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トラック運送は資金繰り支援申請19%・雇調金活用16%

国交省が貨物運送のコロナ影響とりまとめ

2020年6月15日 (月)

調査・データ国土交通省はこのほど、新型コロナウイルスによる関係業界への影響について、5月末時点の調査結果(有効回答143者)を公表した。貨物自動車運送業界は、前年同月比減収となった事業者の割合が4月末時点より増加して88%に、2割以上の減収となった事業者の割合は4月末時点から倍増して29%に拡大した。

▲貨物自動車運送業の運送収入への影響(出所:国土交通省)

輸送品目別でみると、鉄鋼厚板・金属薄板・地金など金属素材の運送収入は28%の減少、完成自動車・オートバイ・自動車部品の運送収入に至っては45%の減収だった。特に大きな影響を受けている両品目は、メーカーの生産活動の停滞により3月から5月まで減収の幅が拡大し続け、今後の見通しも明るくない。

▲貨物自動車運送事業者の支援活用状況(出所:国交省)

こうしたなか、政府は収入が減った事業者に対して金融機関からの融資や持続化給付金などの資金繰り支援を用意しているが、5月末時点でこれらを申請した貨物自動車運送事業者は19%にとどまった。また、雇用を維持するために計画的な休業を行った事業者を支援する雇用調整助成金については、16%の事業者しか申請していない。これは内航貨物船業界(有効回答89者)も同じで、資金繰り支援を申請した事業者は10%、雇用調整助成金を申請した事業者は12%にとどまった。

景気動向調査などで同じ「運輸・倉庫業」に振り分けられる旅客運輸業界に目を向けるとその差は歴然で、5月末時点で90%の事業者が前年同月比5割以上の減収となったタクシー業界(有効回答222者)は、88%の事業者が資金繰り支援を、49%の事業者が雇調金を活用している。また、さらに大きな影響を受けている貸切バス業界(有効回答62者)では、5月末時点で87%の事業者が7割以上の減収となっており、63%の事業者が資金繰り支援を、79%の事業者が雇調金を活用している。「他業界と比べれば貨物運送はマシな方」とする世の中の論調は間違っていない。

■タクシー業界

■貸切バス業界

収入変化に大きな差が表れている陸上運輸業だが、今後の見通しについては概ね一致している。旅客と貨物で程度は大きく異るものの、6・7月は5月と比べてやや回復を見込む。気がかりなのは、貨物自動車運送業で前年同月比減収を見込む事業者が6月は減少に転じるものの、7月に1ポイント増加していること。20%以上の減収を見込む事業者は6月から再度4ポイント増加する見通しとなっている。(冒頭の図参照)

また内航貨物船業界は、減収を見込む事業者の割合が6月に80%に達した後、7月に77%に減少するが、2割以上の減収となる事業者は3月から7月まで増加し続ける見通しとなっている。

帝国データバンクが実施した5月の景気動向調査によると、全産業の景気予測DIは、国内景気が6・7月にやや回復するものの、8月は横ばい、9月から11月まで緩やかに下降する見通しを示している。貨物運送業界は「まだマシな方」であるものの、このまま何もせずに”業績好調だったあの頃”に戻ることを待っていれば、真綿で首を締められているうちに本当に首が締まってしまうかもしれない。

▲景気DIの推移・予測(出所:帝国データバンク5月景気動向調査)

今回取り上げた調査は、国土交通省が宿泊、旅行、バス、タクシー、航空、鉄道などの業界団体を通じて行ったもので、貨物自動車運送業の調査は143の事業者に対してアンケートを実施した。4月末までは宿泊、旅行、旅客運送など、新型コロナウイルスの影響が大きい業界の調査をまとめていたが、5月末からは貨物運送、道の駅、不動産、建設、住宅などに調査対象を拡大した。

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