ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

ヤフーとヤマト、梱包しない発送サービスを実験へ

2021年9月30日 (木)

ロジスティクスヤフー(東京都千代田区)とヤマト運輸(東京都中央区)は9月30日、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」向け匿名配送サービス「ヤフネコ!パック」で発送する商品について、梱包しないまま対象のオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」や宅急便センターに持ち込むだけで、ヤマト運輸が梱包を代行し発送を行う実証実験を、10月1日に始めると発表した。

ヤフーとヤマト運輸はこれまで、新しい生活様式に対応したPUDOステーションからの「ヤフネコ!パック」の発送対応や、宅配ボックス開発のフルタイムシステム(東京都千代田区)と連携したマンション内のフルタイムロッカーからの「ヤフネコ!パック」発送など、非対面発送領域の利便性向上に取り組んできた。

(出所:ヤフー、ヤマト運輸)

こうした活動の過程で、「ヤフネコ!パック」で商品を発送するユーザーからは「どう梱包したらいいか分からない」、「梱包資材が手元にない」など、梱包に関する要望があがっており、サービス展開における顧客サービス向上に向けた課題と位置付けていた。

こうした課題を解決する取り組みとして、顧客に対するさらなる利便性向上を図るため、「ヤフネコ!パック」での発送において、商品を梱包しないまま対象のPUDOステーションまたは宅急便センターに持ち込むだけで、ヤマト運輸が梱包を代行し発送する実証実験を行うこととした。

実証実験では、梱包しないまま対象のPUDOステーションまたは宅急便センターに持ち込まれた商品について、ヤマト運輸が梱包して発送手配を完了させる。顧客側は、通常発送時と同じく発送手続きを行う必要がある。PUDOステーションに持ち込む場合は、梱包代行利用料を無料とする。やっ急便センターへの持ち込みの場合は資材費用込みで500円が必要だ。配送料は別途必要となる。クール(冷蔵・冷凍品)は対象外だ。

(出所:ヤフー、ヤマト運輸)

実施期間は10月1日から11月1日まで。宅急便センターへの持ち込みの場合は、各センターの営業時間終了まで。実証実験の対象となる拠点は、PUDOステーションの「東京メトロ東西線茅場町駅」「東京メトロ半蔵門線清澄白河駅」「クロネコスタンド豊洲4丁目センター」「ヤマト運輸甘酒横丁センター」の計4か所と、宅急便センターの「ヤマト運輸阿佐ヶ谷パールセンター」「ヤマト運輸三鷹下連雀3丁目センター」の計2か所。

宅配業界の常識を覆す革新的なサービスになるか

商品を梱包せずそのまま発送する時代が、本当にやってくるのだろうか。ヤフーとヤマト運輸が10月1日に始める、梱包代行による発送サービスの実証実験は、非対面での個人間取引の「究極」の姿を強くイメージさせる。

EC(電子商取引)サイトによる購買をはじめとする消費スタイルの多様化が進んでいた矢先に広がった、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「新しい生活様式」は、非対面での荷物の配送サービスへのニーズを急速に高めている。ヤマト運輸は、人手不足に悩みながらも梱包代行という新たな業務を引き受けることで、新しい物流ニーズを先取りする道を選択しようとしている。

とはいえ、発想を変えれば、梱包資材の共有化による有効な資源活用など、新しいビジネスモデルの構築につなげる好機であるとも言える。そもそも梱包は商品を届けるために必要な手段なのであって、サービス利用者も箱を調達する手間を省ける利便性も享受できるほか、環境意識の機運を高める機会になるかもしれない。

コロナ禍による生活様式のパラダイムシフトが起きなければ、こうした発送の転換を促すチャンスもなかっただろう。ヤマト運輸が宅急便という画期的なサービスを開発して以来の、宅配業界の常識を根底から覆す「究極」の発送サービスが定着する可能性を秘めた取り組みが始まる。今後の動向に注目だ。(編集部・清水直樹)