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カシオ・東芝テック共催セミナーレポート

モノの数え方を変える、ハンディ×RFIDの可能性

2022年2月17日 (木)

話題あなたは、ハンディーターミナルを「モノを数えるためだけ」に使っていないだろうか。もちろん、ハンディーターミナルの最大の利用目的は、「モノを数える」ことにある。しかし、最新のハンディーターミナルは、各種ソリューション、とりわけRFIDを組み合わせることで、強烈な生産性向上や省力化を実現することができる。

2月9日にカシオ計算機と東芝テックが共催した「RFID・音声・文字認識技術活用によるサプライチェーン業務改善セミナー」では、最新のハンディーターミナルとRFIDの活用事例がふんだんに紹介された。本稿では、セミナーを聴講した筆者が、「強烈な生産性向上と省力化」を実感したポイントを抽出して紹介する。(坂田良平)

2022年、ハンディーターミナル活用の新章幕開けとなるか

ハンディーターミナルの国内向け出荷実績のグラフを見て分かるとおり、2018年度と20年度に大きな落ち込みがある。20年度の落ち込みは、新型コロナウイルスによるものと考えられるが、18年度の落ち込みは何故だろうか。

ハンディーターミナルの国内向け出荷実績(2021年以降は予測値)出所:「端末装置に関する調査報告書」金融端末専門委員会、流通POS端末専門委員会、ハンディターミナル専門委員会編著

この背景には、WindowsCEの終了と、スマートフォンの台頭があったとみられる。これまでハンディーターミナルのOSとして広く活用されてきたWindowsCEだが、最終バージョンであるWindows Embedded Compact7の延長サポートは、21年4月13日に終了した。

次なるハンディーターミナルの主力OSとなりつつあるのが、Androidである。そこで多くの既存ユーザーは、「WindowsCEがなくなるんだったら、スマートフォンを使えば良いじゃないか」と考えた。

実際にAndroidやiPhoneをハンディーターミナルとして活用できるソリューションも、世の中には多数存在する。そのため、18年度のハンディーターミナル出荷実績は落ち込んだと推測される。

だが、ここに落とし穴があった。実際にスマートフォンを業務用ハンディーターミナル機器の代替として使い始めたユーザーから、不満の声が上がっているのだ。

▲カシオ計算機・国内営業統轄部システム法人営業部の渡辺洋氏

「不満の理由は3つあります。ハードな使い方をされる現場では、耐久性に難があること。長時間使用されるため、バッテリー容量が足りないこと。そして、業務で使うことを考えると、保守修理体制が不十分であることです」

カシオ計算機・国内営業統轄部システム法人営業部の渡辺洋氏は、このように説明する。

ハンディーターミナルの減価償却期間は、一般的に5年間だが、最近では7、8年は使い続けたいと考えるユーザーも少なくない。そのためには、充実した保守修理体制が必要になるが、毎年新モデルが発売されるスマートフォンでは、旧モデルを修理するためのパーツストックが少ない。2、3年前に発売された端末が壊れても、「新機種に買い替えませんか」と、やんわりと修理を断られることもある。

一般消費者をメインターゲットとしているスマートフォンと業務用端末とでは、そもそもビジネスモデルが根本的に違うのだから、これは致し方ない部分もあるだろう。だからこそ、一旦は落ち込んだハンディーターミナル市場が、21年度以降、堅調に拡大へと転じると見込まれているのである。

そしてもう1つ、ハンディーターミナル市場拡大の理由がある。「モノを数える」だけに留まらない、現場の生産性向上や省力化を実現する新たなハンディーターミナルと、その周辺ソリューションの登場である。

さらなる進化を遂げた、カシオ計算機のハンディーターミナル

カシオ計算機は、1985年以来、36年間にわたりハンディーターミナルを開発製造し、ハンディーターミナルの活用を世に提案してきた。先に紹介したセミナーでは、AndroidをOSとする最新の3機種が紹介された。

カシオ計算機は、4年前から「カシオとともに」という想いを込めたコンセプト「withC」を掲げている。「withC」というコンセプトを掲げた背景には、「『モノを数える』というハンディーターミナルの原点から、より拡張した機能を求めるユーザーニーズがある」と、渡辺氏は説明する。

そのためカシオ計算機では、(1)音声認識(2)画像認識(3)センサー連携(4)AI・データ活用――という4つのテクノロジーを活用し、「問題解決提案の実践」「共創による新しい分野への挑戦」「新しい価値の発想」を実現する、ハードウェアとソリューションの両輪で提案を行う。

セミナーでは、興味深い事例がいくつも紹介された。その1つである音声認識ソリューションについて紹介しよう。

これまでも、ボイスピッキングシステムのような音声ソリューションは注目されてきた。伝票のチェックや商品の出し入れを頻繁に行う倉庫内作業において、両手が自由に使える音声ソリューションの優位性は間違いない。だが、従来のソリューションは、専用機器、専用システムを必要とするケースが多かった。

▲ペンダントタイプのウェアラブルマイクとハンディーターミナルを連携

カシオ計算機が提案する音声ソリューションは、ハンディーターミナルにインストールした音声認識ソフト「AmiVoice」(アミボイス)とウェアラブルマイクを用いる。ハンディーターミナルに倉庫内作業で利用するソリューションを一元化できるのは、コスト面、機器の保守管理面など、メリットが大きい。カシオ計算機によれば、ハンディーターミナルに音声ソリューションを組み合わせることで、20~30%の作業効率化を実現できるという。

