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制度の「公平運用」と適正運賃で定着促進、残る地域差の解消が今後の焦点

女性雇用に”引き算”発想を、全ト協女性部会が研修

2026年9月25日 (金)

行政・団体全日本トラック協会女性部会は25日、東京都内で「令和8年度全国研修会」を開催した。会場には全国から200人の関係者が集結。深刻化する人手不足やコスト上昇など運送業界を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、全国34協会まで広がった組織のスケールメリットを生かし、「女性ドライバー未来プロジェクト」をはじめとする持続可能な業界作りへ向けて多角的な議論が交わされた。

冒頭挨拶では、欠席となった原部会長の挨拶を代読した須藤奈津江副部会長が「今年度は長野県で新たに女性組織が設立され、今年度中には高知県でも設立予定だ。実態調査を踏まえた未来プロジェクトを通じ、各地域の好事例の共有や行政連携を加速させる」と強い意欲を表明。

▲全日本トラック協会女性部会副部会長 須藤奈津江氏

来賓として登壇した全ト協の楠木寿嗣副会長は「2年後の適正原価制度を見据え、自社で原価計算を行い適正運賃の交渉を進めることが何より不可欠だ。本会は互いに高め合う仲間を作る場である」と鼓舞し、佐藤文平青年部会長も「機動力を生かして全国の声を集め、他部会と一丸となって新たな労働力の確保に全力を尽くしたい」と力強く呼びかけた。

「特別扱い」ではなく、声なき困りごとを察する対話

女性ドライバーの確保と定着において、現場が真に求めているのは性別による安易な「特別扱い」ではない。第一部で登壇したSNS総フォロワー数65万人を超える人気トレーラードライバーのトラックめいめい氏(富良野通運)は、コーディネーターの小坂真弘氏(日本PMIコンサルティング)との対談の中で、未経験で業界に飛び込んだ際の実体験を語った。「18歳で免許も資金もない中、資格取得制度のある温かい会社に育ててもらった」と振り返りつつ、本業ドライバーを第一に愚直に続ける姿こそがSNS発信の原動力だと明かす。

▲富良野通運ドライバーのトラックめいめい氏

その上でめいめい氏は、長続きする職場環境について「『女性だから特別扱いしないでほしい』と言えるのは一定のキャリアがあるからこそ。未経験者や体力に限界がある時期には、当然相応の配慮が必要だ。しかしそれは性別の問題ではなく、一人の新人や個人に応じた配慮に過ぎない」と指摘する。「『何かあったら言ってね』という問いかけは、一見優しく聞こえて実は無責任。『今日こんな作業が大変だったのでは?』と周囲が想像力を働かせ、具体的に歩み寄るきめ細やかなコミュニケーションこそが離職を防ぐ」と、現場の生きた言葉で訴えた。

業務を削ぎ落とす「引き算」と、ライフイベントに勝つ「運用の柔軟性」

雇用側の劇的な意識改革として大きな衝撃を与えたのが、第二部の講演で富良野通運の永吉大輔代表取締役が提示した「引き算の発想」だ。同社で初となる女性ドライバー(トラックめいめい氏)を迎える際、社内からは「女性専用の仕事を選ぶ手間が増える」「男性社員に対する逆差別になる」といった強い反発が生じたという。これに対し永吉氏は、「あれもこれもと求める従来の足し算の概念を捨て、業務から不要な負担を取り除く引き算の発想こそが重要だ」と断言。同社の主力である玉ねぎなどの重量物輸送において、顧客と粘り強く交渉してパレット荷役化(手積みの脱却)を推進し、誰もが作業できる環境へ構造を変革させた。

▲富良野通運代表取締役の永吉大介氏

さらに永吉氏は、採用した女性社員が妊娠に伴う体調不良で退職せざるを得なかった苦い経験にも言及。「厚生労働省のガイドライン通りに就業規則を整えていても、突然訪れるライフイベントや体調変化の現実には即座に対応しきれなかった。制度の『存在』以上に、突然の事態に直面した社員に心の負担をかけず寄り添える柔軟な『運用の仕組み』を経営者が備えておくべきだ」と語り、経営者の覚悟と現場運用の重要性を強調した。

「性別の平等」を超えた「公平な評価」が組織改革を加速する

▲左から、日本PMIコンサルティング代表取締役 小坂真弘氏、全ト協女性部会 副部会長 須藤奈津江氏、全ト協青年部会部会長 佐藤文平氏、富良野通ドライバーのトラックめいめい氏、富良野通運代表取締役 永吉大介氏、全ト協副部会長 四戸敬子氏、全ト協副部会長 藤井ふぢ美氏

第三部のパネルディスカッションでは、単なる「性別の平等」を超えた個人差・状況に応じた「公平な評価と柔軟な働き方」へ議論が深まった。中部ブロック代表の藤井ふぢ美副部会長は、全国一の共働き率を誇る福井県での手厚い育児サポート施策やガイドラインの取り組みを紹介し、「企業努力だけでは限界がある。行政と企業を結びつける橋渡し役を女性部会が積極的におこなうべきだ」と提言。
また永吉氏が「女性を受け入れる体制を整えることは、現場の過剰な付帯作業の見直しやDX化を促し、結果として男性社員の定着率向上や会社の収益力強化に繋がる」と明かしたように、女性雇用の推進は単なる人手穴埋めではなく、企業全体の構造改革を駆動させる引き金になるという点が会場全体で深く共有された。

意欲的な全国の試みを糧に、地域差を乗り越える次の一歩へ

広島での中国部会をはじめ全国の取材を継続してきた筆者にとっても、今回の研修会で示された「引き算の発想」や「公平な運用の仕組み」という知見は、業界の未来を明るく照らす確かな手応えを感じさせるものであった。

一方で、広島県トラック協会で「女性活躍促進」に向けた組織設立の動きが具体化するなど地域単位での一歩が着実に踏み出されているものの、中国ブロック全体を見渡せば他県への波及やブロック横断的な連携体制の構築には時間を要しているのが現状だ。全国的に女性組織の立ち上げが進む中で、地域ごとに組織化のスピードや支援体制にグラデーションが存在する点も、業界が抱える課題と言える。

しかし、今回のように全国から志を同じくする仲間が集い、現場の生きた知見や工夫を共有し合う精力的な場があることこそが、業界を動かす最大の原動力となる。「仲間を作り、一緒にこの業界を伸ばしていく」――研修会で発せられた熱き言葉を糧に、地域差という壁を一つひとつ乗り越え、「誰もが生き生きと働き続けられるトラック運送業界」の実現に向けた挑戦は、これからも全国へと力強く広がっていくはずだ。(東京編集部・林花代子)

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