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メーカー・卸の基幹システムに最適な「ミニマム」発想の「Gakken i3 Handy」

真の「最適化」示す学研ロジスティクスのハンディー

2022年2月25日 (金)

話題物流倉庫で出荷時の検品を担当する女性作業員が手にしているのは、ハンディーターミナルだ。商品の外装に貼られたシールにハンディーターミナルをかざしてコードを読み取る作業を、手際よく進めていく。数年前までは箱のシールとピッキングリストをにらめっこしながらの作業で苦痛だったが、ハンディーターミナルの導入で作業のスピードが上がり、ストレスも大幅に軽減できたという。

出荷検品は、出荷先別に仕分けられた商品の品名や品番、数量などが指示通りにピッキングされていることを、ピッキングリストと照らし合わせて確認する作業だ。ここでミスや遅滞が発生すれば、商品の輸送網全体に及ぼすマイナス影響は大きく、生産性が大きく下がってしまうのだ。それだけに物流倉庫の現場作業のなかでも、特に迅速かつ慎重な手際が求められる「最後の砦(とりで)」の役割を担うプロセスだ。

この女性作業員が手にしているハンディーターミナル、学習参考書で知られる学研グループの物流を担う学研ロジスティクス(東京都品川区)が独自に開発し、外部に販売しているものだ。物流事業者がハンディーターミナルにビジネス機会を見い出したのはなぜか。そこには、現場の事情を熟知した物流のプロフェッショナルが描く、「現場で使いやすいデジタル化」への強いこだわりがあった。

「ネットワーク不要」の先進機器

「ネットワークが不要なんです」。オフラインで場所を選ばずに使用できる利便性が「Gakken i3 Handy」の特徴だ。学研ロジスティクスの乙訓公雄・システム部長は、ピッキングリストなど紙に印刷された二次元コードをハンディーターミナルで読み取ることで、ネットワーク環境がなくても出荷検品作業を効率化できるメリットを強調する。

▲学研ロジスティクスの乙訓公雄・システム部長

そもそも、ネットワーク下でなくてもハンディーターミナルを使えるメリットは何か。ここで乙訓氏は、「波動への対応」「ミニマムでの拡張」の2点を挙げる。

オフラインだから実現できる、波動対応を想定した高い機動力

サプライチェーンの中軸を担う物流倉庫は、その物量によって業務の繁閑の差が非常に大きい。作業員が何人いても足りないこともあれば、その日の業務の大半を清掃で終えるケースもある。さらに、近年の急速なEC(電子商取引)サービスの普及などによる消費スタイルの多様化で、繁忙期と閑散期の従来のサイクルに変化が生じており、いわゆる「波動対応」が現場の課題になっているのだ。

物流事業者や荷主企業の間では、急な物量増による処理能力の確保に対応するため、新倉庫を急きょ賃借して入出荷と在庫機能を増強する動きが広がっている。「ネットワークに依存した倉庫の場合、こうした『臨時』の倉庫で出荷検品などの作業を行うには、事前にシステムを整備する時間が必要になります。Gakken i3 Handyは、こうした新しい環境でもすぐに作業に入れる利便性が強みなのです」(乙訓氏)

もともと、学研ロジスティクスがネットワーク不要なオフライン方式のハンディーターミナルの開発を始めたのは、取引先のエンターテインメント関連会社によるアーティストグッズ配送業務の効率化について相談を受けたことがきっかけだった。オンラインシステム全盛の今だからこそ、「失われた便利さ」にビジネス機会を見い出した学研ロジスティクスの着眼は、着実に顧客層の開拓に直結しているという。

ネットワークに依存せず、現在の作業環境を変えることなく業務の精度向上を実現する。持ち運び可能なオフラインのハンディーターミナルだからこそ可能な物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の姿を、学研ロジスティクスは提示している。

「ミニマム」の発想で現場最適化を提案

現場業務の効率化を図るため、先進システムを導入したい。でも先行コストがどうしても気になる。コストパフォーマンスも、実際に稼働させるまでは正確につかめない。それが物流DX化の進まない一つの要因だ。まずは「ミニマム(最小限)でシステム導入を進める方法」の提案。現場は、本音ではそれを求めているのだ。

乙訓氏ら学研ロジスティクスのハンディーターミナル開発メンバーの着眼もそこにあった。「物流現場の業務効率化を対象とした多機能なネットワークシステムが物流DX化の機運の高まりとともに注目されるなかで、現場が必要としているスペックを満たす範囲内での高機能化を提案できれば、低コストで業務改善を実現できるのではないか。そこにGakken i3 Handyの存在意義を見い出せると考えたのです」

