ロジスティクス日本船舶技術研究協会と国土交通省はこのほど、温室効果ガス(GHG)を排出しない究極のエコシップ「ゼロエミッション船」を2028年までに商業運航させるロードマップを公表し、その燃料としてバイオメタン、カーボンリサイクルメタン、水素、アンモニアを主力候補に挙げた。
このロードマップは、2008年のGHG排出量を基準として、2050年までに国際海運全体の排出量を50%削減するという国際海事機関の「2050年目標」を達成するための具体的な方策と計画を示したもので、日本船舶技術研究協会が主催する「国際海運GHGゼロエミッションプロジェクト」で作成された。具体的に2050年目標を達成するためには、トンマイルあたりの排出量が80%以上改善された船を2030年までに投入している必要があるため、2028年までに第1世代のゼロエミッション船を実船投入する。
ロードマップの作成にあたり同プロジェクトは、2050年までの海上荷動き量を推計し、石油系燃料に代わる代替燃料の候補として、水素、アンモニア、液化天然ガス(LNG)、メタン、バイオディーゼル、メタノール、エタノール――の可能性を検証。2028年までに実用化の可能性がある2つの代替燃料移行シナリオに絞り込んだ。
「LNG→カーボンリサイクルメタン移行シナリオ」と「水素・アンモニア燃料拡大シナリオ」の両案は、最近実用化が進んでいるLNG燃料船が今後普及し、石油系燃料船が2035年以降ゼロとなることを想定したシナリオで、今後LNGの普及とともにメタンの利用も拡大する想定の「LNG→カーボンリサイクルメタン移行シナリオ」では、2050年に国際海運で消費されるエネルギーの75%がLNG・カーボンリサイクルメタン・バイオメタン燃料のいずれかとなれば2050年目標を達成できる。
もう一方の、LNGがあまり普及せず水素・アンモニアの利用が拡大する想定の「水素・アンモニア燃料拡大シナリオ」では、2050年に45%が水素またはアンモニア燃料、30%がLNG燃料となることで目標を達成する。
この2つのシナリオを実現するため、大手造船・海運会社が参画している同プロジェクトは、新造船に使用する技術の研究開発を連携して拡大・強化すると同時に、新造船への代替を促す国際制度の構築を目指す。具体的には、現存船に一定の燃料性能を達成することを義務化し、新造船への切り替えインセンティブを確保する国際制度を2023年までに構築する。