調査・データ東京商工リサーチはこのほど、2021年度の「賃上げアンケート」の調査結果を発表した。それによると、コロナ禍が2年目に入り各業界で厳しい状況が続く中、運輸業者の65.8%(342社中225社)が今年度に賃上げを実施する方針を示していることが分かった。調査は今月の1日から12日にかけて実施した。
同調査では「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義。業種別(全10業種)では製造業が71.9%で最も高く、以下は建設業が67.4%、卸売業が66.9%と続き、最低は不動産業の46.2%だった。
各業種を資本金1億円以上は大企業、1億円未満は中小企業に分類した場合、賃上げを実施する大企業が70%を超えたのは建設業、製造業、卸売業、運輸業の4業種だった。一方、中小企業で70%を超えたのは製造業だけだった。
なお、全業種で8235社から有効回答を得たうち、賃上げを実施する企業は66.0%で、前年度の反動から8.5ポイント増加。しかし「官製春闘」で賃上げ実施率が80%を超えていたコロナ前の水準と比較すると、10ポイント以上低い結果となった。
規模別では、実施する大企業は74.1%、中小企業は64.8%。実施する企業のうち、上げ幅の中央値は大企業で2.0%、中小企業で2.3%だった。ただし、東京商工リサーチによれば、中小企業の中でも賃上げ余力の差が生じており、賃上げに対応できない中小企業は人材獲得で苦戦が避けられず、生産活動に支障をきたす可能性が考えられるという。
■2021年の賃上げ実施状況(全企業)
産業 | 実施する | (構成比) | 実施しない | (構成比) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
農・林・漁・鉱業 | 18社 | 56.25% | 14社 | 43.75% | 32社 |
建設業 | 693社 | 67.41% | 335社 | 32.95% | 1028社 |
製造業 | 1778社 | 71.95% | 693社 | 28.05% | 2471社 |
卸売業 | 1204社 | 66.93% | 595社 | 33.07% | 1799社 |
小売業 | 251社 | 61.52% | 157社 | 33.48% | 408社 |
金融・保険業 | 31社 | 48.44% | 33社 | 51.56% | 64社 |
不動産業 | 81社 | 46.29% | 94社 | 53.71% | 175社 |
運輸業 | 225社 | 65.79% | 117社 | 34.21% | 342社 |
情報通信業 | 329社 | 62.67% | 196社 | 37.33% | 525社 |
サービス業 | 825社 | 69.31% | 566社 | 40.69% | 1391社 |
合計 | 5435社 | - | 2800社 | - | 8235社 |