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SBSフレック、茨城県阿見町で自動化低温倉庫稼働

2022年5月30日 (月)

拠点・施設SBSホールディングス(HD)グループのSBSフレック(東京都新宿区)は30日、食品向け物流施設「阿見第二物流センター」(茨城県阿見町)の建築工事が完了したと発表した。ことし6月1日に稼働する。SBSフレックは2018年5月に稼働した「阿見第一物流センター」(同町)と合わせて、阿見地区を全国最大規模の食品3PL拠点と位置付ける。365日対応の自動化設備を導入した冷凍・冷蔵倉庫としての強みを前面に出して、首都圏を中心とする食品の輸送拠点として訴求していく。

▲テープカットするSBSフレック・加藤元社長(左から3人目)、SBSHD・鎌田正彦社長(右から3人目)ら

SBSフレックは、全国で3温度帯の食品物流サービスを展開。特に冷凍・冷蔵輸送に強みを持つ。SBSフレックは、EC(電子商取引)サービスの普及や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズの高まりによる、冷凍・冷蔵食品の輸送需要の急速な拡大を受けて、こうした低温輸送の拠点となる冷凍・冷蔵機能を持つ倉庫の展開を加速する戦略を構築しており、今回の取り組みもこうした動きの一環だ。

阿見第二物流センターは、こうした食品の低温輸送機能を担う先進的な施設として、思い切った自動化を推進。顧客の入出荷オーダーに365日体制で対応するほか、食品輸送に不可欠な「先入れ」「先出し」の徹底と物流拠点の24時間稼働により、製品在庫の圧縮や廃棄ロス削減にも貢献する。さらに高度な物流ノウハウと最新鋭のマテリアルハンドリング機器を駆使することにより、高品質な低温物流サービスを提供する。

機能面では、立体自動倉庫を導入しパレット貨物の高積みが可能なほか高い保管効率も確保。冷蔵食品の保管・収納能力は1万1400パレットと、業界トップクラスだ。自動化設備の活用により、入出荷の処理スピードが毎時150パレットと高速化を実現。トラックドライバーの納品・荷積み待ち時間を極力抑えた迅速な庫内オペレーションで、荷さばきスペースに製品を長時間滞留させない仕組みを構築し、品質劣化を防ぐ。さらに、太陽光発電と自家発電を組み合わせることでBCP(事業継続計画)を支援。災害発生など緊急時でも冷凍・冷蔵製品の温度を維持できる仕様とした。

冷凍・冷蔵だけでなく、常温の倉庫スペースも整備することにより、さらに幅広い食品輸送ニーズに対応できる「汎用型」仕様にこだわった機能も特徴だ。

SBSフレックが阿見地区で食品輸送拠点の開発に注力する狙いは、東京都心をはじめとする首都圏全域へのアクセス性の高さにある。阿見第二物流センターから1キロに位置する首都圏中央連絡自動車道(圏央道)「阿見東インターチェンジ(IC)」を経由して、首都圏各地に高速道路で移動できる物流適地であるほか、東京都内や埼玉県内に多く立地する食品メーカーの製造拠点からも近い。さらに、自動車通勤の可能な範囲に住宅地も多く立地していることから、従業員確保の観点からも優位性が高いためだ。

SBSフレックの加藤元社長は、30日に現地で開催した建設工事完了を祝う式典で、「高まる冷凍ニーズへの対応と物流人材不足の課題を解決すべく、冷凍自動倉庫をメインとした阿見第二物流センターを建設した。新規顧客の積極的な開拓とともに、関東エリアのマザーセンターとして機能アップを図りつつ、全国輸配送網の中枢としても位置付けていく」と述べたうえで、食品購入のEC化は、新型コロナウイルス禍に伴う食生活の変化にとどまらず、安定的に拡張する可能性が高いと指摘。「このような需要に応えるためにも、冷凍倉庫の拡充は欠かせない。SBSフレックグループとしては 阿見第一物流センターと第二物流センターの活用が成長戦略実現の第一歩になる」と強調した。

SBSHDの鎌田正彦社長は「日本の冷凍食品の基幹センターとしたい」と意気込みを語った。

■SBSフレック加藤社長「既存顧客」「新規顧客」「EC」の3本柱で

SBSフレックの加藤社長は30日、LOGISTICS TODAYなどのインタビューに対して、阿見第二物流センターの稼働を契機として雪印メグミルクを中心とする既存顧客との関係をさらに強化するとともに、新規顧客の開拓や拡大するEC市場への対応を加速する方針を明らかにした。

