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ESR、物流・データセンター両輪に日本投資強化

2026年5月12日 (火)

拠点・施設物流不動産大手のESR(シンガポール)は、日本市場をグローバル戦略における最重要拠点と位置づけ、物流施設とデータセンター(DC)を軸とした投資を拡大する。

共同創設者兼共同CEOのスチュアート・ギブソン氏と、同社のフィリップ・ピアース社長が、川崎市の「ESR東扇島ディストリビューションセンター」で今後の展望を語った。

▲共同創設者兼共同CEOのスチュアート・ギブソン氏

同社はAI(人工知能)普及に伴うDC需要の爆発的増加を背景に、物流施設開発で培った知見をデジタルインフラへ応用し、独自のプラットフォーム構築を急ぐ。日本市場は、低金利環境の継続とEC(電子商取引)浸透率の拡大余地から、極めて高い魅力を備えている。ギブソン氏は「日本の近代的な物流施設への需要は主要都市圏で非常に高く、空室率は低水準だ」と指摘した。

日本の経済基盤は極めて安定しており、長期的な視点での投資において高い持続性を備えている。地政学的なリスクの低さや法整備の透明性は、世界の機関投資家から厚い信頼を得る要因となっている。

土地の制約が厳しい日本において、同社は老朽化した施設を最新鋭のインフラへ置き換える再開発を重視する。既存の建物を高度な機能を持つ施設へと更新し、荷主の拠点集約による効率化を促すことで、さらなる成長を目指す方針だ。

▲ESRのフィリップ・ピアース社長

同社は物流施設開発のノウハウを武器に、DC事業を新たな成長の柱へ育てる。AIの普及やクラウドコンピューティングの拡大により、電力容量を確保した大規模DCの需要が急増しているためだ。

東扇島のような戦略的拠点において、物流とDCのハイブリッド展開を進める狙いは、土地活用の最大化とデジタルインフラの基盤確立にある。

ギブソン氏は物流とDCのシナジーについて、スマートフォンの注文がDCに届き、そこから倉庫へ指示が飛ぶ一連の流れを例に挙げた。
「データセンターなしに倉庫は存在できず、その逆もまた真だ」と強調し、両者が密接不可分なインフラであるとの認識を示した。一方で、1500人以上の従業員が働く物流施設に対し、DCは20人程度の少人数で運用する。この物理的な特性の違いを理解した上で、同社は戦略的な立地選定を継続する。

深刻な労働力不足や2024年問題は、荷主企業にとって引き続き課題だ。これに対し、同社はハード・ソフトの両面から自動化・省人化の支援を加速させる。最新施設では、ロボット走行に適した床荷重や電力容量、高度なマテリアルハンドリングシステムの導入を前提とした設計を標準化した。

また、労働者の定着率向上のため、託児所やラウンジ、フィットネス施設を備えた「ヒューマンセントリック」(人間中心)な設計に注力する。

ギブソン氏は「グレーのコンクリートだけの場所ではなく、人々が働きたいと思える場所を作りたい。人間を大切にすれば、同時に楽しさも提供できる」と語った。この姿勢は、単なるスペース提供を超えた、同社の強力な差別化ポイントとなっている。

同社はこうした思想に基づき、地域特性に合わせた開発を加速させている。例えば、世界情勢の不透明感に伴う国内回帰の動きを受け、強靭な物流拠点への需要が高まる中、福岡エリアでは若い人口動向とハイテク産業の集積に着目した。

都市部における再開発だけでなく、成長性の高い地方都市においても、物流不動産とDCの2本柱に再生可能エネルギーを組み合わせた持続可能な開発を推進していく。

▲ESRの大阪データセンター(出典:ESR)

ピアース社長は、建設コストの上昇や供給過剰への懸念に対し、「供給が絞られることで需給バランスが改善し、賃料上昇が見込める。既存ポートフォリオはこの賃料成長から大きな恵みを受ける」との見通しを述べた。

またギブソン氏は、独自のコスト管理術も明かし、取材会場となった施設の構造部材の多くを海外で製造し、現場で組み立てるなど、効率的な開発手法を強調した。

「伝統的なやり方では通用しない。創造的である必要がある」と述べ、最先端のインフラ提供を通じて、長期的に安定したリターンを生み出す日本の物流市場の魅力に改めて強い期待を寄せた。

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