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ヤマト、フレイター撤退が映す経営の転換点

2026年9月3日 (木)

ロジスティクスヤマトホールディングスは9月3日、日本航空(JAL)グループとともに手掛けてきた国内線貨物専用機(フレイター)事業について、2027年6月をめどに運航を終了すると発表した。同日の取締役会で決議し、JALとの運航契約を終える覚書を締結している。「物流の2024年問題」への対応策として打ち出された事業の終了は、一事業の縮小という枠を超えた意味を持つのではないか。(編集委員・刈屋大輔)

▲ヤマトの貨物専用機(フレイター)

採算悪化の構造

ヤマトのフレイター事業は、トラックドライバーの時間外労働規制を見据え、長距離輸送の一翼を担う手段として2019年から検討されてきた経緯を持つ。24年4月11日、エアバス「A321-200P2F」3機による定期運航に踏み切り、成田、羽田、新千歳、北九州、那覇の5空港をネットワークで結んだ。機体はヤマトが導入し、運航はJAL傘下のスプリング・ジャパンが担う分業体制で始まっている。

もっとも船出は順調とはいかず、25年3月期にはフレイター事業で145億円の赤字を計上する結果となった。稼働開始当初の積載効率は6−7割にとどまっており、便数を段階的に増やしながら採算ラインへ近づける青写真が描かれていたとされる。その後も北九州−新千歳線の増便に加え、対馬産の活魚を東京の飲食店へ翌日届けるクール輸送、関西国際空港と新千歳を結ぶ新規路線の開設など、高付加価値貨物の開拓は着実に積み重ねられてきた。単に赤字を垂れ流していたわけではなく、収益化への道筋を模索し続けていた最中の撤退表明だったことになる。トラックとの運賃差が「想定に反して」広がったという説明からは、事業計画の前提となっていたコスト構造そのものが、円安と燃油高という外部環境の変化によって揺らいだ様子がうかがえる。

「聖域なき見直し」の文脈

今回の決定を、ヤマトの経営体制の刷新と切り離して論じることは難しい。26年1月に櫻井敏之氏の社長就任が発表され、5月に体制が移行した。新体制は「聖域なき見直し」を旗印に掲げ、27年3月期の営業利益420億円という目標を打ち出したが、初動となる第1四半期(4−6月)は48億円の営業損失に沈み、同四半期では4期連続の最終赤字となっている。26年3月期通期の実績も、営業利益は前期比99.2%増の283億円にとどまり、期首に掲げた予想値を116億円下回る着地となった。

▲(左から)ヤマトHD前社長の長尾裕氏、現社長の櫻井敏之氏

この間、銀座の本社ビルを含む保有不動産のセール・アンド・リースバックによる資産のスリム化や、買収したナカノ商会に関するのれんの一時償却も進められた。中長期の構想として動き出したフレイター事業が、経営陣の交代を機に見直しの対象となった今回の流れは、資本市場からの短期的な評価圧力が強まるほど、時間のかかる投資案件から手がつけられやすいという経営判断の力学を映しているようにも見える。

問われる政策との接点

日本では従来、集荷から輸送・配送までを単独で完結させる「インテグレーター」型の物流事業者が根付きにくいとされてきた。2005年、佐川急便(現SGホールディングス)は貨物専門の航空会社「ギャラクシーエアラインズ」を立ち上げたものの、機材の不具合や燃油費の高騰でコストが膨らみ、運航開始からわずか2年ほどで実質的に幕を下ろしている。日本貨物航空(NCA)にしても、出資元の交代を幾度となく経験してきた歴史がある。ヤマトの取り組みは、こうした過去の挫折を踏まえたうえでの「日本版インテグレーター」への挑戦として捉えられてきた側面があった。

専用機による輸送力を自ら確保する体制を今回手放すことは、その文脈に照らせば後退と受け止められても不思議ではない。ただし、今回の発表は航空輸送からの完全撤退を意味するものではなく、旅客便の床下貨物スペース(ベリー)を軸にした輸送形態への切り替えにとどまる。国土交通省が推し進めてきた24時間運用空港の整備や保税蔵置場の拡充といった基盤整備は、今回の一件を経ても意義を失うわけではないだろう。一企業の経営判断としての合理性と、業界全体で目指すモーダルシフト推進という政策目標とを、どう接続していくか。ヤマトの今回の決定は、その問いを業界に投げかけているといえよう。

ヤマトとJAL、国内貨物機の運行を終了

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