
話題食品物流の課題は、トラックの問題だけで語ることはできない。
ドライバー不足、運賃や燃料費、人件費の上昇はもちろん深刻だ。一方で、現場をさらに難しくしているのは、多頻度小口配送、短い発注リードタイム、細かな時間指定、賞味期限や温度管理など、「運ぶ前」に決められているさまざまな条件でもある。
指定された時間に、指定された場所へ、指定された量を運ぶ。その条件を変えないまま物流事業者だけに効率化を求めても、改善余地には限界がある。
発注頻度を減らせないか。納品ロットをまとめられないか。着荷主が持つ需要・発注情報を物流に生かせないか。複数企業の商品を組み合わせられないか。
食品物流はいま、「どう運ぶか」ではなく、「なぜ、その物流が発生しているのか」を問い直す段階に入っている。
こうした転換期に初開催されるのが、9月30日から10月2日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる「食品物流&3PL総合展2026」だ。日本3PL協会とイノベントで構成する実行委員会が主催し、「FOOD STYLE JAPAN 2026<東京>」「ラーメン産業展 in Japan」「食品包装資材&機械展」と同時開催する。
単に物流設備を探すのではなく、食品サプライチェーンのどこを変えるべきなのか。その視点で会場を見ることが、今回の展示会を読み解く鍵になる。
「食」と「物流」を同じ場所で考える

食品物流&3PL総合展には、3PL・共同物流、コールドチェーン、倉庫・保管、輸配送、物流機器、WMS・TMS、ロボティクス、物流不動産、包装・容器、衛生・品質管理など幅広い領域が集まる。
FOOD STYLE JAPANとの同時開催も重要だ。
食品の商品設計と物流は、本来切り離せない。包装や容器が変われば積載効率が変わる。保存性が高まれば配送頻度や在庫配置も変わる。
「仕入れる・包む・届ける」を一体として捉えることが、食品サプライチェーン改革の出発点になる。
「運べない」より先に、物流条件を見直す
本誌はこれまでも、個々の物流事業者や荷主の努力だけでは解決できない、食品物流特有の構造問題を報じてきた。
食品物流では、運賃や人件費が上昇しても、そのコストを商品価格へそのまま転嫁できるとは限らない。
農林水産省が食料システム法に基づいて実施した「令和7年度食品等取引実態調査」では、コスト全体の価格転嫁率は65.0%、物流費についても62.9%にとどまった。
背景には、食品メーカー、卸、小売、外食など多くの事業者が連なる長いサプライチェーンと、それぞれの取引段階で形成されてきた商慣行がある。
短い発注リードタイム、小ロット・多頻度納品、厳格な納品期限や、いわゆる「3分の1ルール」。こうした条件は安定供給を支えてきた一方、物流側から見れば車両や人員を効率的に使いにくくする要因でもあった。
その前提を制度面から見直し始めたのが、2026年4月に本格施行された食料システム法と改正物流効率化法である。
食料システム法では、物流費を含むコスト上昇について価格協議に誠実に対応することを求める。一方、改正物流効率化法では、一定規模以上の荷主にCLOの選任や中長期計画の策定などを求め、荷待ち・荷役時間削減や積載効率向上を経営課題として扱うことを促している。
つまり、物流コストを適正に負担することと、そもそもそのコストを生み出している商慣行や業務を見直すこと。その両方が求められている。
実際、先の調査でも、パレット化やトラック予約受付システムなど個社単位の改善が進む一方、輸送資材の標準化や納品時間の分散といった企業横断の取り組みには遅れが残ることが示された。
物流会社がもっと効率的に運べば済む話ではない。
発荷主、着荷主、物流事業者が、物流を発生させている条件そのものを見直す必要がある。
「運ばせる物流」から「取りにいく物流」へ
その変化を象徴するのが、荷主CLOの動きだ。
本誌連載「The CLO」に登場した日清食品の深井雅裕氏、三菱食品の田村幸士氏といった物流改革リーダーに共通するのは、物流部門だけを改善するのではなく、サプライチェーン全体を見直すという発想である。
特に、着荷主側が持つデータの重要性も指摘される。
卸や小売は、複数メーカーに対して「何を、いつ、いくつ発注したか」という情報を持つ。その情報を早い段階で共有できれば、メーカーごとに商品を送り込むのではなく、複数社の商品をまとめて集荷したり、納品頻度や発注ロットそのものを見直したりできる。
