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現地で検証、アライプロバンス賃貸開発第1弾の強み

2020年10月29日 (木)

話題千葉県浦安市に延床面積1万500坪のマルチテナント型物流施設を開発中のアライプロバンスは、ことし7月に金属加工業から総合不動産業に事業転換、社名を新井鉄工所から現社名に変更した。同社の旧浦安工場跡地で建設している「浦安市港物流センター」(仮称)は、ことし7月に着工し、2021年10月末に竣工、同11月から稼働する予定だ。この賃貸物流施設がどのような強みを持っているのか、アライプロバンスの新井太郎専務に現地で話を聞いた。

▲建設予定地とアライプロバンス新井太郎専務

■現地で見た物件の強み

「浦安市港物流センター」(仮称)の強みは、東京都心部へアクセス良好かつ24時間稼働も問題にしない立地、海コントレーラーも進入できるスロープ、汎用性の高さ、これに加えて雇用確保にも優れている点だ。浦安鉄鋼団地の中にある開発地を実際に訪れてみると、開発地に面する道路は広々としており、鋼材を積んだ大型トラックが行き交っていた。

新井専務によると、「開発地は鉄鋼団地内にあるため、周囲の事業者は騒音や大型車両に抵抗がなく、24時間稼働でもまったく問題ない」という。

■浦安エリアの強みとは

同センターが位置する浦安エリアは、東京都心部まで30分の優れたアクセスを持ち、駅周辺には住宅地と巨大マンション群が立ち並ぶ。雇用を確保しやすい立地ながら、東京港・羽田空港まで30分、川崎港・横浜港・成田空港まで60分以内と、主要物流インフラの中間に位置しているのが強みだ。加えて、路線便の拠点が多い江東エリアに隣接しているのも物流施設にとっては大きな強みといえる。

浦安エリアの物流施設は、こうした立地の強みを背景に、食品・アパレル・家電などの配送拠点として使用されており、医薬品流通やEC物流拠点としての需要も大きい。周辺の物流施設はいずれも満床状態だ。そして、その需要の大きさを表すように、開発地の向かいにはアライプロバンスに続いて新たな物流施設が建設され始めている。

■なぜ鉄鋼団地内に物流施設が建設されなかったのか

▲旧・新井鉄工所浦安工場

これほど需要の大きい立地でありながら、開発地がある浦安鉄鋼団地では今まで物流施設が建設されてこなかった。なぜなのか。鉄鋼は、古くから日本の経済成長を支えてきた産業で、これまで十分な利益を生み出していたため、景気の陰りがみえても土地の売却や業態転換を決意するまでには至ってなかったのがその理由だという。

しかし、鉄鋼団地内ではないものの、最近になって開発地周辺で物流施設の建設が始まった。新井専務は「時代のニーズに合わせた大胆な変革が必要であり、この地で物流のラストワンマイルの一翼を担うことが大きな社会貢献だと考える。この施設建設で、鉄鋼団地のイメージは変わるだろう」と話す。

■雇用は確保できるか

▲新浦安駅前は大型商業施設が複数あり、多くの人で賑わう

最寄り駅のJR新浦安駅から「浦安市港物流センター」(仮称)に向かうバスは、通勤時間帯に施設の目の前まで5本、徒歩9分のバス停まで10分に1本の間隔で運行されている。

徒歩9分のバス停から現地を訪れてみたが、真夏でも気になる距離ではなかった。施設の目の前のバス停は、21年1月に「アライプロバンス」と名称変更する予定だ。

鉄鋼団地の内と外は、大通りを隔てて明確に区分けされており、通りを挟んだ向こう側にはマンション群が立ち並ぶ。周囲は今も住宅開発が進められており、JR沿線からの雇用だけでなく、近隣からの雇用も見込める。

▲新浦安駅から鉄鋼団地に向かう途中には、多くのマンション群が立ち並び、今も宅地開発が進められている

■スロープ型を選択した理由

設備はどうか。同センターの特徴の1つとして、スロープ型であることが挙げられる。新井専務は、この形を選択した理由について「浦安エリアはボックス型が多いため、差別化を図るためにスロープ型を選択した」と説明。周辺の物流施設を見て回ったが、たしかに2階以上に直接アクセスできそうな倉庫は見当たらなかった。

同センターのスロープは、途中から建物の内部に入る珍しい形を採用しており、直角の曲がり角があるが、これは「40フィートコンテナを積んだトラックでも曲がれることを検証済み」(新井専務)。スロープは2階に続いており、3階・4階へは貨物用エレベーターと垂直搬送機を使って運び込む。

テナント区画の床荷重は1階が2トン(1平方メートルあたり)、2-4階が1.5トン(同)、トラックバースは40台分用意されており、有効天井高は5.5メートルに設定されている。使い勝手に優れた汎用的な仕様だ。事業継続性対策では72時間の非常用発電設備を備え、屋上には太陽光パネルの設置を検討している。

■機能性と汎用性を追求した理由は

立地や広さだけでも十分魅力的な物流施設であるが、貴重なスペースを割いてまで、機能性と汎用性を追求したのにはアライプロバンスの思いがある。

(新井専務)「やるからには最新式の施設を作りたい。外観をスタイリッシュに仕上げ、働きがいのある施設にする。一方で、施設前のバス停には雨風をしのげる待合スペースを設置し、植栽を多く配置して従業員の心を癒やすなど、ここで働く人たちが長く快適に勤められるよう、できる限りのことをしたい。また、テナント企業にとって最良のパートナーとなるよう、機能面でも改善できることはどんどん取り入れていく」

▲アライプロバンスの新井専務(中央)、田草川取締役(中央左)と建設関係者

同社は、旧浦安工場跡地に続き、東京・東葛西の旧江戸川工場跡地(1万7000坪)でも物流施設開発を検討中だ。新井専務は、「オーナー企業ならではの決断の早さを生かし、きめ細やかで行き届いた不動産開発を追求していく」と未来像を語っている。

▲旧江戸川工場跡地

浦安市港物流センター(仮称)の概要
所在地:千葉県浦安市港69番
交通:首都高湾岸線浦安上り出入口から3キロ、下り出入口から3.7キロ、JR京葉線新浦安駅から3キロ、舞浜駅から3.5キロ、東京ベイシティバスみなと第一バス停前
敷地面積:1万4878.49平方メートル(4500.74坪)
延床面積:3万4567.21平方メートル(1万456.58坪)
用途地域:準工業地域
着工:2020年7月
竣工:2021年10月末
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