車運送事業者や倉庫事業者を含めると、法への対応が求められる企業は4000-4500社に上る。登壇3社はいずれもこの法律への対応が問われる立場にある。

▲日清食品常務取締役の深井雅裕氏

日清食品の深井氏は、6年にわたりサプライチェーンの見える化に取り組んできた。「積載率を上げる、荷待ち時間を減らすといったことは1社では全くできない。共同配送が前提になるし、その出発点はデータの見える化だ」と述べた。

深井氏が最も力を込めたのは社内の壁の話だ。日清食品では資材の調達は資材部、生産は生産部、販売物流は営業部が担当し、それぞれが独自の目標とシステムで動いてきた。「これまではそれでも収益が上がってきた。だが横串を通して同じ数字で見せていくのが一番の難所だった」と振り返った。

この壁を壊すために深井氏がとった手段は2つある。1つは、方針を決める戦略部門と、現場で実行する戦術部門を明確に分けたこと。もう一つは「たすき掛け人事」だ。たとえば資材部のナンバー2を戦略部門に送り込み、逆に戦略部門のメンバーを資材部に兼務で配置する。生産部門でも同じことをした。こうすると各部門の人間が他部門の仕事を肌で理解し、全体の視点で考えるようになる。「組織を変えて評価制度を変えないと人は動かない。物流をやったことがなかったからこそ行き着いた発想かもしれない」と語った。

▲PALTAC専務執行役員の三木田雅和氏

PALTACの三木田氏は、今回の義務化をサプライチェーン全体の効率化を進める「大きなチャンス」と位置づけた。同社は日用品や化粧品の卸売業で、メーカーから商品を受け取り、小売店に届ける。2024年には入荷の受付や検品を自動化するシステムを導入し、ドライバーが荷物を置いたらすぐ帰れる運用を実現した。

ただし課題は残る。「物流波動の平準化が一番大きい」と三木田氏は言う。特定の時間帯に入出荷が集中する限り、センターの効率は上がらない。集中を分散させるには商習慣やリードタイムの見直しが必要だが、これは物流部門だけでは決められない。全社、さらには業界全体での合意が要る。

質疑では三木田氏に、社内で最も大変だったことは何かと問う質問が出た。三木田氏は「営業との関係だ」と即答した。営業が案件を取ってくると物流センターの処理能力を超えてしまう。かといって止めれば売り上げが落ちる。「営業と物流でどうウィンウィンの関係を築くかが一番の課題だ」と述べた。

▲ヤマト運輸副社長の恵谷洋氏

ヤマト運輸の恵谷氏は、物流事業者として荷主を支援する立場から発言した。「物流統括管理者が経営層に置かれる以上、物流企業も経営目線でのロジスティクスを提案できなければならない」と語った。これまでの物流管理は運賃がいくらかという単価の話が中心だった。これからは、在庫を持つコスト、サプライチェーンの上流に隠れている物流コスト、温室効果ガスの削減まで含めた全体のコストを見る必要があるという。

3社に共通していたのは「見える化が出発点」という認識だ。深井氏は購買データと製品レシピを組み合わせて調達物流を見える化した経験を語り、「データを見るといろんなことが起きてくる。資材が日本中を走っているのが見えて、この工場のそばに御社の生産拠点がありませんかという話になる」と話した。恵谷氏も「見える化ができて初めて次のステップに行ける」と同調した。

発表会の質疑では、物流ジャーナリストの菊田一郎氏から用語の整理について指摘があった。改正物流効率化法で設置が義務付けられたのは「物流統括管理者」であり、CLO(Chief Logistics Officer)はサプライチェーン全体の最適化や社会課題対応まで含むより広い概念だという趣旨だ。法の解説文には、物流統括管理者は法令の義務を果たすだけでなくCLOとしての役割も期待されるとの記述がある。アイディオットの井上氏はこの指摘に対し「CLOを設置する方向で考えている」と応じ、法定義務にとどまらない支援を目指す姿勢を示した。

改正物流効率化法は段階的に施行されており、2026年4月1日からは特定荷主・特定連鎖化事業者を対象に物流統括管理者の選任や中長期計画、定期報告への対応が本格化する。中長期計画の初回提出期限は10月末とされている。対象企業の半数が自社の該当を認識していないとの調査もある中、残された時間は短い。深井氏は最後にこう語った。「法制化されて何か提出しなきゃいけない、データがない、と暗くなりがちだ。でも、いかにこの変革を面白がれるか。ゼロサムゲームからプラスサムに変えていく。取引先からパートナーへ。そこが問われている」

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