日清食品はメーカー間の水平連携だけでなく、着荷主を起点に複数メーカーをつなぐ「水平連携×垂直連携」を進める。発注頻度やロット、付帯作業まで可視化し、着荷主を含めて物流条件そのものを見直そうとしている。
三菱食品も、卸を川上と川下をつなぐサプライチェーンの調整役と位置付ける。ここから見えてくるのは、発荷主が送り込む「運ばせる物流」から、着荷主が需要情報をもとに必要な商品をまとめる「取りにいく物流」への転換だ。
さらに両社は、「商流」と「物流」のデータを相互につなぐ協業を本格化し、AI(人工知能)を活用した発注最適化や製造、卸売、小売を横断したデータ連携の仕組み作りを進めている。
物流コストを何%削減するかではなく、物流そのものを発生させる条件をどう変えるか。
CLO時代には、そこまで踏み込んだ改革が求められるということだ。
「共同化」から、誰とでもつながる物流へ
物流構造の見直しを一社対一社の取り組みで終わらせず、多くの企業へ広げるには、標準化が欠かせない。
加工食品分野では、国土交通省が2020年に「加工食品分野における物流標準化アクションプラン」を策定。納品伝票、外装表示、パレット・外装サイズ、コード体系・物流用語を対象に、企業を越えて物流をつなぐための共通ルールづくりを進めてきた。
その後も、バーコード表示や物流情報、納品リードタイム、データプラットフォームなど、標準化の対象は広がっているが、まだ目指すべきゴールには遠い。
なぜ標準化が必要なのか。
例えば複数企業の共同配送を考えても、パレットや荷姿が違えば同じオペレーションでは扱えない。物流データも、企業ごとに拠点、貨物量、時間帯などの名称や定義が違えば、空いているトラックと貨物を機械的に組み合わせることはできない。
「一緒に運ぶ」前に、互いの物流を接続できる状態にする必要がある。
その流れの中で注目される最近の実装例の一つが、三菱食品と花王が幹事を務める共同配送コンソーシアム「CODE(Cargo Owners’ Data-driven Ecosystem)」だ。
食品だけではなく、日用品、医薬品、出版など異なる業種の荷主・卸・物流企業が参加し、物流拠点から納品先までの支線配送を対象に、輸配送データを活用して共同配送の組み合わせを探る。
CODEが重視するのは、マッチングツールとデータ基盤の整備である。
数社なら人同士の調整でも対応できるが、参加企業や拠点、輸送ルートが増えるほど、どこに貨物があり、どこに車両の余力があるのかを人だけで探すことは難しくなる。
共同物流を個別企業同士の取り組みから、より広いネットワークへ広げるには、データで相手を探せる仕組みが必要になる。
その延長線上にあるのが、フィジカルインターネットの実現である。
インターネット上でデータが共通ルールによってさまざまなネットワークを行き来するように、企業ごとに閉じていたトラック、倉庫、物流拠点などを相互に接続し、必要に応じて共有する物流の将来像である。
経済産業省は2040年を目標にフィジカルインターネットの実現を掲げている。加工食品・日用雑貨についても30年までのアクションプランが策定され、コード体系、物流資材、商慣行、データ共有などの共通化が進められている。
もちろん、共同物流からフィジカルインターネット実現までには高いハードルがある。
ただ、着荷主からのデータ共有、荷姿やパレットの標準化、企業間データ基盤、異業種共同配送といった現在の取り組みは、「必要なときに、必要な相手とつながれる物流」に向かうための基盤と捉えることができる。

▲ことし2月に開催された「フィジカルインターネットアワード2026」授賞式。社会実装部門最優秀賞には「共創型コールドチェーンの構築」の取り組みが選出された。
CLOと3PL、「与えられた条件」を変える
こうした改革を進めるうえで、物流事業者の役割も変わる。
日本3PL協会の加藤進一郎専務理事は、荷主と3PLが発注者と「業者」という関係から脱し、課題解決をともに担うイコールパートナーへ変わる必要性を指摘する。
求められるのは、提示された条件に対して「いくらで運べるか」を答えることだけではない。
なぜ毎日納品する必要があるのか。なぜ、この時間指定なのか。なぜ、この拠点なのか。発注や在庫の持ち方を変えられないか。他社の商品と組み合わせられないか。
物流側からそう問い返す力が必要になる。
