ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

商船三井、税務調査で所得移転指摘、追徴53億円の見込み、異議申立てへ

2010年6月17日 (木)

ロジスティクス商船三井は17日、東京国税局から移転税制に関する税務調査を受け、2002年度から08年度までの米国コンテナ・ターミナル子会社とのコンテナ荷役取引について「6月下旬に法人税の更正処分受ける見込み」になったと発表した。追徴税額は法人税・住民税・事業税合わせて53億円に上る見込み。

 

税務調査により、商船三井が子会社に支払ったコンテナ荷役料金の単価が「市場価格(税法上の独立企業間価格)と比べて過大」として子会社への所得移転があったと認定され、この件についての更正所得金額は約63億円を指摘された。

 

また、アライアンス契約に基くコンテナ・ターミナル相互利用契約を実施した対価として、子会社に支払った費用が「寄付金に該当する」と認定を受け、この件の更正所得金額は約42億円を認定された。

 

これを受けて商船三井では「これまで日本、米国の税制に従い適切な納税を行ってきたと認識しており、今回の東京国税局による指摘は到底納得のいくものではない。正式に更正処分を受けた段階で、速やかに当局に対し更正処分の全部取り消しを求めて異議申し立てを行うと同時に、二重課税を解消するために日米税務当局間の相互協議の申し立てを行う」との声明を発表。これに伴い、7月28日に公表する第1四半期決算で約30億円の法人税などを見積り計上する。今期業績予想の修正はしない。

 

■商船三井が公表した「対象となる取引の概要」と見解の相違点は次の通り。(商船三井の説明全文を掲載

 

(アライアンス協定)
商船三井のコンテナ船事業におけるアジア⇔北米西岸航路は、提携船社(A船社)とのアライアンス協定(異なる会社のコンテナ船のスペースとコンテナ・ターミナルを相互に利用する契約)を結んでいる。寄港頻度を増やし、サービスを充実させることがアライアンスの目的。

 

(ロサンゼルス港のターミナル相互利用)
コンテナ船事業においては、港湾地区に大規模な荷役設備を有するコンテナ・ターミナルが必要。米国西岸のロサンゼルス港では、商船三井とA船社がそれぞれの子会社を通じて自営ターミナルを運営し、相互に利用している。すなわち、商船三井コンテナ船に積まれたA船社のコンテナは商船三井のコンテナとともに商船三井子会社のターミナルで荷役され、A船社のコンテナ船に積まれた商船三井のコンテナはA船社のコンテナとともにA船社のターミナルで荷役される。

 

(ターミナル荷役料金の取決め方法)
商船三井子会社とA船社のターミナル子会社はそれぞれ独立した企業なので、もともとターミナル荷役料金には差がある。しかし上述の通り、商船三井とA船社とはターミナルの相互利用を決めており、相手のターミナルを使用することによる利益・不利益が生じないような荷役料金の設定が必要となる。

 

コンテナ取引のコスト概念図通常のコンテナ荷役料金の取り決めにおいては、ターミナル借受料、港湾作業員労務費、一般管理費等の間接費、などターミナルで発生する全てのコストを考慮して決定される。しかし商船三井とA船社とはターミナル借受料、港湾作業員労務費のみを対象コストとして「二社間の共通料金」を設定し、相手船社のターミナルに支払うこととした。この「共通料金」では一般管理費等の間接費をターミナル子会社が回収できないので、それぞれのターミナル子会社の親会社である各船社が負担することにしている。

 

□一部コストを対象とする「共通料金」を取り決めた理由
商船三井とA船社のそれぞれのターミナルで扱われるコンテナ数量が必ずしも等量交換となるとは限らないため、「共通料金」の算定対象コストをパススルーのコスト要素である港湾作業員労務費、ターミナル借受料に限定したもの。この結果、両ターミナル子会社におけるコンテナ取り扱い数量の不均衡に起因するコンテナ荷役料金の調整が不要となる。

 

商船三井子会社で荷役された商船三井のコンテナについて、商船三井は商船三井子会社に「荷役料金」を、A船社のコンテナについては、A船社が前述の「共通料金」を支払う。

 

A船社のターミナルで荷役された商船三井コンテナについて、商船三井は商船三井子会社に「荷役料金」を支払い、商船三井子会社はA船社のターミナル子会社に「共通料金」を支払う。

 

□商船三井子会社の荷役料金と「共通料金」に対する見解の相違

 

<事実関係>
「共通料金」は、アライアンス協定を結んだ商船三井とA船社の間で適用される特殊な荷役料金。通常のコンテナ荷役料金の取り決めでは「共通料金」の対象コストに加えて、一般管理費等の間接費がコストとして当然に加算されるため。

 

<東京国税局の見解>
「共通料金」を市場価格(税法上の独立企業間価格)とみなし、商船三井が商船三井子会社に支払う「荷役料金」が当該市場価格と比較して過大で、「共通料金」との差額が日本の法人である商船三井から子会社に移転した所得であると認定している。

 

<商船三井見解>
商船三井とA船社が相互のターミナル子会社におけるコンテナ荷役料の精算の便宜のために設定した「共通料金」を市場価格(独立企業間価格)とみなす東京国税局の見解には事実の誤認がある。商船三井は、同じロサンゼルス港での他の取引例を調査するなどして、商船三井子会社に支払った「荷役料金」が市場価格の実勢に照らして妥当な水準であると主張している。

 

□商船三井子会社を介してのA船社ターミナル料金の支払いに対する見解の相違

 

<事実関係>
商船三井は、A船社ターミナル子会社で荷役された商船三井コンテナにつき、商船三井と子会社が取り決めた「荷役料金」を商船三井子会社に支払い、商船三井子会社はA船社ターミナルに「共通料金」を支払う。

 

また、A船社は商船三井ターミナル子会社で荷役されるA船社コンテナにつき、「共通料金」を支払います。従って、A船社からの収入では、商船三井子会社は「一般管理費等の間接費」を回収できていない。

 

<東京国税局の見解>
商船三井が子会社に支払った「荷役料金」のうち「共通料金」との差額に対して、商船三井子会社による役務提供の事実が無いので、商船三井子会社に対する寄付金と認定している。

 

<商船三井見解>
商船三井コンテナが同じロサンゼルス港で荷役されながら利用するターミナルによって荷役料金が異なる煩雑さを回避し、一元的な損益管理を行うため、商船三井からA船社ターミナル運営会社への荷役料金を商船三井子会社経由で支払っている。

 

また、商船三井子会社はA船社からの収入では、「一般管理費等の間接費」が回収できないので、未回収額を勘案した「荷役料金」を商船三井が支払う必要がある。

 

「商船三井は日本、米国の税制に従い適切なコンテナ荷役料金設定をしており、当局が指摘するような所得移転の事実や米国子会社に寄付を行う意図、動機は全くない。従い、今回の東京国税局による指摘は到底納得のいくものではなく、前述の異議申し立てを行う」