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使用実績ランキング、トップはキーエンス

ハンディーへの期待は高機能よりも「使いやすさ」

2022年2月15日 (火)

話題LOGISTICS TODAY編集部は、ことし2月7日から13日にかけて物流企業や荷主企業を中心とする読者を対象に、物流センシング(読み取り)機器に関する実態調査(有効回答数432件、回答率15.2%)を実施した。コードなどの情報読み取り機器として広く普及するハンディーターミナルに加えて、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術であるRFIDが近年、高い注目を集めている。物流現場では、こうしたセンシング機器への期待が高まる一方で、使い勝手や導入コスト、作業への適用の可否などについて課題を抱えている実態も浮かんだ。

物流業務の効率化・最適化を促進し、物流サービスの高度化を促すセンシング機器。さらなる普及には現場ニーズのさらなる反映による操作性や機能性、コスト対応力の向上が不可欠であろう。機器を扱う現場にも、扱う荷物の種類や作業工程に適した機器の選択が求められそうだ。

回答者の主な内訳(複数選択)は、物流企業70.4%▽荷主企業21.5%▽その他8.1%だった。ここでは、物流現場におけるハンディーターミナルの普及状況や課題認識、製品満足度について調べた。(編集部特別取材班)

物流現場の7割に浸透するハンディーターミナル

ハンディーターミナルは、データを「リアルタイム」で収集して処理できる「携帯」型の機器だ。この2つの特徴に着目したのが物流現場であり、在庫や入出荷管理、ピッキングから納品や集荷まで幅広く活躍している。物流倉庫の作業者や荷物配送ドライバーにはもはや必携のアイテムとして広く認知されている。

こうした根強いニーズに対応して、メーカーも新機種を相次いで市場に投入している。数十年の歴史を持つ領域であるはずのハンディーターミナルだが、メーカーは未だに最新機種を競うように開発。コードの読み取りやデータ収集にとどまらず、こうして判読・収集した情報の高精度な保管や迅速な転送、指示の送信など新機能の拡張を進めている。

物流現場に不可欠なハンディーターミナルだが、現実にはどの程度普及しているのか。現場におけるハンディーターミナルの使用の有無について聞いたところ、全体の70.4%が「使用している」と回答。過去に利用したことがある場合を含めて、7割超がハンディーターミナルを使用している。物流関連機器のなかでも、相当高い浸透率と言えるだろう。

物流現場はハンディーターミナルにハイスペックを求めていないのか

さらに、現在使用中のハンディーターミナルの満足度と買い替え予定の有無についてたずねた。その結果、「不満があるが買い換える予定はない」が26.9%、次いで「満足しているが、買い換える予定がある」(22.7%)、「満足しており、買い換える予定はない」(19.4%)となった。「不満があるため、買い換える予定がある」はわずか1.2%だった。

使っているハンディーターミナルへの満足度は半数を超えており、不満であるとしても買い換える必要があるほどストレスは高くない――。この回答結果から垣間見えるのは、こうした傾向だ。

ここまで“支持”を得ているハンディーターミナルだが、それは使用者の2つの思惑を意味していないか。一つは現在市場に出回っている機器の現場ニーズとの親和性が高く、もはや成熟した領域に達していること。もう一つが、現場はすでにハンディーターミナルに対して一定の評価水準を示しており、これ以上の進化を望んでいないということだ。

その仮説の是非はいかに。それを解き明かすのが、次の設問だ。ハンディーターミナルの不満点や課題を聞いたところ、「現場環境によって端末の個別設定やカスタマイズが必要になる」(38.4%)をトップに、「過去に導入した機器が足かせとなり、新たな改善のボトルネックになっている」(19.2%)▽「導入・運用開始までの期間が長い」(17.6%)▽「端末のバージョン管理にかかる負担が大きい」(16.7%)▽「端末使用者ごとのスキル差が大きい」(14.4%)――と続いた。

これら上位回答の内容は、機器の機能に対する勝手の悪さや現場の不適応を示している。つまり、ハンディーターミナルに対して現場が求める要素は、「使いやすさ」に集約されるということだ。物流現場に「広く」「深く」浸透している機器だからこそ、すぐに現場の誰もが使える。それがハンディーターミナルに求められる究極のニーズではないか。ここまでの調査結果は、仮設に対する「解」を示していると言えそうだ。

やはり重視するポイントは「精度」と「使いやすさ」

ここまで、物流現場におけるハンディーターミナルの普及度合いや課題についてみてきた。それでは、現場でハンディーターミナルを使用する際に重視している要素は何か。「重視している」「どちらでもない」「重視していない」の3段階で評価を求めた。

「重視している」との回答が多かった要素は、「読み取り精度」(89.1%)▽「ランニングコスト」(84.3%)▽「導入コスト」(75.1%)▽「カスタマイズの容易さ」(62.1%)▽「手厚いサポート体制」(59.7%)▽「読み取り以外の機能の充実」(38.4%)――だった。「重視していない」の割合が高かったのは、「スマートフォンとの連動」(39.9%)が際立って高かった。ちなみにスマートフォンとの連動を「重視している」とした回答率は21%で最下位だった。

ここでも、物流現場の作業従事者は、機能の「精度」とともに「使いやすさ」を重視するポイントに挙げているのだ。スマートフォンとの連動は、機器メーカーがスペックの高さを競う領域の一つであり、ハンディーターミナルで読み取った情報を共有してデータ保管・分析に活用できる機能だ。ところが、今回の調査では重視するポイントから大きく外れている実情が浮かんだ。むしろ、低コストで使いやすく、さらにメーカーのサポートが充実している機種を選択したい現場の思惑が際立つ結果となった。

実績ではキーエンスが独走

最後に、ハンディーターミナルの主な製造メーカーについて、「使用実績」の観点でまとめてみた。

使用実績については、キーエンスがトップで61.1%が回答。続いてデンソーウェーブ(37%)▽カシオ計算機(23.4%)▽フルノシステムズ(14.8%)▽ハネウェル(9.5%)――となった。ハンディーターミナル市場では圧倒的な知名度を誇るキーエンスの独壇場ともいうべき回答結果であるが、電子式卓上計算機(電卓)を基礎に電子デバイス開発につなげたカシオ計算機も、主要プレーヤーとしての地位を確立している。ハンディーターミナルを主要製品群の一角に位置付けるフルノシステムズは、無線と有線の機器を市場に展開。根強い支持を得ている。

新型コロナウイルス禍の収束が未だ見えないなかで、宅配ニーズの高まりをはじめとする消費スタイルの多様化は急速に進んでいる。こうした「新しい生活様式」の時代を迎えて、物流現場の作業風景は大きな変貌を遂げている。こうした状況だからこそ、メーカーの高機能の追求と現場ニーズのギャップが生まれやすい。ハンディーターミナルはまさにその象徴であり、今後の物流現場の変革度合いを示すバロメーターとも言えそうだ。

次回は、物流現場で導入が進んでいるRFIDの普及状況や課題、現場ニーズの方向性に迫る。

■物流センシング特集