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ウクライナ情勢、すでに8割超が「経営に影響」

2022年3月30日 (水)

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調査・データロシア・ウクライナ情勢、すでに8割超で「経営に影響」――。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が30日まとめた、ロシア・ウクライナ情勢によるサプライチェーンマネジメント・物流への影響にかかるアンケートで、こんな結果が出た。「経営へのインパクトがある」との回答が全体の8割超に達したほか、欧州向けビジネスへのダメージや原油価格のさらなる高騰への懸念も強いことがわかった。先行きの見えないロシア・ウクライナ情勢が、サプライチェーンに明確に影を落としている実態が明らかになった。

アンケートは3月18日から25日までの8日間、物流業をはじめとするJILS会員企業900社を対象に、ウェブ形式で実施。12%にあたる105社が回答した。内訳は、製造業55社(52%)▽物流業34社(33%)▽流通業11社(10%)▽その他5社(5%)。

収益など経営におけるロシア・ウクライナ情勢の影響度について、「ある」(39%)▽「大きい」(7%)▽「少ない」(38%)――を合わせた84%が影響を受けていると回答。物流業に絞って回答を調べると、「ある」(44%)▽「少ない」(38%)と――、全体の82%で何らかの影響を受けていることがわかった。

ある物流事業者は「現状で直接的な影響は見受けられないが、今後の見通しは不明」とコメントするなど、事態の推移を見守りながら対応を検討する動きが広がっているようだ。

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国際決済ネットワークシステムである国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)からロシアが排除されていることによる商取引への影響については、「大きい」(3%)▽「ある」(25%)▽「少ない」(31%)――と回答。全体の59%が影響を受けているとした。物流業で影響ありと回答したのは53%だった。具体的な影響については、製品出荷や輸送途中の商品の返却、原材料や原油の高騰、送金ルート確保への懸念が強まっているほか、欧州との取引における輸送リードタイム延長などを指摘する回答もあった。

ロシア現地事業の対応については、39%が活動再開したものの、6%が事業を停止。輸送途上のロシア向け貨物の荷下ろし状況は、「持っていく」は8%にとどまり、「他国で降ろす」が58%と過半数に。「積地に持ち帰る」も33%に達し、「製造拠点に戻して別仕向けに加工し直して販売する」とのコメントもあった。

ロシア・ウクライナ情勢によるサプライチェーンへの影響、輸送網の複線化など平常時の「備え」が教訓に

ロシア・ウクライナ情勢の悪化は、世界のサプライチェーンに具体的な影響を及ぼし始めている。当然ながら、国内の海運をはじめとする物流事業者も例外ではなく、欧州ビジネス全体への影響が深刻化する可能性も否定できない事態となっている。

ロシアとウクライナは、穀物や原油などの輸入先として重要な貿易相手国であり、当地との通商が絶たれるとなれば、日本の国民生活にも影響が及ぶのは確実だ。すでに食品をはじめとする生活必需品の値上げの動きが広がり始めており、当地における情勢悪化が長期化すれば、さらなるダメージも避けられない。

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メーカーは、代替の輸入先を模索するなどの手段を講じることになるが、サプライチェーン確保の観点からもそう容易ではないのが実情だ。

そんな状況下で、存在感を示せるのが物流業界だ。ロシア・ウクライナ、さらには欧州のサプライチェーンが機能不全に陥ることを想定した新たな物流網の構築を主導的に提案し、メーカーの原料調達や製品輸出のダメージを極力小さくする。こうした可能性を提示できるのは、グローバル輸送ビジネスを手がける物流事業者の役割とも言えるだろう。

こうした地政学的リスクは、今後も当然ながら想定しておかねばならない。リスクマネジメントの観点からも、サプライチェーンの複線化や代替先の確保は、むしろ平常時にこそ推進していく必要があることが、今回のロシア・ウクライナ情勢がもたらす教訓だ。(編集部・清水直樹)