――阿見地区では2018年に第一物流センターが稼働し、雪印メグミルクの輸配送業務を受託した。

加藤 雪印メグミルクの最大生産拠点「阿見工場」「阿見総合物流センター」の本格稼働に合わせて、我々は2013年に隣接地を取得して低温物流の車両基地を設けて、全国輸配送網を一緒に構築してきた。2018年に食品専用の3PL物流拠点として3温度帯の物流センター「阿見第一物流センター」が稼働し、雪印メグミルクの原料・乳製品の保管荷役や輸配送を担うとともに、基幹センターとして新規顧客の開拓・誘致を進めてきた。

――いよいよ阿見第二物流センターが稼働する。最大の意義は何か。

加藤 このたび、高まる冷凍ニーズへの対応と物流人材不足の課題を解決すべく、冷凍自動倉庫をメインとした「阿見第二物流センター」が新たに動き出すことで、既存顧客における受託領域の拡大はもちろん、新規顧客の積極的に開拓に注力していく。さらに、SBSグループ全体における重要施策の一つであるEC物流の拠点としての機能を高めていく。今回の阿見第二物流センターの稼働で、SBSフレックの事業戦略の3本柱がそろった。

――SBSフレックの他の拠点にも自動化設備の導入を進める計画はあるか。

加藤 他の拠点については、自動化よりも省人化を推進していく考え方になるだろう。原料系を中心に、長期間の保管ニーズに対応した設備を構築していくことが必要だ。マテリアルハンドリング機器の高機能化などによる省人化が、こうした今後の取り組みの主軸になっていくと考えている。

――阿見の第一物流センターと第二物流センターの連携策について。

加藤 従業員の配置における互換性だけでなく、荷物の集約化を進めていく。特にEC関連の荷物を中心に最適な配置とすることにより、業務のさらなる効率化を推進していく。両センターは接続していることから、こうした一体的な発想も可能になる。

SBSフレック「阿見第二物流センター」の概要
所在地:茨城県阿見町星の里6-1
建築面積:7261平方メートル
延床面積:7314平方メートル
冷凍庫(マイナス25度)面積:3253.9平方メートル
冷蔵庫(0度)面積:606.8平方メートル
揚温庫(プラス10度)面積:117.6平方メートル
揚温庫(マイナス5度)面積:117.6平方メートル
汎用庫:1128平方メートル
構造:鉄骨造、平屋建て

冷凍・冷蔵倉庫での自動化、その実力を示す好機と位置付けるSBSフレックの阿見第二物流センター

冷凍・冷蔵物流業界で強い存在感を持つSBSフレックが、首都圏における基幹拠点で思い切った先進的な3温度帯対応の物流施設を誕生させた。冷凍冷蔵倉庫での自動化設備の本格導入は、全国でも珍しい事例だ。「新しい生活様式」の時代を見据えて、消費スタイルの多様化で冷凍・冷蔵食品の需要が今後さらに高まるのは間違いない。必然的に拡大する低温物流ビジネスにおける圧倒的な差別化を推進することで、市場における存在感を飛躍的に高める好機と判断した。

冷凍・冷蔵倉庫への自動化は、必要な機能でありながら導入が進みにくい分野とされてきた。低温での作業を強いられることから、現場従業員の就労環境を守る観点から自動化が必要とされてきた一方で、こうした環境下でも正常な作動に支障を来たさない機器の開発は、精密な仕様であるがゆえに、意外と容易ではないのが実情だ。冷凍・冷蔵倉庫の本格的な展開が全国的にまだ途上であるのも一因だった。

しかし、今後は急速に冷凍・冷蔵倉庫の開発が広がる。すでに開発計画が明らかになっているプロジェクトも含めて、2023年以降に稼働するこうした低温倉庫は首都圏や関西圏を中心に従来とは段違いのペースで増えていく。倉庫開発における付加価値は、冷凍・冷蔵機能の有無、そして常温保管もできる「汎用性」がキーワードになりそうだ。

SBSフレックがいよいよ稼働する阿見第二物流センターは、これらの要素を意識した冷凍・冷蔵機能を持つ汎用的な物流センターの実力を示す”試金石”となる。もちろん、先行して低温倉庫における自動化設備の有効性を示す絶好の機会となるのは間違いない。それがSBSフレックの最大の狙いでもあるからだ。(編集部・清水直樹)