国際フィリピン政府は30日、日本から軽油14万2000バレルを調達したと発表した。26日にルソン島に到着済みで、国家エネルギー非常事態宣言下の有償スポット購入だ。赤澤亮正経済産業相は同日の会見で「民間企業の取引に係ることであり詳細についてはコメントを差し控える」としたうえで「東南アジア諸国には我が国産業のサプライチェーンが存在している。その維持の観点からも各国における燃料供給が確保されることは重要だ」との認識を示した。国内の安定供給を最優先にしつつ各国と緊密に意思疎通を図る考えだ。(編集長・赤澤裕介)
今回は政府備蓄の直接譲渡ではなく、石油事業者を通じた商業取引だ。14万2000バレルは日本の国内1日消費量の0.3日分にあたる。国全体の総量としては小さいが、用途を輸送に限れば大型トラック20万台超の1日分の稼働を支える量になる。フィリピン側にとっては非常事態宣言後に確保した最初の到着実績だ。
フィリピンには日系企業が1400社以上進出している。ルソン島南部のラグナ州、カビテ州、バタンガス州に電子部品や自動車部品の組立工場が集中し、完成品や中間財を日本に送り返す拠点になっている。現地で軽油の調達が滞れば、工場と港湾を結ぶトラック輸送が制約を受け、日本の組立ラインへの部品供給が遅れる。
フィリピン政府はマレーシア、シンガポール、インド、オマーンからも調達のめどが立ったとし、4月末までに計100万バレル規模に達する見込みだと説明した。200億ペソ(3億3300万ドル)の緊急基金を発動し、エネルギー省と国営石油会社PNOCに緊急調達権限を付与している。ロシア産原油の輸入も再開した。非常事態宣言から6日で日本を含む複数国からの調達枠組みを形にした。200億ペソの資金と調達権限をPNOCに集中させ、即時調達に動いた。
国内では中国地方を中心に軽油の納入遅れや数量制限が出始めている。備蓄放出の原油が末端に届くのは4月中旬以降になる見通しだ。
越は要請段階、製油所に期限
ベトナムは調達の初動でフィリピンと差がついている。商工省副大臣が3月16日に東京で日本と韓国に原油供給源の拡大支援を要請し、首相がモスクワでロシアの石油企業に長期供給を求めた。ただし30日時点で具体的な供給の発表はない。フィリピンが資金と権限を集中させて即時調達に動いたのに対し、ベトナムは外交要請と価格対策が先行し、供給量の確保には至っていない。
国内では首相が3月26日、ガソリン、軽油、ジェット燃料への環境保護税と特別消費税を4月15日まで停止する決定に署名した。ガソリン価格は前日比で19%下がったものの、2月末比では21%高い。輸入関税も一部ゼロに引き下げた。
製油所の原油在庫には期限がある。出光興産が主導するニソン製油所(タインホア省、日量20万バレル)は代替原油を確保し5月末まで操業できると発表したが、調達先は明かしていない。もう1か所のズンクアット製油所(日量15万バレル)を含め、6月以降の見通しは立っていない。首相は100万トン規模の戦略備蓄の緊急建設を指示した。
航空燃料はベトナムの輸送機能に直接響いている。国内航空燃料の7〜8割は中国、タイ、シンガポールからの輸入だが、中国とタイが輸出を停止した。ベトナム航空は4月1日から国内7路線で週23便を運休する。ベトナムに生産拠点を持つ日系企業にとっては、部品や製品の航空輸送にも制約が生じうる局面だ。
赤澤経産相はG7やIEA(国際エネルギー機関)との連携にも言及し、事態の長期化に備えて追加の協調放出を含む対応を機動的に講じる準備が必要だと述べた。同様の燃料調達の要請はベトナムをはじめ他の東南アジア諸国からも上がっている。備蓄放出の原油が末端に届き始める4月中旬以降の国内需給が、次の判断材料になる。
◆ この記事をより深く理解するために ◆
・大統領令第110号の詳細と日系1400社超への影響経路を整理した。今回の軽油調達はこの非常事態下での第1弾にあたる。
「フィリピン非常事態、日系供給網に波及も」(3月25日)
・備蓄放出の原油が末端に届くまでのタイムラグを報じた。4月中旬以降という時間軸が、対外協力の余力を左右する。
「国家備蓄原油、きょう放出開始」(3月26日)
・ベトナムの輸入関税ゼロ措置やフィリピンの週4日勤務を含む各国の規制を地域別に一覧した。
「世界各国で燃料購入制限の連鎖拡大」(3月26日)
・国内産業への波及が21中分類に及ぶ現状を整理した。国内需給とアジア協力のバランスの背景がわかる。
「備蓄放出でも届かないナフサ、21中分類に連鎖」(3月27日)
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