フードUber Japan(ウーバージャパン、東京都港区)は1日、即時宅配便「Courier」(クーリエ)の提供エリアを従来の22都道府県から47都道府県に拡大し、自転車、バイクに加えて軽バンによる配送を全国で開始した。1注文合計135kgまで、発送地点から半径25km圏内の荷物を事前確定の従量料金で即時に運ぶサービスとなり、アプリ型プラットフォームが軽貨物スポット配送市場に踏み込む構図が鮮明になった。バイク便や地場の軽貨物事業者が電話と相対の見積もりで担ってきた緊急配送の需給を、アプリ上のマッチングに置き換える試みとなる。(編集長・赤澤裕介)
クーリエは、配送拠点を経由せずに送り主から受取人へ1対1で直送するサービスで、配送伝票が不要でアプリ上の入力だけで手配が完結し、送り主と受取人の双方が荷物の位置をリアルタイムに追跡できる。自転車、バイクが担う小型サイズは最大45cm×45cm×30cm、重量12kgまでと開始時の8kgから引き上げ、料金は最初の1kmを含む890円に1kmごとに100円を加算する。新設した軽バンの中型サイズは、幅73cm×奥行き124cm×高さ110cmまでの荷物を1点23kg、1注文合計135kgまで運び、料金は最初の1kmを含む1090円に1kmごとに100円を加算する。対応距離は発送地点から直線距離で半径25km圏内と従来の最大13kmから伸ばし、同社によると東京駅を起点とした場合、東京23区全域に調布、川口、川崎、浦安を含む圏域に相当する。
配達はUber Eats(ウーバーイーツ)の配達ネットワークを活用する。ただし、軽バン配送は自転車配達とは制度上の位置付けが異なる。軽自動車で報酬を得て運送するには貨物軽自動車運送事業の届出と事業用ナンバーの取得が必要で、軽バン配送は届出を済ませた軽貨物事業者が担う形となる。全国翌日配送を前提に拠点網を築いてきたヤマト運輸や佐川急便の宅配便とは事業領域が異なり、影響が及ぶのはバイク便、赤帽をはじめとする軽貨物の個人事業者、地場の緊急便・チャーター便で、用途で見れば書類やサンプルの緊急送付、アパレルなど小売の店舗間在庫移動、修理部品の即時手配、EC・店舗の当日配送の自社手配代替までが対象に含まれる。
同社が2024年11月から26年6月の利用データと利用者調査をまとめたところ、利用目的は個人利用が6割、書類や商品発送などのビジネス利用が4割を占め、配送品目は服・ファッション雑貨が14%で最も多かった。国内ではエニキャリ(東京都千代田区)が2月にUber Eatsと協業した法人向け即配サービスを開始し、米国でもウーバー・テクノロジーズが4月に非食品小売のエース・ハードウエアと組んで全米3700店超で工具などの即時配送を始めており、ギグ配達網の貨物輸送転用は国内外で並行して進んでいる。全国展開に合わせ、同社は7月31日まで初回利用者の配送1回無料(最大5000円オフ)、既存利用者の1回50%オフ(最大2500円オフ)のキャンペーンを実施する。
積載効率より時間価値、共同配送と対極の設計
クーリエは物流会社が運営する共同配送とは異なり、配送拠点を経由しない1件ごとのダイレクト配送を採用する。1台1荷主の輸送のため積載効率は共同配送に及ばない一方、緊急配送や店舗間の在庫移動など、積載効率よりも配送時間の短さを優先する用途に向けた輸送となる。改正物流効率化法のもとで荷主と物流事業者に共同配送や積載率向上が求められる流れとは対極に位置するが、両者は競合するだけでなく、計画輸送は共同配送で、突発需要はオンデマンド即配でという使い分けが成り立てば補完関係にもなり得る。荷主にとっては、緊急配送を電話で探して相対で価格を決める調達から、アプリで定価の配送を買う調達への置き換えを迫る動きだ。
価格面では、料金表を単純に当てはめれば軽バンによる10kmの配送は1990円、20kmで2990円という計算になる。既存の緊急便・チャーター便は距離や時間に応じた個別見積もりが中心で、料金の基準となる距離の取り方、待機や積み下ろしの条件、キャンセル時の扱いも異なるため、単純な価格比較はできないが、事前に総額が確定する定額の料金表を全国一律で示したこと自体が、相対取引が中心だったスポット配送の価格慣行とは異なる。
軽貨物規制と品質保証、法人利用に残る検証点
制度面では、フードデリバリーにはない負担が生じる。24年の貨物自動車運送事業法改正により25年4月から、貨物軽自動車運送事業者は営業所ごとに貨物軽自動車安全管理者を選任することが義務付けられ、選任には国の登録機関での講習修了が必要となったほか、初任運転者など特定の運転者への特別な指導と適性診断の受診も求められる。
個人事業主は自身を安全管理者として選任・届出する必要がある一方、二輪のバイク便事業者は対象外のため、この規制は四輪の軽貨物、すなわち軽バンの担い手に直接適用される。25年3月末までに届け出た既存事業者には選任で27年3月末、適性診断で28年3月末までの猶予があり、Uber型即配の全国拡大は、この安全規制の対象者を増やしながら進むことになる。
品質保証にも検証すべきポイントが残る。同社は利用者向けの案内で、Uberと配達パートナーが荷物とその内容について責任を負わないこと、第三者に起因する荷物の紛失、盗難、破損を保険の補償対象としていないことを明記しており、配達パートナーは荷物が重すぎる、車両に収まらないといった理由で依頼をキャンセルできる。破損や誤配への補償、温度管理、荷扱いの水準を含め、一般的な企業間輸送で求められる責任範囲とは前提が異なる。開始時点の規定では合計1万円を超える高額品や現金、医薬品などの配送を禁止し、送り主の本人確認を導入しているが、これらは事故防止の枠組みで、法人が継続利用する際に求める補償や品質基準を保証するものではない。加えて、47都道府県への対応と全国で均質なサービスの提供は別の問題で、マッチング型のサービスのため、配達パートナーの稼働台数が少ない地方部で必要な時に車両を確保できるかは、稼働密度に左右される。軽貨物事業者の側から見れば、受注経路をプラットフォームに依存し、手数料と受注条件の決定権を委ねる取引構造に組み込まれるかどうかの判断を迫られる。
同社は配達件数、軽バンの登録台数、法人利用社数などの実績を開示しておらず、全国展開がどの程度の配送密度を伴うのかは現時点で確認できない。物流事業者が注視すべきなのは、Uberが宅配便を代替するかではない。緊急配送や店舗間移動など「その場で探す配送」を、アプリ上で価格の見える標準サービスに変えようとしている点だ。
◆ この記事をより深く理解するために ◆
「Uber、即時宅配便「Courier」22都道府県で開始」(25年11月19日掲載)― サービス開始時の仕様を伝えており、今回の拡大幅を比較できる
「エニキャリ、Uber Eats連携で法人向け即配強化」(26年2月9日掲載)― Uber Eats網を法人即配に組み込む国内の並行事例
「Uber Eatsで工具配送、全米3700店で即時配達」(26年4月8日掲載)― ウーバーが飲食以外へ輸送領域を広げる海外動向
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