加藤氏は、荷主の要望に応えてコストを下げる発想から、荷主の経営課題を理解し、物流側から価値を「逆提案」することへの転換を指摘する。IT、ロボット、オペレーションといった個別の知見だけでなく、それらを全体最適へまとめるプロジェクトマネジメント力も重要になる。
CLOが荷主側から物流条件を問い直し、3PLが物流側から代替案を示す。
食品物流改革は、その両輪で進める必要がある。
再設計はトラックの外にも広がる
サプライチェーンを見直せば、改革対象は輸配送だけではない。
どこに在庫を置き、どの拠点からどのエリアへ届けるのか。物流拠点も再設計の対象になる。
消費地への距離、幹線輸送との接続、共同配送、人材確保、BCPなどを考えれば、賃料だけで物流拠点を選ぶことはできない。
食品物流では、さらに温度帯という条件が加わる。
冷凍冷蔵倉庫の需給も逼迫している。日本冷蔵倉庫協会の26年5月「主要12都市受寄物庫腹利用状況」によると、庫腹占有率は12都市合計で93.9%。とりわけ6大都市が数値を押し上げ、主要消費地では既存施設の余力が限られている状況がうかがえる。加えて自社冷凍冷蔵倉庫の老朽化、30年に向けたフロン類の完全停止に向けて、建て替えではなく賃貸利用という選択肢も注目を集める。
冷凍食品市場の拡大や保存技術の進化によって長期保存や長距離輸送の選択肢が広がる一方、冷凍冷蔵設備をあらかじめ備えた賃貸施設や、小規模区画、自動倉庫を組み合わせたサービスなど、多様化する食品物流に応じてデベロッパー側の開発も、ただ適切な温度で保管する以上の付加価値が求められる。
センター内部でも、食品は温度帯、賞味期限、ロット、ケース・バラなど管理条件が多い。倉庫管理システム、自動倉庫、自動搬送機、ソーターなどを個別に導入するだけでなく、それらをどう連携させるか、設備と人を横断的に制御する発想も重要になる。
輸送、拠点、設備、データ、そして人は、すべて1つの食品サプライチェーンを構成する要素である。
「一社では解けない」、だからこそ展示会へ
日本3PL協会にとって、「食品物流&3PL総合展」は初めて主催する展示会となる。

▲日本3PL協会「改善ソリューション委員会」成果発表会の様子
物流は、トラックだけでも倉庫だけでもITだけでも成立しない。荷主、3PL、設備、システム、不動産、人材がつながって初めて機能する。今回の会場には、3PL、共同物流、コールドチェーン、物流DX・自動化、物流不動産、包装・容器など、食品サプライチェーンを異なる立場から支える企業が集まる。
さらに、展示と並ぶもう1つの見どころが、多様なテーマで設定されたセミナーだ。
行政による物流政策の基調講演をはじめ、フィジカルインターネットの実装、食品物流における共同化と3PL活用、物流DXと異業種共同輸配送、商慣行改善、物流センターのあり方、コールドチェーンなど、今回取り上げてきた課題をさまざまな角度から考えるプログラムが組まれている。
展示で具体的な技術やサービスを見て、セミナーで制度、先行事例、将来像を知る。
その両方を行き来することで、自社の物流課題がサプライチェーンのどこにあり、誰と取り組むべきなのかを考えることができる。
自社の課題は、本当に輸配送にあるのか。発注や納品頻度なのか。データなのか。標準化なのか。拠点なのか。それとも、荷主と物流事業者の役割分担なのか。
「運び方」を変えるだけではない。
物流が発生する条件と、企業同士のつながり方を変える。
そのヒントとパートナーを横断して探せることこそ、「食品物流&3PL総合展」を今開催する意味ではないだろうか。
「食品物流&3PL総合展2026」は9月30日から10月2日まで、東京ビッグサイト東1-3ホールで開催される。
何を買うかではなく、誰と、何を変えるのか。
食を止めない次のサプライチェーンを考える機会となる。
■ 会期 :2026年9月30日(水)・10月1日(木)・2日(金) 10時-17時 最終日は16時まで(予定)
■ 会場 :東京ビッグサイト(東京都江東区)
■ 同時開催展:FOOD STYLE JAPAN 2026<東京>/ラーメン産業展 in Japan/ 食品包装資材&機械展
■ 主催 :食品物流&3PL総合展 実行委員会(日本3PL協会、イノベント)
■公式HP :https://foodlogi.jp
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