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政府が国家備蓄石油を放出、物流コスト圧縮なるか

2021年11月24日 (水)

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行政・団体日本政府は24日、石油の国家備蓄の一部を放出することを決定した。原油価格の高騰が国民生活や物流など産業界の事業運営に影響を与えていることを考慮し、供給量を一時的に増やして価格を下げる狙いがある。しかし、有事を想定した備蓄石油の放出量は限定的で、価格下落効果をどこまで示せるかは不透明だ。

岸田文雄首相が24日午前に発表した。米バイデン政権は23日、5000万バレルの石油備蓄を放出する意向を表明。日本政府もバイデン政権の協調要請を受けて、国内にある石油の国家備蓄の一部を市場に放出することを決めた。中国や韓国、インドなども同調する方針だ。

日本政府は、まずは数日分を放出して市場動向を分析。状況に応じて、追加放出も検討する方針だ。国家備蓄の石油の放出は初めてとなる。

国内における備蓄石油の放出については、ガソリンなどの供給不足や緊急時に限定することが法律で定められており、価格高騰への対応策としては想定していない。しかし、国内における石油需要は年々右肩下がりで推移。「余剰分」の石油であれば、法律に抵触しない形での放出は可能と判断したとみられる。

官民で歩調合わせて原油高という「外圧」に対応を

燃料価格の推移に気をもむ物流業界にとって、少しは安堵できる事態になるだろうか。米政権に協調する形で、日本政府が国家備蓄石油の放出を決断した。岸田文雄政権が最初に直面した経済政策とも言える今回の備蓄放出は、市場にどんなプラス影響を与えるのか。社会に不可欠なインフラとして認知されている物流へのダメージ緩和にも直結するだけに、業界は固唾を呑んで今後の動向を見守る。

物流業界では、新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞からの回復で物量が急増し、未曾有の好業績にわき立つ企業が、海運を中心に目立つ。各社が10月下旬から順次発表している2022年3月期第2四半期累計決算でも、通期業績の上方修正が相次いでいる。盛り上がる市況に隠れているが、各社は原油価格高騰によるコスト増を見据えた経費圧縮の動きを着実に進めている。

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米政権がいち早く原油高騰への対応策を打ち出したのは、バイデン政権が経済面での有効な政策を実行することで、米国の求心力を強める狙いがあるとみられる。日本をはじめとする各国も協調することで、産油国へのけん制と受け止める向きもあるだろう。

いずれにせよ、米政権に国際協調路線が戻ったことで、世界レベルでの原油価格安定化への動きが始まる。世界にネットワークを張りめぐらす物流業界にとって、まずはホッと一息入れる効果はあるかもしれない。もちろん、各企業や業界の自助努力が前提ではあるが、物流企業の収益の安定はサプライチェーンの維持にも直結するだけに、官民で知恵を出し合って原油高という外圧を乗り切りたい。(編集部・清水直樹)