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JR貨物、バイオ燃料を貨物駅の構内輸送車両に導入

2021年10月13日 (水)

▲越谷貨物ターミナル駅で使用される次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」(出所:JR貨物)

環境・CSR日本貨物鉄道(JR貨物)とユーグレナは13日、JR貨物の越谷貨物ターミナル駅(埼玉県越谷市)構内でのコンテナ移送業務において、ユーグレナ製の次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」の使用を開始したと発表した。

JR貨物は、脱炭素化に向けた取り組みとしてトラックに代わるモーダルシフトを推進しており、今回のバイオ燃料の導入もその一環。貨物輸送事業者の間で、環境対応燃料の導入による排出ガス削減の動きが広がってきた。

サステオは、ユーグレナが使用済み食用油と微細藻類のユーグレナを原料とした燃料。燃焼段階ではCO2を排出するが、原料となる使用済み食用油の原材料である植物とユーグレナも成長過程で光合成によりCO2を吸収することから、実質的にCO2の排出が相殺される。政府が2050年までの実現を宣言するカーボンニュートラルの達成にも貢献することから、JR貨物が導入を決めた。

JR貨物は、まずは越谷貨物ターミナル駅構内でコンテナを移送するトラックの燃料として導入。今後はフォークリフトや機関車の燃料としても使用するほか、JR貨物のほかの貨物駅にも広げる方向で検討する。

鉄道輸送の本来の役割を忘れるな

JR貨物が、ユーグレナ製の次世代バイオディーゼル燃料を貨物駅の構内業務用に導入する。JR貨物は、モーダルシフトへの対応など「環境にやさしい鉄道輸送」を旗印に鉄道貨物輸送の復権に向けた取り組みを加速している。まさに脱炭素化の機運を追い風に疾走し始めた感があるが、今回の取り組みはこうした活動をさらに強く社会に印象付ける狙いもありそうだ。

(イメージ)

鉄道貨物は、定時性や大量輸送に適した陸上輸送モードの代表格として君臨してきたものの、戦後のモータリゼーションの波が貨物輸送の世界にも押し寄せ退潮した。高速道路網の整備が決定的な打撃となったかに見えたが、環境負荷低減の動きが広がり始めると、一転して順風となった。ちょうど、トラックドライバーの厳しい就労環境がクローズアップされ健康状態に起因する事故が相次いだことも、鉄道貨物の有効性を見直す契機となった。

しかし、ここで忘れてはならないのは、あくまで鉄道輸送の強みは、輸送の安定性にあるということだ。機動力では到底勝てないトラック輸送に対して、労務環境の観点からも高い定時性と安定性で勝負すべきではないか。

モーダルシフトは輸送モード全体における役割分担の話であり、鉄道輸送そのものの復権を約束するものではない。疲弊する地方の鉄道網への対応などを含めた、鉄道輸送を軸とした輸送体系のあり方について、官民でぜひ実行的な議論を進めてほしい。こうした論議のなかで、鉄道輸送の環境面での優位性が語られるのが筋ではないかと考えるのだが、どうだろうか。(編集部・清水直樹)