ハンディーターミナルをトランシーバーとして使うアイデアも興味深い。「buddycom」(バディコム)というサービスを組み合わせる提案だ。

どんなにシステム化、業務の標準化を進めても、突発的なハプニングなどのイレギュラー対応が発生するのは現場の常だ。その時、円滑なコミュニケーションが進められるかどうかで、対応スピードは大きく変わってくる。

buddycomは、音声、テキストの双方に対応可能な、リアルタイム翻訳サービスである。これを活用すれば、日本語が不得手な外国人作業員とも円滑なコミュニケーションを実現できる。人手不足が深刻化する今だからこそ、大きな効力を発揮するだろう。

「モノの数え方を変える」、RFIDはハンディーの使い方を一変する

▲東芝テック・SCMソリューション商品部の古内博氏

「物流の現場は、煩雑な業務を強いられており、さらなる正確性とスピード性を求められています」──東芝テック・SCMソリューション商品部の古内博氏は語る。だからこそ、ハンディーターミナルにRFIDを組み合わせる使い方に注目が集まるのであろう。

20年前からRFIDを手掛けてきた東芝テックが提供する「UF-3000」は、文庫本ほどのサイズに、取外し可能なグリップが付いた形状をしている。そのため、据え置き、三脚を用いた簡易ゲート、自撮り棒を使った高所の読み取りなど、多彩な使い方を実現する。もちろん、カシオ計算機のハンディーターミナルを接続した使い方も可能だ。

最大の特徴は、圧倒的な読み取り性能にある。毎秒800個の高速読み取りと、約9メートルの長距離読み取りが可能という。東芝テックの従来品に比べ、読み取りスピードが2倍以上に引き上げられた。

▲「UF-3000」の多彩な使用例

東芝テックでは、RFIDと既存のWMSなどをつなぐ、RFIDサーバ・サーバアプリを含むソリューション「RFLogispert」(アールエフロジスパート)を提供している。既存のシステム資産を無駄にすることなく、RFIDという新たな武器を享受できるメリットは大きい。

RFIDで野積みの木材管理を効率化

東芝テックからは、RFIDを用いて業務改善を実現した複数の事例が紹介された。

筆者が関心を持ったのは、木材の管理にRFIDを利用した事例である。広大な敷地の野積倉庫に保管された木材に、耐候性能を備えたRFIDを貼り付けることで、先入れ先出し管理を実現。棚卸の作業工数を軽減し、求める木材を探す手間を大幅に改善したという。

木材ではないが、筆者は野積倉庫に保管された建築資材の現場を視察したことがある。野積倉庫の場合、どうしても敷地が広大になりがちで、ロケーション管理が作業員の素養に属人化しがちだ。下のものを出荷するときは、必ず上のものをどかす。つまり、貨物の山が常に微妙に移動し続けることも悩ましい。私が視察したときには、出荷する建築資材を探し、ベテランの作業員が広大な野積み倉庫を右往左往していた。

RFIDの探索機能を用いれば、こんな苦労も過去のものとなるだろう。

新たな活用方法を求めるうえで必要なこと

「モノを数えるためだけ」に使ってきたハンディーターミナルかもしれないが、現在のハンディーターミナルには、生産性向上や省力化につながるさまざまな関連ソリューションやハードなどの選択肢が用意されている。その最たるものが、RFIDであろう。

だが、選択肢の多さゆえに、ユーザーは選択することに迷ってしまう。選択肢を間違えれば、求める生産性向上や省力化が果たせず、弊害を生むこともある。前述したスマートフォンのハンディーターミナル活用は、その一例であろう。

「RFIDをうまく活用するためには、ハード、ソフト、そしてタグという3つの相性がとても大事です。どれか一つがマッチしなくても、ユーザーの満足度は下がってしまいますから」と、古内氏は説明する。だからこそ、東芝テックは、カシオ計算機を始めとする協業パートナーとの取り組みを進め、ユーザーにとって安心できる選択肢をソリューションとして提案するのだ。

WindowsCEのサポート終了によって、否応なしにハンディーターミナルの切り替えを求められるユーザーも、ハンディーターミナルを用いてさらなる業務改善も求めるユーザーも、一度、カシオ計算機と東芝テックに相談してはいかがだろうか。両社の取り組みは、本稿で紹介しきれなかったさまざまな事例を生んでいる。きっと、あなたにも参考になる情報があるはずだ。

▲「TEC UX Lab」ではRFIDソリューションの見学だけでなく、取扱商品を持ち込んで検証することもできる

また、東芝テックが設けたRFIDショールーム&ラボ「TEC UX Lab」は、RFIDの採用を検討する人にとっては大きな味方となる。単なるデモスペースに留まらず、ユーザーの利用シーンを想定し、RFIDのデモンストレーションを受けることができるのだ。

「モノを数えるため」に進化発展を遂げたハンディーターミナルだが、その可能性は大きく広がっている。そんな実感を得ることができたオンラインセミナーであった。

カシオ計算機のハンディーターミナル
東芝テックのRFIDハンドリーダー「UF-3000」

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