話題再配達率の低減は、深刻化する配達労働力の不足と配達コスト抑止の両面で、最重要かつ喫緊の課題だ。ラストワンマイルと称される個配の最終場面では、置き配をはじめとする多くの工夫や努力が施されてきたが、得られた結果はまだ十分でないという感が強い。(企画編集委員・永田利紀)
国土交通省が発表した10月の再配達率とその要因分析から察するに、配達の最終場面への注力だけでは、再配率低下のグラフもやがて底打ちのような限界に直面するのではないだろうか。

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EC事業者の販売サイトに共通するのは、注文時の煩雑さを回避する工夫だ。それは購入意欲をなえさせないために重要な要素であるし、名だたる大手サイトではカート入れから決済完了までの一連の行為が非常に簡易・スムーズであることが常だ。
しかし、その「スムーズさ」に再配達の種がまかれている可能性は否めない。 もっとも芽が出やすいのは「配達日時の指定なし」という購入時の選択肢か、「配達日時の指定不可」という購入条件だ。
なぜこのふたつが再配達の種になるのか。筆者の考察は以下の通りだ。
(1)購入者がサイトから「商品の発送通知」を受け取るか、個人アカウントをこまめにチェックし、配達状況の動きをいちいち確認しなければ、配送業者の都合で配達日時が組まれてしまう
(2)個配事業者によって多少の差異はあるが、送状の伝票番号が発行され、追跡画面に情報掲示されないと、購入者(受領者)側で日時指定できない
(3)多くの購入者は(1)(2)の事務手続きを知っていても、ウェブや電話でこまめに指定や修正の手続きをしない
(4)不在を防ぐ手続きをしない購入者は「不在通知を受け取ってから再配達の手続きをすれば支障ないから」と思っている
(5)購入サイト側で再配達防止についての「お願い」や「婉曲表現の注意」を掲示しているものの、購買に水を差しかねない「警告」や「順守条件」までを「再配達防止のために」という文言で謳うことはない
(6)再配達削減について、ニュースや世間話では問題意識をもって理解納得しているのだが、自分事となると無意識に近いまま購買完結する
販売者は不在再配達削減の必要性を理解していても、購入意欲減衰の可能性をわずかでもはらむ要素は排除するに違いないし、それは当然の動向だ。ならば、購買時の「手続き完了」前に、配送手配の項目で別角度からの仕掛けが必要となる。その一案として、行政が社会的命題として掲げる「配達ポリシー」に事業者が準拠するという構図はどうだろう。
「御上のお達しゆえ、ご理解とご協力を」と責任転嫁できる環境を作ることで、事業者は今以上に購買者への協力要請がしやすくなるし、購買者も立ち止まって「より確実な受取方法と日時の指定」を一考する余地が生まれるのではないだろうか。意見や指摘の種々はあろうが、まずは試してみる価値ありと推す次第だ。