
イベントグローバルサプライチェーンの不確実性が高まるなか、日本の輸出入企業の8割が事態把握に遅れをとり、7割超が「見えない損失」を経験している。日々の書類作成や調整業務に忙殺される「手配屋」からの脱却と、蓄積されたデータを武器とした貿易実務の戦略拠点化が急務となっている。本誌は2日、こうした課題に終止符を打つべく「貿易DXサミット2026」を開催した。本サミットには、経済産業省や国土交通省に加え、8月に発足した日本貿易DX協会の佐藤孝徳代表理事らが登壇した。
貿易DXは一企業の業務効率化にとどまらず、日本の国際競争力や経済安全保障に関わる重要なテーマである。しかし、一社の中だけをデジタル化する「部分最適」では業界全体の効率化に限界がある。そこで、データ項目の定義やシステム間連携ルールといった「協調領域」を業界全体で整備し、その土台の上で各社がサービスの品質を競う「競争領域」とを明確に分けるため、同協会が設立された。
本イベントは、国がデジタルインフラを整え、推進団体が標準化を進め、民間事業者が現場のソリューションを提供するという、官民一体となって業界の構造改革に挑む協調の姿勢を読者に強く打ち出す場となった。

▲国土交通省港湾局参事官(技術監理・情報化)室の中川航志郎課長補佐
第1部「マクロの潮流:日本の貿易標準化」では、国と業界が描くロードマップが提示された。国土交通省港湾局参事官(技術監理・情報化)室の中川航志郎課長補佐が、港湾物流の手続きを電子化する「サイバーポート」の推進状況を説明し、2035年度末までに1万1000社との連携を目指す目標を掲げた。

▲経済産業省通商政策局貿易振興課の板橋洋平課長補佐
続いて、経済産業省通商政策局貿易振興課の板橋洋平課長補佐が、紙中心の手続きが生む負担を削減し、サプライチェーンの強靭化を図る構想を明かした。日本貿易DX協会の佐藤代表理事からは、協会内に標準化、調査、普及、政策提言の4つの委員会を設け、業界のエコシステムを構築する戦略が示された。

▲日本貿易DX協会の佐藤孝徳代表理事
第2部「理想と現実:ミクロの現場課題を紐解く」では、現場にはびこるデジタル化の遅れの正体に焦点を当てた。日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)の調査を引用し、データ交換手段の88%が未だにPDFや紙書類に依存している実態が示され、国のインフラがあっても現場がアナログであるというギャップが浮き彫りになった。
双日テックイノベーション(東京都千代田区)の木村悦治副部長は、属人化の解消を阻む原因は担当者への依存度の高さにあると指摘し、自社サービス「Trade Hub」(トレードハブ)などを活用したスモールスタートによる業務プロセス標準化の有効性を訴えた。

▲双日テックイノベーションの木村悦治副部長
また、Shippio(シッピオ、港区)の竹原功将セールスディレクターも、システム導入によるデータに基づく計画作成や異常の早期検知の重要性を説いた。

▲Shippioの竹原功将セールスディレクター
本イベントを通じて、貿易DXの推進に向けた官民連携の道筋が明確に示された。佐藤代表理事が貿易DXを通じたサプライチェーンの高度化への熱意を語り、質疑応答で竹原氏が、作業の自動化は「単なる作業担当者から、意思決定や戦略立案を担う人材へ進化する好機だ」と明言したように、企業に実務プロセス変革のヒントを与える大きな成果を上げた。
企業は今こそ官民連携の大きな潮流に乗り、次世代を見据えた組織改革へと踏み出すべき時を迎えている。
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