ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

2020年 年頭所感

日貨協連会長、罰則強化に「実態に即した運用を」

2020年1月8日 (水)

行政・団体日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)の吉野雅山会長は、年頭あいさつでトラック業界が抱える問題点を挙げ、これらの諸問題に対しての対策案を挙げた。なかでも、車両制限令違反者に対する罰則強化については、「不可抗力とも言うべき状況もある」との認識から、実態に即した運用を訴えていく考えだ。

(以下、要旨)

▲吉野雅山会長

昨今のトラック運送業界・協同組合など会員事業者の経営環境は、少子高齢化の進展による人手不足の深刻化、ネット通販の浸透による小口配送の増加と再配達問題、軽油価格の高止まりによる原価負担、働き方改革法・改正貨物自動車運送事業法への対応など課題が山積している状況である。こうした多くの課題も業界団体として、一致団結し、協同組合のスケールメリットを生かして、解決できることは少なくないものと考えている。

協同組合運営の柱の一つであり、トラック運送事業者にとって原価に占める割合が多く、生産性向上に欠かせない、高速道路料金について、12月13日に補正予算が閣議決定され大口・多頻度50%割引制度については、本年4月以降もさらに21年3月末まで1年間延長され、78億円が措置された。

なお、大口・多頻度割引の実績値は現状、平均37%前後であり、日貨協連としては全日本トラック協会の理解を得ながら更なる割引率の引き上げを目指して陳情活動を進め、引き続き実質50%割引と恒久化の実現に向け尽力していく。

一方、車両制限令違反者に対する罰則強化問題については、引き続き取り締まりの強化が行われていることから、多くの会員事業者にとって喫緊の課題となっているところである。日貨協連としても会員における関連法令遵守とその啓発に努めているところではあるが、トラック事業者の責務や努力だけでは解決できない不可抗力ともいうべき状況もあるとの認識から、愛媛県内5協同組合代表・日貨協連で四国選出の国会議員、自民党本部、国交省道路局に陳情を行い、「国交省道路局とトラック業界の勉強会」の発足するにいたった。これら車両制限令の問題は、ことしもトラック輸送の実態に即した運用を行ってもらうよう、粘り強く要望していくので、会員各位の協力をお願いしたい。

次に燃料問題は、昨年は1月にいったん底を打った後、中東の地政学リスクや、米中貿易摩擦による影響で比較的、原油価格が高止まりし、軽油価格もほぼ一貫して高止まりしている状況となっている。今後もOPEC加盟国に米国、ロシアなど主要産油国を加えた「OPECプラス」が追加減産の継続に合意するなど新たな動きのほかに引き続き、中東などの地政学的な情勢や米中貿易摩擦、英国のEU離脱を巡る混乱などからも不透明感は一層増しており、今後の動向に十分注視していかなければならないだろう。燃料価格の動向はトラック事業の収益に最も大きな影響を与える要因の一つであり、多くの組合にとっても燃料事業は主要な事業として位置付けられており、日貨協連としても引き続き、毎月の燃料価格調査とその分析結果の報告、また、原油価格や燃料交渉結果などの動向については、機関紙などを通じて活用してもらいたい。昨年は、日貨協連の取り組みに賛同を得て、新たに燃料共同購入事業に4組合が参加した。「数は力なり」ということで、今後も参加を検討してもらい、会員企業のメリットを追求できる体制を構築していきたいと思う。

次に求荷求車情報ネットワークシステムである「WebKIT」については、昨年5月に使い勝手の向上を目指し、スマホへの対応や荷物の画像情報、地図情報などを盛り込んだ、「WebKIT2」への全面刷新を図った。5月には新システムへの移行や新天皇の即位に伴う連休、10-11月には消費税引き上げや米中貿易摩擦に起因すると推測される足踏みもあったものの、おおむね加入者や成約件数の双方ともに順調な伸びを見せている。本年も人手不足への対応、長労働時間の改善、生産性の向上の観点から「WebKIT」を活用することで各々の課題解決の一助となるよう強く期待するところであり、適正に利用してもらえるよう品質向上対策にも引き続き力を入れていきたい。

次に各種保険事業について、一時加入者の減少から保険事業の継続が可能か否か心配された全国トラック事業グル-プ保険については、順調に加入者が増加しており、今後は1万2000人台を目指し、業務内外の事故や入院、死亡等給付、保障に役立つ保険として制度の見直しを予定しており、さらなる普及に務める。貨物補償制度については、19年9月、三井住友海上の協力を得て、抜本的な制度見直しを行い、大幅に保険料も安く、利用しやすい商品となった効果もあり、順調な滑り出しとなっている。また取引信用保険、ETCコ-ポレ-トカード盗難保険などについても保険内容の見直しや改善に取り組むなど、契約者数の確保につなげたいと考えている。

販売開始から2年目となった、業務用血圧計の販売も、昨年に引き続き年1000台のペースで順調に推移している。さらに普及し、点呼時に活用してもらうことで、今後、トラック運送業界の健康管理が促進され、過労死や健康起因事故がなくなるよう期待する。

事業用トラックドライバー研修テキストの販売については、各種法令の改正、統計データの差し替えを行った上で、4月より改訂版の販売を開始し、3700セットの販売で好評だった。また、このうち、3割が連合会や組合に取りまとめを依頼しているもので、普及への理解、協力に改めて感謝したい。本年3月にもさらなる法改正が予定されており、これを反映した改訂版の販売を行えるよう準備を進めたいと思っている。

事業用トラックドライバー研修テキストで実施している、連合会・組合の取次業務については、昨年、組織強化の観点から、血圧計・ロボット点呼機器にも取次をお願いする仕組みを拡大した。テキスト同様、普及について理解・協力をお願いしたい。

昨年販売を開始したロボット点呼支援機器については、運行管理者に4月から年間の残業時間720時間の適用が迫っていることから、この対応が喫緊の課題となっている。安全を担保したうえで、この問題に対応できるよう、ロボット点呼支援機器の普及を図っている。注目度も高く、色々な意見・要望もあるので、鋭意これらを取り入れ、実証実験や行政への要望を行い、活用しやすい環境を整備したいと思っている。

また、新たに18年秋にスタ-トした青年・次世代経営者連絡協議会については、国土交通省、全日本トラック協会などの支援を得ながらロボット点呼の実証実験を主体に調査研究を行っている。近い将来、トラック業界における協同組合活動を支える若手経営者には、新しい時代への対応力、行動力に強く期待したい。若手経営者が集い、活動していく場を今後も引き続き設けていきたいと考えている。