ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

セルフィット・Nexgen Japan・フジテックス、物流DX会議で出発点問い直す

「CLOの死角」解消する新サービス、3社協業で発表

2026年10月26日 (月)

ロジスティクスCLO(物流統括管理者)を選任し、物流改革の中長期計画を策定する。ところが、いざ改革に着手しようとすると、必要なデータがどこにあるのかわからない。経営層が描く改革の方向性が現場に伝わらず、取り組みが止まってしまうこともある。

物流DXを進めるうえで、最初の壁となるのは、必ずしも技術やシステムの不足ではない。自社の物流業務をどこまで把握できているかという、もっと基本的な問題だ。

こうした課題に、異なる専門性を持つ3社が協業によって挑んでいる。

軽貨物などの配送マッチングプラットフォームを運営するセルフィット(東京都新宿区)、物流・SCM領域へのAI(人工知能)導入を専門とするNexgen Japan(横浜市西区)、物流設備の導入や現場改善を支援するフジテックス(東京都中野区)だ。

3社は26日に開催された「第4回物流DX会議2026」で、「見えてきた、CLOの死角。3社で実践したソリューションとは?」をテーマに、実際の物流業務を対象とした取り組みから得られた知見を紹介した。CLOがけん引する物流改善取り組みを後押しするための、新たなソリューション提供を発表した。

セッションには、セルフィット社長の宇佐美典也氏、Nexgen Japan社長の大野有生氏、フジテックス上級執行役員物流事業部部長の高柳直人氏が登壇。LOGISTICS TODAYの赤澤裕介社長兼編集長が進行を務めた。

▲(右から)LOGISTICS TODAY赤澤編集長、セルフィット宇佐美氏

3社協業のきっかけは、物流改革への対応を進めたい企業からセルフィットに寄せられた相談だった。

宇佐美氏によると、動態管理や物流業務の可視化に関する相談を受け、企業と検討を始めたものの、取り組みが途中で止まってしまうケースがあったという。

「上がやりたいことが下に全然伝わっていない」

経営企画部門などが改革を主導しても、実務を担う物流現場には、その必要性や具体的な進め方が共有されていない。現場からすれば、十分な説明もないまま新たな業務が増えるように映ってしまう。

こうした状況を打開するには、自ら現場改善に取り組み、その成果を示す必要がある。そう考えた宇佐美氏が、物流・SCM領域のAI活用に知見を持つ大野氏、物流事業者と荷主企業の双方で実務経験を積んだ高柳氏と連携。配送ネットワーク、AI・データ技術、物流現場の改善力を組み合わせた協業が始まった。

3社が取り組むのは、改正物流効率化法への対応を支援するCLOダッシュボードアプリ「synCLO」(シンクロ)と、AIを活用した「SCM経営診断」だ。

synCLOは、荷待ち時間、荷役時間、積載率などの情報を集約・可視化し、改善ポイントの把握や定期報告書の作成を支援する。SCM経営診断では、データの統合・分析を通じて、経営判断や改善策の検討につなげることを目指す。

2つのソリューションを組み合わせることで、CLOの取り組みを後押しする構想だ。「もともとはCLOのダッシュボードだけを考えていた。システムを作って導入し、見える化すれば十分じゃないかと思っていたが、そんなことは簡単にできないことがわかった」と宇佐美氏は振り返る。

▲(左から)Nexgen Japan大野氏、フジテック高柳氏

3社は、フジテックス自身の物流業務を対象に、データ収集から現状把握、改善課題の抽出までの実証に取り組んだ。

フジテックスは特定荷主には該当しないものの、小売業や製造業などの荷主企業と日常的に接し、物流改善を提案する立場にある。高柳氏は、顧客企業の課題解決を支援するためにも、まず自社で実践する必要があると考えた。

ところが、取り組みは当初から順調に進んだわけではなかった。

大野氏によると、必要なデータを提供してもらえれば可視化できると説明しても、物流部門や経営企画部門の担当者が、そのデータを持っているとは限らない。どこに情報があるのかさえ、わからないケースがあった。現場のデータが揃わず、物流業務の「死角」自体を認識できていないことが明らかになったという。

