
話題改正物流効率化法が4月1日に全面施行され、年間取扱貨物重量9万トン以上の荷主企業に物流統括管理者(CLO)の選任が義務化された。届出期限は5月末。選任しなければ100万円以下の罰金が科される。CLOは役員など経営幹部から選ぶ必要があり、物流の課題は経営層の業務になった。
だが制度に先立ち、食品物流の現場はすでに動き始めていた。離島では民間企業がインフラの代替を担い、農産物の産地では段ボール箱の規格をめぐる利害調整が続く。都市部ではコンビニチェーンが自ら配送設計を見直し始めた。温度管理、賞味期限、多頻度小口配送、廃棄リスクという食品特有の制約が、負担の分担を曖昧にしたまま運用することを許してきた。従来の分担では回らなくなった。いずれの現場でも、「誰がコストを負い、誰が責任を持つのか」が問い直されている。(編集長・赤澤裕介)
現場が抱えきれない負担
北海道・奥尻島で、ヤマト運輸は旅客と貨物を同時に運ぶ「しまねこワゴン」を走らせている。フェリー到着が午後になる離島の事情を踏まえ、午前の空き時間に島民の移動と荷物の配送を兼ねる仕組みだ。移動販売車は冷蔵・冷凍設備を備え、高齢者の玄関先まで生鮮食品を届ける。採算を伴う形でインフラの役割を引き受ける経営判断であり、離島に限った話ではない。
農産物の現場では、パレットに載せたまま輸送する「一貫パレチゼーション」が以前から求められているが、現場では進んでいない。新潟のチューリップ産地で統一規格の段ボール導入を試みたところ、箱の強度や組み立てのしやすさが損なわれるとして農家から反発が上がった。宮崎のキュウリ物流では、パレット化で積載量が3割減り、関東市場での価格競争力を失うとして移行が進まない。佐渡の柿では船会社が荷下ろしを突然拒否し、市場側が急きょ人員を手配する事態が起きている。標準化の議論に見えて、その実態は「荷役は誰がやるのか」「コスト負担は誰が引き受けるのか」という問いそのものだ。

JA熊本市のミカンは箱の規格を4キロと8キロに統一し、パレタイザー(パレットへの自動積み付け機)の導入で荷役時間を大幅に短縮した。ただし流通経済研究所の吉間めぐみ氏は、これが出荷量の多い大産地だからこそ可能だったと指摘する。1月施行の取引適正化に向けた法改正では運賃や作業条件の書面明示が義務となった。荷役や運賃の分担を曖昧にしたままの取引は、法的にも通らなくなっている。
冷蔵倉庫には余力がない。大都市圏では保管スペースの使用率が9割から満庫に近い状態が常態化しており、脱フロン対応と老朽化による建て替えが同時に必要になっている。東北をはじめ各地で冷凍冷蔵対応の新規施設整備が進み、国も中継共同物流拠点に補助金を拡充して後押ししている。どこに、どの規模の保管拠点を確保するかは、荷主、物流事業者、施設事業者の複数の当事者にまたがる判断になっている。
配送の最終段階でも、荷主側の関与が強まっている。ローソンは配送頻度を見直して2便化(1日2回配送への切り替え)に踏み切り、AI配車システムを使ったデータに基づく配送設計を進めている。都市部のラストマイルでは、自社以外の荷物もまとめて1台で運ぶ他社荷物の混載の実装も始まった。いずれも、配送の設計を運送会社ではなく荷主側が主導している。
こうした現場の変化と並行して、2025年から26年にかけて複数の法改正と政策が施行された。

共通しているのは、現場が負ってきた負担に対して、経営層の関与を義務づけている点だ。
食品業界ではCLOの選任義務への対応が難しい。荷待ち・荷役時間は全産業の中でも長く、手積み手降ろしが常態化しているため、改正法が掲げる「1運行の荷待ち・荷役2時間以内」の目標と現場の実態には大きな差がある。納品条件の見直しも進んでいる。納品期限を緩和して1/2ルールに移行した事業者は377社に達し、大手小売チェーンではほぼ完了した。
帝国データバンクの集計では食品値上げ要因の80.9%が物流費に起因し、集計開始以来で初めて8割を超えた。NX総合研究所は30年度のトラック輸送能力が34.1%不足すると試算しており、農産・水産品の出荷団体が最も大きな影響を受ける。
制度は4月に出揃った。現場はその前から動いている。



































