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川崎汽船とノキア、船陸間の通信インフラ高度化

2021年3月15日 (月)

ロジスティクス川崎汽船は12日に受領したLNG燃料船「CENTURY HIGHWAY GREEN」に、通常の衛星通信システムに加えてノキアソリューションズ&ネットワークス(東京都港区)の産業用LTEルーターを搭載する。船陸間における十分な通信速度の確保と、高度な暗号化通信の実現を両立することが狙いで、国内外の寄港地でさまざまなデジタル技術を活用し、船内業務を高度化・効率化する。

速度の面で陸上通信に大きく劣る衛星通信に加えて、陸上と同レベルの通信インフラを導入することで、着岸中は従来よりも大容量の通信利用で現場作業や安全管理などを高度化。また、陸上オフィスに設置した通信機器によって、陸側から船内作業や荷役の状況を視認し、支援することにも取り組む。なお、すべてのデータはネットワーク暗号化技術によって保護し、高いレベルのセキュリティを維持するとしている。

川崎汽船、LNG船「CENTURY HIGHWAY GREEN」受領

表裏両面の効果を期待

船陸間の通信インフラの充実がもたらす業務上の効用は説明の要がないところだが、このニュースの裏面にはもう1つの大きな期待が縫い合わされている。それは読者諸氏が一様に胸中に思い巡らせたであろう「これで過度な接岸による不幸な事故が無くなればよい」ということだ。

過去の大きな沿岸部での座礁事故については、その原因特定の有無にかかわらず、常に「通信確保のために陸に接近しすぎたのではないか」という可能性が挙げられる。あってはならぬことだという正論の日陰で、心情的には切って捨てられない何かが残る。

家族や友人と離れ、長く海上生活で世間から断絶された毎日を過ごす船員のQOL(生活の質)の観点からも、オフタイムの通信は業務を支える非常に重要なインフラとなるはずだ。本記事に続く各社からの発表を期待する。(企画編集委員:永田利紀)