そこで3社が作成したのが、現場の実態やデータの整備状況を確認する「アセスメントシート」だった。

まず制度対応で何が求められるのかを説明し、必要なデータを整理する。その際、最初からすべての出荷・入荷データを集めようとはせず、対象となる拠点や項目を絞り込むことで、現場の負担を減らした。

「データがなくてもいい。まずは、あるものだけ見せてほしい」

大野氏は、必要な情報が自社になければ3PL事業者が保有していないかを確認し、それも難しければ自社の基幹システムに残っている情報から始めるなど、段階的に進めたと説明する。

すべての情報がそろっていなくても、対象を限定すれば取り組みを始められる。実際、必要な作業の範囲が明確になると、現場からも情報収集への協力を得やすくなったという。

小さな可視化が、改善への意識を変える

こうした実証を通じて、3社が得た発見は、データ収集の方法だけではなかった。

宇佐美氏は当初、まず物流全体を可視化し、そこから改善点を発見して現場改革につなげることを想定していた。しかし、実際に取り組むなかで、その順番を見直す必要性に気付いた。

「見える化は小さくてもいいから、見える範囲だけ見える化する。そうすると自然と改善点が見えて、改善したくなってくる」

実証では、従来の経緯から10トントラックを使用していたものの、実際の積載効率が極端に低いケースや、長距離輸送に比べて改善の意識が向きにくい短距離輸送に課題が残っていることなどが見えてきたという。

これまで当たり前に続けてきた業務も、データで捉え直すことで改善の対象になる。問題が具体的になれば、現場もその必要性を理解し、改善への意欲が高まる。

高柳氏も、現状把握を通じて、それまで不明瞭だった課題が明確になり、経営課題と結び付けて考えられるようになったことを成果として挙げた。

物流改革の必要性を経営層が説明するだけでは、現場の行動は変わらない。一方、現場自身が改善すべき点に気付けば、改革は自分たちの課題になる。

この変化こそ、3社が実証を通じて見いだした重要な成果といえる。

また、大野氏は、初めから物流業務を十分に把握している企業だけが対象ではないと強調する。現状を尋ねることで担当者自身が業務を言語化し、何がわかっていて、何がわからないのかを整理できるようになる。

物流DXは、データが十分に整備された企業だけの取り組みではない。自社の物流を把握できていない状態からでも、始められるということだ。

年内に物流DXアセスメント提供へ

3社は今回の実証で得た知見を基に、現場の診断からデータ整備、可視化、改善実行までを一体的に支援するサービスの具体化を進める。

基本となるのは「診断する」「整備する」「改善する」の3段階だ。

まず物流DXアセスメントによって、現場へのヒアリングや活動評価を行い、課題と確認すべき情報を整理する。次に、データの所在を特定して収集方法や更新フローを整備し、最後に現場の実態とデータを照合しながら改善策につなげる。

この入り口となる「物流DXアセスメント」(仮称)について、宇佐美氏は12月をめどに提供を始めたいとの考えを示した。取り組みの成果を紹介する特設サイトなども準備する方針だ。

サービスはまだ実証の初期段階にあり、具体的な提供内容や仕組みの整備はこれからとなる。

ただ、3社が目指す方向性は明確になった。

すべてのデータを整えてから物流改革を始めるのではなく、まず現状を把握できる範囲から着手する。そこから改善の必要性を共有し、経営と現場の認識をそろえていく。

10月末に中長期計画の提出期限を迎える荷主企業にとって、今後問われるのは計画を実際の改革につなげる実行力だ。

3社の実証が示したのは、物流DXの出発点は必ずしも高度な技術の導入や百点満点のスタートではないということだ。自社の物流業務を知り、小さな改善の可能性を見つけることが、改革を動かす第一歩になると訴えた。

なお、本セッションは10月28日(水)10時35分-11時5分のオンライン配信で視聴できる。第4回物流DX会議2026の事前登録者限定の無料視聴申し込みは27日(火)16時まで。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集局にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集局直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集局
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。