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労務順法の道険しく/解説

2021年2月19日 (金)

ロジスティクス最低賃金は今後も上がり続けるだろう。

雇用は正規・非正規の区別がどんどん薄れ、労働に応じた対価を給与と呼ぶようになる。社会保険運用基準も大幅に改変されたが、まだ修正はありそうだ。正社員と同水準までは至らない賞与支給や、福利厚生の適用範囲もやはり増加拡大しての運用義務が強化されると予想している。「労働」「就業」「雇用」という定義が根底から変わるような気がしてならない。

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年功の序列は一定程度考慮されるが、年齢の序列は完全に廃れる。最低賃金は上昇するが、平均賃金は下落の一途。ほとんどの労働者が「そこそこ」「平凡だが平穏」「個人の時間を楽しむ」「可処分所得は増えないが可処分時間は増えた」ような暮らしを良しとする社会の到来が視える気がする。

労働環境の見通しについて、日本が最も参考にしなければならないのはヨーロッパ、特にイギリス、オランダ、多少ずれる点があるにしてもドイツであると思っている。いずれの国も日本と共通する要素がたくさんある。大きな流れを俯瞰すれば、経済は鈍化もしくは維持、退化、切り捨てを試行錯誤しながら今に至った。

もはや政策や外交では自国の市場を活性化することなど不可能だと気付き、目を逸らさずに現実を認めて、老成を第一義に経済を動かしている。それらの国々の労働環境と労務基準は非常に興味深く、参考とすべき点が多い。

ゼロ、違法時間外労働で子会社書類送検

特に物流のような現業については素晴らしい工夫と知恵が随所に見受けられる。決して後ろ向きではなく、与えられた条件の中で得られる最大限の工夫と自由。われわれ日本人は謙虚に素直に学ばなければならないと痛感する。

労務問題から逃げてはならない。1人当たりの人件費を上昇させない努力もほどほどに。経営者、経営層には是非ご考慮願いたい。「ジタバタせずに覚悟しなはれ。貴社だけが損するわけではないのですよ」と声を大にして言う。

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では具体的にどう対処すればよいのだろうか。時間単価を抑えるのではなく、延べ人員の総数、つまり総労働時間を減らす工夫をすることが最優先だ。10人で残業含めて2000時間の労働総量を、1800時間に減らすような仕組みを構築することが健全な方策。時給を10円やら20円削るのにあくせくするなんてやめてほしい。むしろ厚遇するべきである。

矛盾するようだが、その場合は10円とか20円で大丈夫。厚遇の本意は金額の大小ではなく「評価の周知」なのだから。考えるべきは「誰を厚遇するのか」だ。そこは現場管理者に熟考してほしい。評価されて喜ばない人は少ないはず。それをうらやましいと感じ、求め目指す人もいるに違いない。

担当作業の約束事が明確でレポートラインが機能しており、管理者は必要な指示や質問のみ。なので、勤務中はひたすらに自身の役割を全うすることだけに専念していればよい。和気あいあいもアットホームも仲間内の親交も現場には「要らんもの」なのだ。人が辞める原因は前述の情緒的な「要らんもの」が、建前やハリボテ的な「職場の雰囲気」というよくわからない理屈に置き換えられ、裏目に出ることが多い。

管理者や責任者が左団扇で涼んでいた時代はとっくの前に終わっている。労務についても他業務同様「できない」は「やらない」と同じだ。(企画編集委員・永田利紀)