▲オフライン環境での検品データ連携が可能

乙訓氏は、検品データを二次元コードに格納することで、ハンディーターミナルによる業務効率化を図れると考えたのだ。オフラインならばパソコンの増設やネットワーク設備の拡張も不要。まさにミニマムな投資によるDX化の実現につなげている。

入荷・棚卸しにおける「検数」機能を追加し顧客層を拡大

オフラインのハンディーターミナルという新発想で、独自の物流DX化を提案する学研ロジスティクス。出荷検品に特化した機器として社内のIT部門で開発したGakken i3 Handyは、外部にも販売を始めたことでその名が知られるようになった。そこで顧客の新たなニーズを反映した新機能が、入荷・棚卸し管理だ。

指示に従ってミスなく確実に商品の数や種類をチェックする出荷検品に加えて、目の前にある商品の数を把握する「検数」の正確さが求められる入荷・棚卸し管理。返品対応も含めて、正確な計数機能は物流倉庫における必要不可欠な業務の最たるものだ。「入荷・棚卸し管理機能を付加したことで、より現場の業務改善ニーズに適したハンディーターミナルを提供できるようになりました」。乙訓氏は手応えを感じている。

さらに、Bluetooth(ブルートゥース)でプリンターなどにデータを共有することでラベルを出力できる機能も付与。そもそも、Gakken i3 Handyはオフライン下での現場業務の精度向上を図る一方で、集めたデータをネットワークでパソコンなどと共有する仕組みを備えている。オフラインで使える機能は、あくまでネットワークシステムよりも効率的に業務を進められる手法を提示するための手段であると考えるべきなのだろう。

▲出荷検品をはじめとする、Gakken i3 Handyの機能

Gakken i3 Handyに注目するメーカーと卸企業

出荷検品を主な業務改善の対象に位置付けて、3PL事業者を主要ターゲットにしてきたGakken i3 Handyだが、近年は風向きが変わってきているという。「3PL事業者に加えて、メーカーや卸企業からの引き合いが強くなっているのです」。乙訓氏はその理由について、まさに先進システムが見逃している「隙間」に位置するターゲットへのGakken i3 Handyの機能がうまく符合しているためとみている。

メーカーや卸は物流事業者ではないため、こうした企業の基幹システムには、当然ながら出荷検品の機能は搭載されていないのが通例だ。一方で、いわゆる物流DX化を象徴するIT企業が手がけるWMS(倉庫管理システム)などの先進システムは、現場効率化を目的としているだけに機能は充実しているものの導入コストや準備作業の負担が大きく、いわゆる「過剰品質」であるケースも少なくない。業務効率化を図るためにオーバースペックなシステムを導入するとは、まさに本末転倒と言うべきだろう。

ここで説得力を持つのが、学研ロジスティクスのこだわる「ミニマム」の発想だ。これはメーカーの出荷検品の例だが、出荷したい商品が確実に社内から調達できるのであれば、デジタル出荷検品に必要な「出荷指示データ」を出力するシステムは、必ずしもWMSである必要はない。生産・販売・受注管理システムなどが出力する出荷指示データであっても、Gakken i3 Handyであればデジタル検品作業が成立するのだ。

■二次元コード(QRコード)の検品から送り状出力までのフロー動画

機能だけでなくコストや使い勝手を総合的に判断しながら現場の効率化ニーズの本質を見定めたうえで、出荷検品や入荷・棚卸し管理の効率化の「最適解」としてハンディーターミナルを提案する。その成果が、Gakken i3 Handyの市場展開につながっているのだ。

物流現場における「真」の最適化を提示する学研ロジスティクス

「新しい生活様式」の時代を迎えて、物流現場はさらなる物量増に備えた対応を迫られている。一方で、それぞれの現場には最適な業務プロセスが存在しており、必ずしも先進システムの導入が最適な作業空間を創出するとは限らない。そこに物流DX化の限界がある。

学研ロジスティクスの取り組みは、物流DX化のあり方を考えるうえで不可欠な「現場における『真』の最適化」の方法を提示している意味で、今後の可能性を強く印象付けるものであると言えないだろうか。「ハイスペック」か「ジャストスペック」か。ニーズの深淵(しんえん)を見い出すのは、独創的な発想と的確な市場動向分析、さらに徹底した真の顧客ニーズの掌握だ。Gakken i3 Handyは、こうした要素を製品に落とし込んだ画期的なサービスと言えるだろう。

製品情報・問い合わせ
「i3 Edge」製品情報https://i3handy.jp/i3edge_flyer.pdf

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