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JR貨物、山陽線運休区間のトラック代替輸送開始

2021年8月19日 (木)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は19日、先週から西日本を中心に続く大雨により実施している山陽線の新南陽駅-北九州貨物ターミナル駅間の運行休止を受け、運休区間のトラック代替輸送を開始した。16日までに運送業界団体などに要請していたもの。

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代替輸送を行う区間は、「広島貨物ターミナル駅(広島市南区)ー北九州貨物ターミナル駅(北九州市門司区)」、「広島貨物ターミナル駅ー福岡貨物ターミナル駅(福岡市東区)」、「新南陽駅(山口県周南市)ー北九州貨物ターミナル駅」、「新南陽駅ー福岡貨物ターミナル駅」、の4区間。

山陽線の運休は、大雨により厚東駅-厚狭駅間の線路の路盤が崩れたことによるもの。復旧には工事を要するため、JR貨物などは16日の時点で「運転再開は10日前後かかる」との見通しを示していたが、今後の天候の推移によってはさらに運休が長期化する可能性もある。

JR貨物によると、今後はトラック運送各社との調整や準備を続け、徐々に代行輸送を増強する方針だ。船舶による代替輸送についても検討する。

JR貨物の貨物輸送をめぐっては、中央線の多治見駅-塩尻駅間においても、複数駅への土砂流入などにより運行を休止。再開までに「相当な期間を要する」としているが、同区間については東海道線など別ルートへの振り替えなどで対応し、代替輸送の予定はないとしている。

トラック運送の力や、非常時の連携について再考する機会に

JR山陽線は西日本における貨物輸送の大動脈として機能しているが、ことし7月にも大雨で線路が冠水して貨物運転を休止するなど、自然災害によるリスクが常に隣り合わせとなっている。また、山陽線が運休した場合に、日本海側の山陰線を代替ルートとすることなども簡単ではない。こうした状況で、地元通運会社を含めた代替輸送が始まったことは、物流インフラの途絶を回避する策として歓迎すべきだ。

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とはいえ、山陽線における貨物輸送が止まってから、連日調整を進めていたJR貨物や通運業者の代替輸送にかかる通運対策会議は、費用負担などをめぐって議論がなかなか進まなかった印象だ。17日には、現地の通運会社が独自にトラックを出して代替輸送を始めるなど、対応の遅さにしびれを切らした自主的な動きもあったという。代替輸送の調整には困難も伴うだろうが、対応ルールを事前に定めるなど、迅速な対応が可能な仕組みづくりの構築が待たれるところだ。

鉄道によるモーダルシフトの動きが進むなかで、山陽線を基軸とした西日本方面の鉄道貨物輸送は依然として盤石とは言えない状態にある。西日本を含めた全国各地で、今後も同様の大雨災害が発生することを想定しておく必要がある。今回の代替輸送は、運送会社にとってはトラック運送の力を改めて示す機会となり、物流業界にとっては非常時の物流維持のための連携について再考する機会になるはずだ。(編集部・行松孝純)