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三菱重工、次世代LNG船「さやえんどう」開発

2011年7月12日 (火)

ロジスティクス次世代型LNG船「さやえんどうエクストリーム」三菱重工業は12日、次世代型LNG(液化天然ガス)運搬船として、球形タンクを搭載するMOSS(モス)方式を進化させた「さやえんどう”EXTREM(エクストリーム)”」船型の開発を完了したと発表した。

 

タンクを船体と一体化した連続カバーで覆うことで船全体の構造を効率化し、軽量・コンパクト化を実現。これにより燃費を改善し、経済性を向上、ターミナルへの適合性やメンテナンス性を高めた。LNG船分野をリードする戦略製品として、早期受注を目指す。

 

さやえんどうエクストリームの名称は、連続したカバー(さや)の中に、球形タンク(まめ)を納め、さやえんどうに似た外観を持つことから名付けた。これまでのMOSS方式では、船体甲板上に突出したタンクそれぞれの上半球部分を半球状のカバーで覆い、下半球部分をスカートと呼ばれる円筒形の構造で支持しているのに対し、タンクすべてを船体と一体構造の連続カバーで覆うことにより、船体の全体強度を確保した。

 

また、これまでの方式ではタンク頂上の配管、電線、通路を複雑な構造で支えていたが、それらの構造を不要にできるため、メンテナンス性も大きく向上するとしている。

 

連続カバーは、推進上抵抗となる風圧を大幅に軽減し、実運航上の燃費低減にも寄与。さらに、支持構造物や艤装品の露出を少なくできること、氷による衝撃荷重に強い船体にしやすくなることなどから、寒冷地・氷海領域向けとしても適している。

 

今回、基本設計を終えたタイプは長さ288メートル、幅49メートル、深さ26メートル、喫水11.5メートルで、総トン数13万8000トン。球形タンクは4基搭載し、LNGタンク総容積は15万5000立方メートルとなっている。このほか、今後高まってくるニューパナマックス型などの需要にも対応する。

 

MOSS方式の同型船と比べ、タンク中央部に約1.5メートルの円筒部(ストレッチ部)を挿入することにより、搭載LNG量を約8000立方メートル増加させ、船体鋼材重量は約5%軽減した。また、船体の深さも1メートル近く削減し、荷役や通行性の面から国内外の主要ターミナルへの適合性を向上させている。

 

同船には、蒸気を再度加熱利用することで熱エネルギー効率を高めた新型蒸気タービン機関(再熱舶用推進蒸気タービン)を主機として採用。小型・軽量化と相まって従来船比20%以上の大幅な燃費低減も実現した。

 

MOSS方式のLNG船は、タンク構造の信頼性の高さや、耐スロッシング(揺動に伴うタンク内液面の周期的なうねり)性などから、万一の場合のターミナルからの緊急離岸も容易で、環境条件の厳しい海域にも適した船型として広く普及している。

 

同社は、MOSS方式の長所を活かすとともに、省エネ・地球温暖化抑制性能やLNG輸送能力も高めたさやえんどうエクストリームを次世代型LNG船の切り札に位置づけ、積極的な営業活動に取り組んでいく、としている。